ある日のトレーニングルーム内 3
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:美鈴
「なんでそんなに俺に食べさせたがるんだ?」
おじさんからの質問に思わず詰まってしまい、霞を拉致してトレーニングルームにやって来た。
「ちょっと美鈴、一体何よ?」
「いやぁ、ちょっとどう答えようか迷っちゃってね。一応そういった事も摺合せしておいた方が良いかなって思って」
「それで、結局どうするのかしら?」
「うーん、素直にこっちの作戦をバラしてしまうか。それとも何となくごまかしながらズルズルと引きずって行くか…」
「難しいわね… 正直に言わせてもらえば、私は男女間のやり取りとか駆け引きとか詳しくないわよ。だから美鈴を頼りにしようと思っていたのだけれど」
「うーん… 私もそれほど詳しいって訳じゃ… どうしよっか」
「とりあえず現状ではあまり意識させない方が良いんじゃないかしら? 私だって心の準備が必要だし、今日はこのままスルーして、忘れさせるのはどう?」
「そうだね、とりあえずおじさんの倉庫に入れておけば腐る心配はないから置いといても問題は無いし、このまま放置してさっきの話は無かった事にしてもらおうかな」
「それで良いと思うわ。何よりもあれしか無いんだから、もう少しストックしてからでも良いと思うわ。ゴールドアプルとブラックチェリーで合計6年分でしょう? まだまだ足りてないんだから」
「そうしよっか。しかしレアドロップなのが憎いよね、これで他の冒険者達がこの階層にやってきて、世間にバレたら大事になるだろうし」
「そうね、帝国のことは良く知らないけど、先日のように理由も告げずに戦争を吹っ掛けてくるような権力者がトップにいるんだったら間違いなくこのダンジョンを封鎖とかして独占しそうよね」
「そう! だから今が大チャンスだって事よね! でもそうなると…ねぇ」
「そうよねぇ」
霞も分かっていると思う。
私達はただの冒険者でもないし旅人でもない、私達を召喚しておきながら殺そうとしたアニスト王国に復讐という目標があるし、先日のグリムズ王国を襲ったガスト帝国にも一泡吹かせてやりたいと思っている。
私達を勝手な都合で戦争に巻き込もうとした帝国… 実際にはレイコがガッツリ巻き込まれて大量虐殺までやらかしていたんだから他人事ではない。
それだけの事をやられたのは帝国の自業自得だけど、やらかした方のレイコの心がちょっと心配だ。レイコだって私達と同じ転移者なんだし、私達同様転移者特典とも言うべき高い身体能力やスキルを持っている。
そんな他の人よりも強いレイコが心を壊して暴れるようになったとしたら… この世界の人達じゃ太刀打ちできないかもね。
話が逸れた…
詰まるところ、本心で言えばこのままこのダンジョンで果物収集をしていきたい。でもアニスト王国に対する攻撃は、現王が存命の内にやらないと同じような事がまた繰り返される事だろう。
あの王の血を引くものならば絶対にやるよね、自分の国軍には一切負担をかけずに、外部から誘拐した勇者達に戦闘を任せるなんて… そんな簡単な事を一度経験したら止められるわけ無いよね。
「くっ… 非常に悩ましいね。このまま周回したいけど」
「ええ、他にもやる事があるものね。少なくともアニスト王国は放置できないわ、勇者達の現状も気になるけれど、最悪は敵対すると考えなきゃいけないでしょう」
「勇者と賢者と大魔導士だったっけ、アニスト王国に残ったのは。賢者と大魔導士は私が封殺するから霞は勇者を頼むわ」
「もちろん、それは望むところね。敵対しない場合も想定できるけど、正直言ってそれでも仲良くする気はないから厳しい状況での想定をしておきましょう」
「うん、じゃあ私は相手の魔法を封殺したとして、その次は撲殺だね! ハンマーちゃんの熟練度を上げないと!」
「え… 本当にハンマーを常時使いにするの?」
「え… そのつもりだけど、何か?」
霞も分かってないなぁ… 私のような背の低い子が大きなハンマーを使うっていうロマンを。ラノベやアニメの世界では魔法使いが物理攻撃するのは定番になっているんだから、別にヒーラーがハンマー持ったって全然おかしくないでしょ?
あっ! 霞が「うわぁ」って顔をして私を見てる、別にいいじゃない好きなんだから! 好きでも今まで出来なかったんだよ? あのサイズのハンマーなんて建築現場にしか無さそうだったし、日本にいた頃の私の腕力じゃ持ち上げる事も難しかったと思う… でも今は出来る! だからやる!
「じゃ、じゃあ話をまとめるわね。とりあえずおじさんには私達の目的は話さない方向で行く…と。そしてアプルやチェリーなどは保管して貯めていくってことで良いかしら?」
「そうだね、収集に1年とか2年とかかかりそうになったら他の案を考えようか。現状では急がなくても良さそうだしね」
「そうね、確かに40歳とは思えない程動きは良いし健康そうだし。現状維持で良いと思うわ」
「了解! じゃあ明日からもトレント狩りを頑張るとしよう!」
「ええ、了解よ」
よし、とりあえずの方針は決まったね。おじさんには悪いけど、さっきの話は無かった事にして触れないようにしよう。それで良いよね?




