201
誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活135日目
今日も元気に目が覚めるっと… うん、3時40分だね。
マイホーム内はダンジョン内と同じく、日の光が無いから時間の感覚が無いって言うのが弱点の一つだな。時計を見ると早起きしすぎだって思うけど、明かりをつけないとマイホーム内は真っ暗で昼も夜も無いからな… 目が覚めた時点では何時くらいなのかの見当もつかない。
ま、いつもの事だし起きるか。
早起きは三文の徳だと昔の人は言っていたが、現代日本じゃ暗いと電気を付けなくちゃいけないからむしろ損をしているよな。まぁマイホーム内のアレコレは俺の魔力を使っているらしいし、ロビーとかは常時明るくなっているから損はしていないと思うが… これはもう少し夜更かしして起きる時間を調整しないとダメかもな。何と言っても全員起きてこないと動きようが無いから時間の使い方が…
朝のコーヒーを飲みながら対物ライフルの弾を少しだけ製造しておこうか、いざという時に足りないとか寂しいからな。後何かやる事はあったっけな… 思いつかない、しょうがないからダラけておくか。
そしていつも通り6時に美鈴が、6時半に霞が起きてきて朝食の準備と共にお弁当を作り始めていた。やはり3人パーティでローテーションしながらの戦闘よりも、ソロで色々とやっているとお腹が空くらしく、今日はサンドイッチではなくおにぎりにしたようだ。
まぁ戦闘も、戦闘中の周囲の警戒も全て自分でやらないといけないし、トレントも単体だけじゃなく2~3体で現れる事もあるので運動量は非常に増えているのだ。そのうえで個人的に何をやっているのかは知らないが、きっと小技を編み出しているんだと思う… 俺もそうだしな。
「ねぇおじさん、提案なんだけどいいかな?」
「お? なんだ一体、話し合いは基本なんだから言うだけでも言ってみな」
「んとね… 現状で若返り果物の在庫がゴールドアプルが2個、ブラックチェリーが2個、バナナスカーレットが5個だから37年分手元にある訳よ。このダンジョンを潰したらおじさんが食べるって話だったけど… 食べる前にアニスト王国を墜としに行かない?」
「なるほど、それには賛成だわ。万が一若返って起こるかもしれない最悪の事態… 時間の巻き戻しによる若返りが起きてしまったらおじさんが今回の異世界転移についての記憶が失われてしまうって事が考えられるわけね」
「そうそう。もしそうなった場合、日本人としての感性しか無くなるわけだから復讐とか報復とかには賛同してくれないと思うんだよね」
ふむ、確かにそうかもしれないな。
「一番若返る年数の少ないチェリーですら1年若返るんだし、チェリーで様子見をしたとしても完全に異世界転移前に戻ってしまうんだよね」
「それはかなりの確率であり得るな。1年前の俺って事は39歳か… まぁその歳で覚えのない復讐なんて言われたって日和るってもんだ」
「でしょ?」
なるほど。最悪の事態を考えた場合、不確定要素満載の事をする前に目標であったアニスト王国へのアレコレをやってしまおうという事だな。
確かにその方が良いかもしれないな。国家と戦うための訓練も大事だが、いつまでも怒りや恨みを持ち続けるって言うのも精神的に疲れるし…
ぶっちゃけこの世界の冒険者によるダンジョンの最高到達点と俺達の到達点を考えれば負ける要素は数の暴力くらいしか無いかもしれない… 怒りや恨みが鮮明な内に行動を起こした方が良いかもな。それによってアニスト王国に住む普通の平民達も救われる事もあるかもしれないし。
「良いかもしれないな。ところで37年分の振り分けはどうするんだ?」
「ああそれ? まだそこら辺は考えていないけど… 最低でもおじさんは10代に戻ってもらおうかなって考えてるよ。そうすれば私達と年齢が近くなるし」
「そうね、私達よりも年下になっても良いと思うわ」
「いやいやいや! さすがに年下は無いだろう!」
「37年分でしょう? 年下にするには25年若返ってもらえばいいのか…」
「バナナが5本あるからちょうど良いんじゃないかしら。それで残るのはアプルが2個にチェリーが2個、後1個ずつ拾ったら十分なんじゃない?」
「そうだね、最悪はチェリーを放置してアプルだけでも良いし。50階層のボスからもう一度ドロップしたら解決で良いんじゃない?」
「そうね。でもいきなり25年分も食べる訳じゃないでしょう? 最初はどうなるか分からないんだから年数の少ないチェリーで試すと思うから少し端数が出るわね」
「ああ… でもそうか、そう考えたらチェリーはもう少し必要かもね」
「ええ、せめて後3個は見つけておきたい所ね」
俺の事を放り出して議論を始めてしまった美鈴と霞。それでなんだって? 俺を15歳にするって? さすがにそれは若すぎだろうよ。
まぁチェリーを食べたからといって、1年若返った事を果たして体感できるのかって話だよな。おっさんレベルになると1年なんて誤差の範囲だし、若返ったというには感じないかもしれない。
しかしまぁ急展開な話になったもんだ。
まぁ俺としてもどのように行動しようか思案していた事なんだけど、やはりというか後回しにしていた感は否めない。
でもまぁやるとなれば思いっきりやるだけだ。言い方は悪いがどうせここは異世界だ、日本の常識でいちいち物事を考えてちゃやってられない。考え方も文化も違うからな…
「おじさん、急に黙っちゃったけど何か心配事でもあるの?」
「え? ああいや、一国を墜とすって言うんならどうやってやろうかなと思ってな。まぁ朧げに考えている事はあるんだけど」
「そうなんだ。じゃあその辺の話は夕食の時にしない? とりあえず今日の目標はチェリーを3個見つけるって事で決まったから」
「マジか… まぁいいか。それじゃボス部屋の確認をして行きますか」
「「了解!」」
思っていた通りボス部屋の扉は開くことは無かった。
しかし今日の女性陣はその事についてはどうでもいいようで、うきうきした感じで49階層を走り去っていった。
「さて、魔法剣擬きをどうにか形にって思っていたけど、これから戦争を始めるって言うんならそれに見合った事をしなくちゃな」
戦争に見合った事… 大仰に言ってみたものの、わざわざアニスト王国の全勢力を相手にする訳じゃない。隠れる所は隠れ、落とす所は落としていく。王家の者に逃げる隙を与えないためには電光石火で王城に入り込まないといけないよな… さてどうするか。
「とりあえずチェリーを探しながら考えるか」
俺も49階層を歩き始めたのだった。




