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誤字報告いつもありがとうございます。
その後も色々と練習しながら戦闘を重ねていく。火魔法は練習のおかげなのか、今ではしっかりと紫色になっている。手をかざすとそこそこ熱いように感じるし、もしかしたら焼き肉が出来るんじゃないかと思っている。
「うーん… やはり才能が無いとダメなのかな、全然効果が出ているように見えないんだが」
相手がトレントだからか、効果が全然目に見えてこない事に少しだけ焦燥感が募る。
この世界に転移してから毎日のように魔力に関する訓練をしていたからか、魔力の量はそこそこあるんじゃないかとは自負しているけど、生活魔法じゃ魔力量なんて関係ないのかもな。
とはいえ、銃火器が使えない場合も想定できるから接近戦のノウハウというか、体の動かし方は身に付けないといけない。それに対するプラスアルファの要素として、魔法剣っぽい技を何とか形にしたいんだが… 何かうまい方法は無いのかな。
「まぁいいか。この階層にはトレントしか出てこない訳だし、木の魔物を相手に属性がどうのといったってしょうがないしな」
目に見えて分かりやすいのは炎とか氷系、だけど魔法の資質を持たない俺には現状不可能な話だ。木を相手にそれ以外の属性をぶつけてみても効果の程すら分からない、だからこれも経験だと思い直して地道に数をこなそうか。
実際やり込んでみると火の魔法剣も何となく熱くなってきてるしな、使い続ければそこそこ扱えるようになるだろう… なんて考えるのは安直かな? とにかく練習だと思って続けるとするかね。
SIDE:レイコ
「ふあー、なんか町に来るのも久々な気がするね」
「そうだね、ダンジョン内は薄暗い場所しか無いから長い時間入っていると気が滅入るしね」
数日ぶりに見た空と雲、そして風の流れを感じてほっと息をつく。あまりにも長時間閉鎖空間にいると鬱になったりするんだよね? 怖い怖い。
とりあえず大量に手に入れた鉄の塊… その3分の2をギルドに売ってこよう。残った3分の1は自分が使う弾丸用だ、色々サイズを変えて注文する予定だ。
「まずはギルド? 先立つものが無いと買い物もできないしね」
「そうだね、カオリは先に宿の手配を頼める? あまり遅い時間になると部屋が無くなっちゃうから」
「うん分かった。2人部屋で良いんだよね?」
「私はそれで良いよ。何となく節約している気になるしね」
「あはは、確かに。それじゃ部屋が取れたらギルドに行くね」
「了解」
ダンジョンの出入り口でカオリと別れ、私はギルドへと向かう。
2人で狩りをしているにもかかわらず、お金の管理はなぜか全部私がする事になっているの。まぁぶっちゃけカオリにお金を持たせたらねぇ… お酒ばかり飲んでたからこれでも良いんだけど、カオリの変わり具合には本当に驚かされている。
『改心した』って言葉があるけど、まさにそんな感じだ。そんな姿を見ているせいか、なんとなくカオリの事はもう一度信用しても良いかなって最近は思ってたりもする。
「人は中々変わるものじゃないってよく言うけれど、やっぱり命が懸かれば変われる物なのかな」
まぁ油断したところで何かをしでかすっていう疑念も捨て切れないけど、今のカオリであれば一緒にいても苦痛でないから嫌じゃない。
まぁ以前はひどすぎたからね… まぁいいや、とりあえずギルドに行って換金しなくちゃね、食材の買い出しもしないといけないし… これは明日でも良いか、今日はとりあえずギルドと鍛冶屋は終わらせないとね。
ギルドに到着し、買取窓口で大量の鉄を納めてくる。ドロップする塊は一定サイズで固定されているみたいで、普通に数を数えてそれでお終いみたい。日本であれば鉄の純度とか重さで金額が決まるんだろうけど、ギルドではそう言った検査をする事なく買取が完了した。
「レイコ様、次回はもう少し抑えめでお願いします。さすがにこれだけの量となれば倉庫が圧迫されてしまいますので」
「あー、確かにそうかもね。今回は修行の意味合いが強くてとにかく狩りまくったから… 次からは気を付けるよ」
「本当にお願いしますね」
鉄の買取価格は結構な物で、目見当で2~3トンくらいの鉄が金貨300枚に化けた。
金貨300枚もあれば宿代も食費もしばらく大丈夫、これも空間魔法を覚えられた恩恵だね。普通の冒険者では鉄の塊なんて何個も持って帰ってこれないからね、ウハウハだよ!
「あ、レイコ。買取は終わった?」
「うん、ちょうど今終わったところだよ。とりあえず3分の2を売って金貨300枚だったから、お小遣いとして金貨25枚ずつ個人用に持ち歩こうよ。残りは共有費と弾丸代にするね」
「了解だよ。でも金貨25枚って多くないかな? 私はそんなにいらないよ、何なら全部レイコに任せたいくらいだし。それにお金を持つと… ねぇ?」
「まぁまた飲み歩くようになったらカオリを置いてどっかに行くから良いよ」
「ちょっと! もう置いていかないでよ! お酒も男もどうでもよくなっちゃってるし、飲みには行かないから」
「あはは、まぁ食事中に軽く飲むくらいなら許容するから、自分の買い物用として持っておいてよ」
「うん、まぁそういう事なら」
ギルドを出ると夕日が赤くなりかけていた。日が沈むとお店のほとんどが閉まってしまうので鍛冶屋にも急いで向かわないといけないね、鉄の塊と前金さえ渡してしまい、出来上がる日にちを聞けば後はまるっとお任せして終了だ。
ギルド推薦の鍛冶屋に到着し、アニメのように親指ではじけるくらいの大きさ… 直径1センチくらいで長さが10センチ程度の弾丸を100個、卒業証書を入れる筒くらいのサイズで100個、ストーブの煙突くらいの直径で、長さが50センチくらいのを100個注文してきた。
とりあえずこれで威力を確認してこないとね。石で練習してきた結果、軽くマッハで飛ばせるようになっているし、命中率も悪くはない。後は当たった時の破壊力を知るだけ… ミスリルゴーレムとなれば煙突サイズをぶつけないとダメだと思うし、だからといって弱そうな魔物にそれをぶつけるのはもったいない。魔物に合わせて銃弾を変えて行かないとコストがすごい事になりそうだから確認は必須でしょう。
「よーし、それじゃ今日はこの辺にして宿に行こうか」
「オッケー。買い物は明日?」
「そうだね、銃弾の加工は5日って言われたからゆっくりでも良いんだけどね」
「買い物が終わったらダンジョンの浅い所で狩りに行っても良いんじゃない?」
「まぁそれは明日考えよう。とりあえずご飯にしよう」
「了解だよ!」
カオリと一緒に宿に向かって歩き出した。
うん、なんか2人ってのも悪くはないかもね。おじさんは今頃どうしているのかな? そろそろカレーとラーメンが恋しいよ。




