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誤字報告いつもありがとうございます。
「でも、枝なのかわからないけれどムチのように長い物があるから、臭い息を吐く魔物の亜種かもしれないわね」
「ああ、あのゲームは俺もやった事があるから覚えているけど、確かに似たような魔物はいたな」
「とりあえずあの口から出ている液体には何が何でも触れる訳にはいかないよね、なんか溶かされそうだし」
「それもそうだし、枝とか根っこのような物もテカってるよな」
「アレもなんだか汚らしいわね、絶対に遠距離で倒してしまいましょう。アレの移動速度がどれほどの物か分からないから、美鈴は攻撃に参加しないで障壁の準備をお願いするわ。遅いようなら参加という事で良いかしら?」
「そうだね、私もあれに接近されるのはちょっと嫌だからそうさせてもらうよ」
「一応アイツが思ったよりも速かった場合、障壁で押し出せるか試してみてくれ。押せないようなら斜めに展開してやり過ごして反対側に回って距離を取ろう」
「そうね、今は距離があるからあの魔物もこちらに向かって来てないけれど、さすがに攻撃を始めたら動き出すと思うわ」
「よし、それじゃそろそろやるか。美鈴、防御は任せたぞ」
「了解だよ! 一応最悪を考えて退路の確保だけしておくね。迂回して距離を取る場合は右側を前に出して斜めに展開するから、右回りで移動をよろしく」
「「了解!」」
しっかし醜悪な見た目をしているな。見た感じ食虫植物のようだが、あの口のサイズじゃ虫だけじゃなくて人間サイズでも小さくて物足りないって感じだろう。見た目はそのまんま、某ゲームに出てくるモルなんとかっていう凶悪な魔物のようだ。一体どこを狙えば良いんだろうか…
それでも俺と霞は前に出てKSVKを構えて照準を付ける。
「さて、どこを狙ったもんかね」
「とりあえずあの大きな口の周りで良いんじゃないかしら、触覚らしきものも見えているし、あの辺を破壊すれば削れるんじゃないかしら」
「そうだな。それじゃ攻撃を始めますか!」
おっとその前に鑑定だけはしておくか… っと、残念、対象と離れすぎているせいなのか鑑定する事は出来ないな。でも鑑定するためだけにアレに近づくのは嫌だし、もうこのまま攻撃してしまおう。
美鈴は俺達から一歩引いた場所に待機して成り行きを見守っている。
「よし、攻撃開始!」
ドパーン! ドパーン!
対物ライフルの銃口が火を吹き、戦車ですら当たる場所によっては装甲を貫通するという銃弾が魔物を襲っていく。
的が大きいので多少距離があっても外す事無く口の周りに命中して、周囲の繊維? 体組織が飛び散っていくのが見える。
「グオオォォォォォ!!」
「ひぃぃ、声も気持ち悪いんですけど!」
魔物が上げた雄たけびに美鈴が反応する。
確かにあれだけ大きな口があるんだから、声を上げたって何の不思議も無いんだが… 確かに声と言うには悍ましいように感じるな。
次弾を装填してこちらも攻撃を続ける。出来るならこの距離を保ったまま終わらせたい、いや、ぜひとも終わってくれ。
そんな願いを込めてバンバンと撃ちまくる。
「撃ち方止めー!」
様子を伺っていた美鈴が急に声を上げるので、その声に従って撃つのを止めて魔物の方を見る。
「あれ?」
「うん、なんか倒せたっぽいね」
「やっぱり口の周りが急所だったのね、接近されなくて本当に良かったわ」
すっかりひっくり返ってしまった植物系の魔物を見ていると、シュワシュワとダンジョンに吸収されていくように消えていく。
「いやーしかし、私達だったからこそ強力な遠距離攻撃の手段があったけど、これを普通に倒せとなると難易度がヤバくない?」
「いや、難易度とか言う前にどれだけ強いのか分からなかったんだが?」
「これは見た目だけでも十分に危ないわね、口から出ていた液体も害がありそうだったし… 強いに決まっているわ」
「ともかく! 倒したんだからドロップを確認しに行こうよ。ここが最奥ならコアもあるはずだし」
「そうだな… まぁいいか。この世界の冒険者には卑怯な攻撃に見えるかもしれないが、俺達の身の安全が最優先だから何も問題は無いな」
「無い無い。そもそも他の冒険者なんかここにはいないし、戦闘内容を教える事も無いからセーフだよ」
「そうね、これらの攻撃手段はおじさんの力でもある訳だし、別に恥じる事も無いと思うわ」
「まぁ恥じてるわけじゃないんだけどな、この世界の人には理不尽に見えるんだろうなって思っただけだよ」
とりあえずKSVKを倉庫に戻してボスがいた場所に向かって歩き出す。
うん、何か落ちてるね。まさかとは思うけど若返り系の食べ物じゃないよね? あの魔物が落とした物を食べろとか言うんですかね?
「あっ! ゴールドアプルが落ちてるよ! これは周回決定かな?」
「そうね、遠距離から安全に倒せることも分かった事だし、次からは何発当たれば倒せるのかちゃんと検証した方が良いわね」
「でもなー、あの魔物が落とした物って考えると…」
「大丈夫だよ! 多分。それに次倒してみてゴールドアプルが確定でドロップするんならメリットしか無いんじゃない?」
「まぁそれは数をこなさなくちゃ分からない事だからな、何周かやってみるか?」
「うんうん!」
とりあえずドロップしたと思われるゴールドアプルは丁重にしまい、宝箱が無いかと周囲を調べる。しかし宝箱はどこにも無いという事で先に進む事にした。
しかしあんな見た目の魔物からゴールドアプルが出てくるなんて思いもしなかったな、まぁ近づく事無く倒せたから脅威を感じる暇は無かったけど、アレは多分ヤバイ魔物だったと思う。
見た目で判断しちゃいけないと思うが、アレは間違いなく毒性のナニカを噴出させたりしてくるだろう… 多分だが。外での戦闘ならともかく、広いとはいえ密閉空間でそんな魔物と戦うのはリスクが大きすぎるよな。
まぁこっちには聖女がいるからその手の攻撃に対処できるのかもしれないが、削れるリスクはどんどん削らないと気が済まないんだよ。
さて、今回の戦闘での消費はっと… 俺の方がマガジンを取り換えて撃っていたので合計7発。霞の方は撃ち尽くしてそのままだったという事で5発… 合計12発の消費で済んだという事だな。
怪しげな魔物相手にそれだけで済んだという事は儲けものなのかな? まぁ弾丸1発作る経費を俺は知らないから何とも言えないが、通常の銃じゃなくて対物ライフルだからな… もしかしたら経費に負けてるのかもしれない。 次は何発で仕留められるか、弱点となる場所の特定、その辺を調べて経費削減しないとな。
「おじさん、そろそろ行こうよ」
「ああ、今行くよ」




