194
誤字報告いつもありがとうございます。
「私個人としては、おじさんが19歳まで若返ったとしたら、17歳の私達との年齢差は2歳しか無くなるわけだし、歳の差って言う壁が無くなるから十分なんだけどね。それでも保険として10年くらいの若返りを3人分確保しておきたいかなって思ってる」
「そうね、ここが日本ならそんな事は考えなかったと思うけど、実際にそんな果物の存在を知ってしまうと… それもこの後ダンジョンを潰してしまうって事を考えたら確保には賛成ね」
「まぁ言いたい事は分かるよ、若返るなんて夢のような話だもんな。とりあえず今はダンジョン攻略の事を重点的に考えようぜ」
昼食が終わり、デザートにイエロートレントからドロップしたバナナを食べてお昼休憩は終了。
今の調子で突き進んでいけば明日には50階層に到着するだろう。まぁ50階層に着いたからといっても、ボス部屋に辿り着くのは明後日以降だろうけどな。
やはりその辺はゲームなんかと同じようで、奥に進むほど階層は広くなっていき、次の階層へと続く階段までの距離は長くなっている。トラップも見破る事は出来ているとはいえ、数はマシマシだ。油断して歩いた日にゃサックリやられてしまうだろう。
ぶっちゃけて言うと、今まで見えていたトラップは全て回避しているから、うっかり引っかかってしまうとどんな結果になるか知らないんだよな。もしかしたらギルドの資料室にそういった事が書かれた物があるかもしれないが、俺は見ていない。
日本人としての常識からかけ離れているダンジョンだ、それこそゲームのように壁から槍が出てきたり、炎が燃え盛ったり、普段よりも強い魔物が出てきたり、最悪はどこかにワープするとか、そんな事まで考えられるからちょっと怖い。
うん、ワープとかはさすがにヤバいだろ。確かに俺達は個人としてもこの辺の魔物には負けないだろうが、心理的に考えれば全然別物だ。どこに飛ばされたのかとか仲間はどこにいるのかって考えるだけで不安は募るだろう。精神的な綻びから圧勝していたはずの魔物を相手に後れを取るかもしれない。そう考えればトラップに引っかかってしまったらどうなるかなんて試せるわけが無いしな。資料があれば読むけど、身を挺して試すような事じゃないから安全第一である方針に変更は無い。
「さーて、午後のお勤めと行きますか」
「そうだね、ゴリゴリ行くよ!」
「先行は任せてちょうだい」
SIDE:ガスト帝国、ラーク宰相
「侵攻させた部隊の進捗はどうなのだ? 時間的にはそろそろグリムズ王国の王都を掌握している頃だが」
「はっ、それがアベマス領を抜けたという報告の後は連絡が途絶えております」
「ふむ… まぁあれほどの人数による奇襲作戦だ、まさか負けているなんてことは無いだろう。仮に何らかの問題があったとしても連絡位寄こすだろうからな」
ここ1年、年老いて弱ってきていた皇帝陛下は急激に元気を取り戻し、穏健だった性格のはずなのに隣国へ攻め入る命令を発した。
その目的は、過去に大陸全土を治めていたという栄光を取り戻すという事だが… どうにも納得のいかない行動を起こしている。
あれほど国民を大事にされていたのに、突然の侵攻作戦に伴う兵糧を各地から搾取し、民へ負担を強いているのだ。こんな事は1年前では考えられない… 別の誰かが陛下に取って代わったと言われても違和感が無いくらい。
しかし防犯の魔道具は一切反応していないし、鑑定の魔道具で確認しても陛下である事は間違いなかったのだ。どういう心境の変化だろうか…
しかし、ガスト帝国では陛下のお言葉は絶対であり、疑う事無く従わなければいけない。諫言も過ぎると私の首も危ないしな…
今ここで私が居なくなると、陛下に諫言を告げられる者が居なくなり、帝国は悪しき方向へと向かってしまうかもしれない。さすがにそれは代々宰相を受け持っている当家、ラーク侯爵家の血筋が許さんだろうよ… とにかく陛下の動きにおかしな点が無いかだけ調べておくか。
それはそれとして、グリムズ王国へと侵攻していった部隊からの連絡が途絶えたのは気になるな。東の小国であるプラム王国はすでに手中に収めているが、さらに東にある神聖教国に詳しく探られないよう小隊規模でしか部隊を動かしていない… これはこちらから探りに出した方が早そうだな。
「よし、2~3人をプラム王国に向けて人を出せ。そしてグリムズ王国側の情報を仕入れてくるよう命令しろ」
「はっ! 人選はどういたしますか?」
「途中問題があっても任務を遂行できるよう厳選せよ」
「承知いたしました」
とりあえずこの部隊が帰ってくるまでは時間があるな、その間に陛下について調べるとしようか。
SIDE:カオリ
「じゃあ魔法障壁を張るよ」
「うん、お願い」
「よし、それじゃあ6時間ほど寝ようか。疲れを残さないようにね」
「了解だよ」
レイコの張る結界? 障壁? これは非常に優秀で、魔物の中にいても破られることは無いので安心して寝られるのは良いね。
レイコは今日から新しい魔法の練習をしている。そのせいか少し疲れたような顔をしていたんだけど… もう寝息が聞こえてきた、寝付き早っ!
しかしいつも思うけど、寝ているのに魔法を起動していられるのってすごい事なんだろうね。あー私も斥候じゃなくてもっと格好良い職業だったら良かったのにな。
で、それはそれとして… やっぱりダンジョンに入って魔物と戦うとどうもムラムラしてしょうがない。マインズでレイコと一度別れてから、あの辺の男連中に見向きもされなくなってからだから… もう随分とシテいない気がする。
命の危機に遭遇すると本能が刺激されてとか良く言うけど、レイコは何とも無いんだろうか… こんな時には何も考えずにエッチな事をするとスッキリするんだけど、さすがにそれが原因で一度別れてるんだから自重しないといけないよね。
隣で寝ているレイコに目をやる。
ショートカットだった髪は少し伸びて、そろそろ後ろで縛れそうなくらいだ。そんな髪の毛の隙間から覗く白い首筋とうなじを見つめる…
「そういえば女同士ってどうなんだろう?」
今まで考えた事無かったけど、レイコは男嫌いだって事は、相手が女だったらOKって事なのかな? お、押し倒しちゃっても良いのかな? いやいや、さすがに次怒らせたら今度こそ完全に見捨てられる… それだけは絶対にダメだ。
明日起きたら聞いてみようかな?




