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誤字報告いつもありがとうございます。
「あっ! あのトレント亜種だよ! 逃がさないでね霞!」
「了解したわ! それっ!」
いつもの茶色い幹のトレントではなく、かなり黒っぽい色合いのトレントが目の前に登場した。即座に反応した美鈴は一番動きの速い霞へ指示を飛ばし、自分は障壁でトレントの退路を断つために展開していた。
霞が猛進し、亜種のトレントに一瞬で辿り着いてその勢いのまま蹴りを入れる。
ほんの僅かな時間での攻撃だったが、なんと俺はトレントが倒されて消える前に鑑定スキルの発動に成功していた!
ブラックチェリートレント… ドロップはブラックチェリーとトレントの黒枝と書いてあるのを確認した。鑑定結果を確認している間にブラックチェリートレントはすでに消えていて、霞がドロップしたであろう何かを拾っている姿が見えた。
「チェリーが落ちていたわ、それと黒い枝も」
「おお、両方落としていったか… こりゃ儲けもんだな」
「両方? まさか今の一瞬であの魔物を鑑定できたの?」
「ああ!」
ふっふっふ。年甲斐も無く思わずドヤってしまったぜ。
「今のはブラックチェリートレントって魔物だな、ドロップはそのまんまブラックチェリーとトレントの黒枝らしい。ブラックチェリーは鑑定したか?」
「あっ、そうね… せっかく鑑定覚えたんだから使わないといけないわ」
【名称:ブラックチェリー。栄養価が高く、1年程若返らせる効果がある】
「見た? これも若返るみたいだよ?」
「いいわね、これも乱獲確定かしら? 1年でも数を食べれば十分効果的だと思うしね」
「うんうん。まぁ問題は黒トレントの出現率なんだけどね」
「とりあえずこの手のドロップ品はおじさんの倉庫でいいかしら? ゴールドアプルと一緒に置いといた方が分かりやすいと思うけど」
「そうだね、それが良いと思う」
そんな感じでドロップしたブラックチェリーは、厳重にタオルで梱包されてゴールドアプルの隣に置かれる事になった。
しかしこれで1年若返るのか。ドロップしたブラックチェリーは1房と言っていいのか、実は2つあるんだが、これがセットだというならば2つ食べれば1年若返ると。つまり1つだと半年? それは意味があるのか?
「いいね、レア魔物が連続で出るなんて意外とツイてるかもしれないよ」
「とりあえずどうするの?」
「え? とりあえずは予定通り先に進もうよ。50階層のボスだって確認しておきたいし、51階層以降の魔物の確認もね」
「そうね、その方が良いと思うわ。奥の方に行けばもっと楽に集められる要素があるかもしれないものね」
「うんうん!」
うんうんって… 2人ですごい盛り上がりを見せているな、そんなに若返りのアイテムが嬉しいんだろうか。まぁ嬉しいのかもしれないな… 考えてみれば、地球世界にいる女性達は、その手のアイテムを夢に見ているだろうし、お肌やら髪の毛やらの潤いや艶なんかに命をかけている人もいそうだしな。
「よし、それじゃ今日の探索はこの辺にしておくか。頑張ってトレントのボスを拝みに行こうぜ」
「そうだね! きっとレアドロップとかがあって、ゴールドアプルが出てくる可能性もあるからね!」
「倒してしまう前に忘れずに鑑定をしないとダメね、ドロップするかしないかだけでも分かれば収穫だわ」
「そうだな… 出るか出ないかを知らないまま狩り続けるなんてげっそりしそうだ」
ちょうどキリも良いし、本日の営業は終了だな。
すっかり当たり前になっているが、俺以外の冒険者だと休憩中も見張りやらなんやらで魔物の警戒をしないといけないから大変だよな。ゆっくり休めないから体力も満足に回復しないまま次の戦闘になるんだから消耗も激しいだろう。
それに、普通であれば食料だって持ち込みだからダンジョンに潜り続けられる限度もあるしな。
俺のマイホームってそういった意味では最強クラスかもしれないな… 戦闘面でも霞を毎日見ているから自分は弱いって思ってしまうけど、少なくともレップー剣の連中には負けていないし少しは考え方を改めてみるのも良いかもしれないな。
「うん、俺は意外と役に立っているぞ! 気後れする必要なんて無いんだ! 多分」
「おっ、急にどうしたの? おじさんは役に立ってるよ?」
「そうよ、おじさんがいないと… 少なくとも私は今日まで生きてこれたか分からないわ」
「ああ、悪い。驚かせたみたいだな… 考え事をしていてついつい声に出ちゃったよ」
「まぁアレだね、おじさんも大人だと言っても人間だって事だね。不安な時があったら相談しても良いからね?」
「ええそうね、私達のような小娘に話しても意味は無いと思っているかもしれないけれど、話すだけでスッキリする時もあると思うわ」
「本当に悪い、全然そんなんじゃないんだよ。まぁそんな時があったら愚痴でも零させてもらうよ」
いかんいかん、なんだか無駄に心配をかけてしまったようだ。思っている事が声に出ちゃうのは、今までは部屋で1人の時だけだったのに… 俺も少しは精神的に疲れているのかね、自分の事ってあんまり気づかないもんなんだよな。
そんなこんなで見通しの良い通路でマイホームに入って行く。見通しが良くないと、翌朝に出た時周囲の状況で危ない時があるからな。
まぁこの辺の事は最初から気を付けているから、今まで危険な目に遭ったことは無いが、わざわざ危ない目になんて遭いたくない。出来る限り安全第一だ。
「さて、今日ゲットしたブラックチェリーなんだけど… これもおじさんが食べるって事で私と霞の意見が一致したよ。だから食べる覚悟を決めといてね」
美鈴が夕食後にこんな事を言ってきた。美味しい果物なら2人とも食べたいんじゃないのか?
「なんでわざわざ俺に食べさせたがるんだ? 栄養価が高くて美味しいって鑑定に出てるんだから、興味が無いわけじゃないだろ?」
「そんなの… ちょっと待ってね」
美鈴が急に話を切り、霞の腕を引っ張って俺の視界から消えていった。なんなんだ? まぁいっぱいあるんなら遠慮なくもらうんだが現状ではゴールドアプルもブラックチェリーも1個ずつしか無いんだ、俺だけがもらうってのはねぇ… しかも特殊効果があるから。
「食べてしまうと6歳も若返るのか… つまり34歳になる訳だ。34歳の頃って何してたんだっけな」
6年前なんてほんの少し前だって感覚はあるのに全然思い出せない、多分大したことが無かったから印象が無いんだな。
まぁともかく、何を相談しに行ったか知らないが、一体どんな事を言ってくるか… 少し怖い気がするな。




