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誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活112日目
今日も今日とて必要以上に早起きなんだぜ。健康的で何よりだから良いんだけどね。
そういえばもうそろそろこの世界に来て4か月になろうとしているが、体調を崩したりとか全然無いんだよな、これも肉体的に強くなったせいなんだろうな… この調子だと何歳まで生きていられるんだろう。
ま、そこら辺は考えたってしょうがないし、色々と経験して楽しめれば良いんじゃないかな。まぁ落ち着いて楽しむためにはしっかりとアニスト王国に報復して、己の行いの愚かさを身をもって解ってもらわないとな… 今のままだと今後も同じように召喚して、気に入らないスキルや職業だったら殺そうとするんだろう。全くふざけんなって思うよな… 召喚という言葉でごまかしたってやってる事はただの誘拐、拉致と同じだ。アニスト王国の都合で呼び出した挙句に殺そうなんて馬鹿にするにも程があるってもんだ。
当代の内に… 代替わりする前にしっかりとお灸を据えないとな。
そのためには力が必要だし、こうしてダンジョン内で魔物を相手に戦闘経験を積んでいる訳だが… 果たして人間を相手にどこまで許容できるか…だな。美鈴や霞の手をあんなゴミのような連中の血で汚したくないとは思っているけど、あの2人はそれを言うと反対するだろう。
「まっ、なるようになるさ!」
自分の考え方は傲慢であると理解はしている。それでも未来ある若者に殺人の業を背負わせてはいけないなんて考える自分がいる…
確かにここは異世界であり、法も常識も日本とは全く違う場所だ。命の値段が非常に安く、通りかかった魔物にあっさりと殺されたり、盗賊なんかの無法者も多数いる。盗賊に関しては一度遭遇しているしな、それにレップー剣の連中も盗賊と言えなくも無いし。
でも、今後も日本だけじゃなく、あらゆる世界から召喚されてしまうだろう人の事を考えたらアニスト王国は許せないよな… やっぱり報復は必要だし、そうなれば間違いなく人は死ぬだろう。当然俺達が殺してしまう事になる。
「ま、その辺はアレだな、これからもダンジョンでの訓練を続けて行って、殺してしまわないよう手加減しても尚圧倒できるようになればいいだけの事、命令を受けただけの兵士を殺すだけの理由は無いもんな」
「いや、それはどうかと思うわ」
「おわっ!」
不意に声をかけられ、思わず叫んでしまった。だから気配を消して背後に回るなよ…
「霞… どうしたんだ? 具合でも悪いのか? こんな時間に起きてくるなんて」
「それはちょっとひどいと思うわ。私だって偶には起きれるのよ」
そうは言いつつも、なぜか少しニヤついた顔を見せながら洗面所の方へ歩いて行ってしまった。
思わず時計を見るとまだ6時になっていない、当然美鈴もまだ起きてきていないし。昨日は早くに寝たのかな? まぁ確かに時々パっと目が覚めてしまう時はあるんだが。
その後霞が戻ってきて、厨房でホットミルクを作ってロビーに座る。
「さっきの話だけど、アニスト王国の事よね? あんな王に仕えていてまともな精神を保っていられるかは分からないと思うの。命令だけどそれを嬉々としてやってる輩もいるんじゃないかと思うわ」
「まぁそれはあるだろうな。でもまともな奴だっていると思うぞ、家族のために稼がなくちゃいけないとかそれぞれに理由があるもんだ」
「それは…ね、確かにそういった人ほどなぜか最前線に来るのよね、物語だと」
「あはは、物語だとそんな場面は多いかもな」
「それで、おじさんはアニスト王国に対しての報復に躊躇でも生まれたのかしら?」
「いや、それは無いな。出来る限り早い段階で自分達のやった愚かな行為を思い知らしてやらないとって思っているよ」
「そう、安心したわ。私はあの王の事絶対に許せないと思っているから、必ず後悔させてみせるわ」
「それには同意するけど王は殺すなよ? 語り継ぐものがいなくなっては意味ないからな」
「それも大丈夫だと思うわ。王を殺したとしても、それを見ていた人間がいればいい話だし、確か王女が何人かいたわよね… 王女達に恐怖を刻み込んで語り継がせれば良いのよ」
「おー怖い怖い。まぁでもその通りかもしれないな」
しかし、美鈴とは何度かあったけど、こうして霞と2人で話し込むって事は今まで無かったかもな。委員長然としていて真面目が服を着ているような雰囲気だったけど、やはり若いからか柔軟な考え方が出来るようだ。羨ましい…
俺みたいなおっさんはどうしても固定観念ってやつが邪魔をして、分かっているけどやめられないって事が多々あったからな、こうして素直なところは心底羨ましくて眩しいくらいだ。
とはいえ、俺が素直になったらそれはそれでキモいんだろう… 多分だけど。
「おはよう… はっ! 霞がいる!」
「美鈴までなんて事を言うのよ。こうして目が覚める時だってあるわ」
「そ、そうだけど…」
「早く顔を洗って来たら?」
「うん…」
ふはっ 美鈴もやはり俺と同じ驚き方をしたな。
やっぱり普段の行いって大事だよな… まぁ朝が弱いっていうのは別に悪いって事ではないけど、これだけ早くに起きてくるとさすがに驚いちゃうよ。
「そういえばおじさん、収納魔法って出来たの?」
「ああ、一昨日寝る前に何とかな。美鈴が先に出来ていて、コツみたいなものを聞いていたのが良かったのかもしれないな」
「そうね、私も物理系だって自覚はあるから心配だったけれど、何とかなったわ。それでおじさんの道具箱に入れてある武器を渡して欲しいのよね」
「そうだな、それは朝の内にやってしまった方が良いな」
せっかくなのでこの場で道具箱を出し、中身をまさぐってみる。
「えっと、どれが誰のだか分かんなくなってくるな… 霞はマチェットと槍と… ミスリルの剣だったか?」
「そうね、他の装備品は自分で持っているからそんな所だわ」
「んで、美鈴がマチェットとハンマーっと。俺のも出して収納に入れ直しておくか」
弓は使わないって言ってたから、これは倉庫の方に移動しておくか… 道具箱の中身もほとんど無くなったな。まぁこれはこれで休憩時の飲み物とかおやつとか入れるだろうから、持ち腐れにはならないだろうし良いんじゃないかな。
歩きながら飲むものと休憩時の飲み物は元から別だからな、道具箱も時間の経過が無いみたいだから、熱いお茶をキープしておくべきだ。収納の方も昨日覚えたばかりだし、信頼性の問題もあるし、何より収納スペースの事も問題だ。どこまで入るかは検証していないから、なるべく不必要な物は別にしておくべきだろう。




