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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:レイコ
ガキン!
「痛いっ! 分かってたけどやっぱり硬いね!」
「あーでも、すごいへこんだよ。肘とか膝とかの可動部を狙ってみて」
「了解!」
現在カオリが鉄のゴーレム1体と一騎討ちをしている。動きの機敏さでは私と同等以上の能力があるため、ゴーレムの攻撃は特に危なげなく回避しているので大丈夫だろう。
問題はカオリがゴーレムを壊せるか… 鉄のゴーレムが壊せないならミスリルゴーレムの破壊は絶望的となってしまう。
ゴキン! ズシャァァ!
ゴーレムのパンチを潜り抜け、懐に入ってからの大振りが膝にヒット。膝部分を何とか破壊し、自重に耐え切れなくなってゴーレムが倒れ込む。
「頭部を壊して! そこに魔石が入っていてそれが原動力みたいなの!」
「はいよーっと!」
カオリはゴーレムの手が届かない背後から近づいて、これまた力任せにゴーレムの頭部を殴打する。重そうな金属音が響き渡り、2回3回と殴られたゴーレムは行動を停止した。
「よし、これで討伐完了なんだね?」
「うん。魔石を壊したら動かなくなって消えるから間違いないと思う」
「あっ、なんか金属の塊が落ちてるね」
「それがインゴットって言うみたいで、割と良い価格で売れるのよ。だから訓練するなら岩のゴーレムより鉄のゴーレムの方が儲かるのよね」
「お金はあって困るものじゃないしね、ダンジョンに潜るのにも食料とかで結構お金使うし」
「それに今回、色々と便利グッズも買っちゃったしね」
「いやぁクッションの使い心地は良かったよね! 今までの野営ってひどかったんだって本気で思ったよ」
「うん… まさか私もダンジョン内で熟睡できるとは思ってなかった」
そうなのだ。クッションの寝心地は控えめに言っても最高だった、もしかしたら安い宿のベッドよりも良いかもしれない… 一体何素材で作られているかは知らないけど、これは高いお金を払った甲斐があったと思うよ。
まぁただ、敢えて欠点を上げるとしたら… 大きさくらいかな。大きいとは言っても1メートル四方くらいなので、2個使えば足を伸ばせる。だけど横は寝返り1回したらクッションから落ちる可能性がある、もういっそ1人分として4個使うしか無いかな。
「さて、それじゃあお金稼ぎと並行して、対ミスリルゴーレムに向けて特訓を始めようかね」
「ほ、ほどほどにね?」
「お金稼ぎもしたいから複数現れたら私もちゃんと手を出すから安心して、1対1で戦えるようにはするから」
「分かったよ」
こうしてカオリ用の特訓が始まった。
カオリ用のとは言ってももちろん自分の訓練はするつもり、ミスリルゴーレムに対して有効な攻撃が出来なかったことは私にとっても悔しい思い出だからね。
でも、無駄に頑丈で魔法に対しての防御力が異常に高いミスリルゴーレムを壊すにはどうしたらいいか… その答えはおじさん達のパーティが実践して見せている。あのパーティには魔法で攻撃できるメンバーはいないから、単純な物理攻撃で仕留めたという事。つまり魔法を使って物理的な攻撃をすればイケるんじゃないか…
とはいえ、魔法で物理的な攻撃というのも限度がある。前回苦し紛れに試した土魔法、アレは練度不足で大したダメージを与えられなかったからそれの練度を上げる事。そしてそれとは別のナニカを考えようと思っている。
こうして戦闘回数を重ねる事で、魔法についての理解も結構深まっていると思う。この世界の魔法は… 結構イメージに左右されやすいという事はすでに分かっているから、私のイメージ次第では強力な新魔法が開発できると思っている。
すでに『エアバースト』っていうオリジナルの魔法も作った事だしね、もっとすごい魔法をこの機会に開発してやろうと思っている。これはカオリが合流する前から考えていた事だから、ようやくその時が来たって感じだ。
「さて、魔法の力を使いつつ物理的な攻撃力を秘めた攻撃方法といえば… やっぱり『レールガン』かな。あのアニメは好きだったから良く観てたし、レールガンの詳細な理屈は解らなくても、なんとかイケるんじゃないかな」
「ん? 新しい魔法の話?」
「うん。今の段階では対ミスリルゴーレム用って思っているけど、使えるようになれば利用価値はすごい高いと思うんだよね」
「まーね、炎とかと違って物理的って言うなら、建物を壊すとか防壁だったり、強くなればお城とかも壊せるかもね!」
「やっぱり弾に使うのはコインにしようかな…」
「やるならせめて銅貨でね?」
「くっ、そこがネックなんだよね。銅貨だと対象を壊す以前に弾が先に壊れてしまいそう」
「そこはアレだよ、今日いっぱい鉄の塊を拾って、それを加工してもらえば良いんじゃない? 弾丸的なスタイルにするとかやれば、貫通重視とか設定できるんでしょ?」
「そこは良く分からないけど… やっぱりコインは諦めるしかないか」
とりあえず今回は何も用意をしていないので、土魔法で作った石を飛ばす事から始めようかな。あれ? でもレールガンって磁力を使うんだよね? 魔法で作った石を磁力で飛ばすなんて不可能じゃない?
まぁいっか! 別に磁力じゃなくても要は飛ばせればいいんでしょ? この世界の人はレールガンなんて知らないだろうし、そこはなんちゃってレールガンってことで良いよね。
魔法の発動時にちょっとだけビリビリさせてやれば、この世界にいる日本人の目もごまかせると思う! 多分だけど。
よし、練習開始!
SIDE:賢者君
俺と勇者はマインズという町に到着していた。
この町についてまず最初にやった事は… 安宿を取って爆睡する事だった。野宿なんて何回やっても全然慣れないし、寝不足を毎日引きずっている状態だったからこれはしょうがないと言えるだろう。
そして十分な食事と休息をとった後、ギルドに向かいダンジョンの情報を集めようとした。
すると、日本人と思われる名前が結構聞こえてきたんだよな。
ギルドの話では、最初は5人でこの町に来たらしいが、そのうち3人がすぐにこの町を離れ、2人が残ってダンジョンを攻略していたという。
その2人の名前はカオリとレイコ… これはもう間違いなく日本人だよな。召喚されたあの日から初めて他の日本人の話が聞け、勇者の奴も興奮しているようだった。まぁ名前から見るに、女性だしな。
しかし、レイコは男嫌いで有名だったらしく、カオリに至っては男関係で非常にだらしがなかったという。男関係が原因で2人の仲は決裂し、レイコがこの町を去って行ったと。そしてしばらくしてカオリの姿も見えなくなったという…
一体何をやっているんだ? カオリという奴は。




