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誤字報告いつもありがとうございます。
本日の営業を終えてマイホームに入り、夕食とお風呂を終わらせてまったりとしていると、美鈴が製造のモニターを何やら見ている姿があった。
「どうした? 何か消耗品でも切れたのか?」
「え? いや、そういうんじゃないんだけど… リンゴを収納するように箱とかないかなって思ってね」
「おいおい、箱詰めする気かよ」
「いやぁ食べ物だったら清潔そうな箱に入れたいなって思って」
「まぁ分かるけど… 情熱をかける所が間違ってないか?」
「マイホームにもリンゴはあるからあまり拘るつもりは無いんだけど、ダンジョン産となれば何かが違うんじゃないかなって思ってね」
「なるほど箱かぁ、適当な物を見繕ってから布切れでも敷けばそれっぽくならないか? それなら清潔そうだし」
「そうなるかな、じゃあそれでお願いしても良いかな?」
「わかったわかった。多分50階層まではトレントが出ると思うから、ミカン箱くらいのサイズで間に合うな」
「一応複数個お願いします」
それだけ言うと美鈴は大浴場に入って行った。風呂まだだったのか…
まぁせっかくなので俺も箱を探すためにモニターを眺める事にする。以前見た時はホームセンターに売っていそうな軽量で大容量のプラスチック製っぽい箱があったのは確認済みだ、多分その辺のページに同様の物があると… ふぁっ!
なんてこったい、クーラーボックスがあるじゃないか! しかも61.5リットル… これはでかいな、もうこれでいいんじゃないか? クーラーボックスなら元々食材を入れたりするものだから何となく清潔そうで衛生的に見える。それにいちいち保冷材を使う必要が無いから余計な場所も取らないしな、よし、これにしちゃおうか。
迷うことなく製造ボタンをポチっ。
しかしこの製造に関してのラインナップは何が基準になっているんだろうな、俺が過去に買った物や触った物とかではないのは確かだし… 当然過去の俺は装甲車なんて触った事なんて無いからな。
「気にした所で正解が分かる事なんて多分一生無いと思うんだが、すっごい気になるよな」
異世界転移した俺達に与えられたスキルや職業、これを与えたのは… 神様とかって奴なんだろうかね、まぁそういった存在を信じてはいなかったけど、さすがにここまでくると信じてしまいそうになるな。
それにしても、仮想神様よ。レベルというか熟練度というか、それが上がるとラインナップが増えるなんて仕様… ちょっとゲームとかのやりすぎなんじゃないか? まぁある物は有難く使うけどさ、もうちょっとこう… 根拠を知る機会が欲しいというか、何がどうなってこうなっているのかをだな… まぁいいか、どうせ不毛なんだろうな。
異世界生活109日目
昨日は色々とごたごたしていて動き出しが遅かったので、41階層の半ばで探索を止めた訳だ。今日はそこからの続きとなる。さすがに昨日みたいにアホみたいな冒険者はいないだろうから、安心して探索に精が出せるという物だ。
ギルドの情報とレップー剣の面々が言った言葉で、間違いなく最高到達点は40階層だと分かったし、しかも40階層のボスを倒す事は出来ていないという事も分かった。なので、ここから先は間違いなく前人未踏であり、魔物以外は存在しないと言っていいだろう。
それよりも… 昨日の夜に新たな問題が発生した。製作したクーラーボックス×3個を見た美鈴は歓喜し、それはもう意気揚々と全滅させるまで狩ると言い出したのだ。しかもだ… 40階台が始まったばかりなので、これより奥に進めばきっと上位種が出ると思われる。その魔物次第では停滞して狩るまで言い出したのだ。
まぁ良いんだけどさ、まだ食べられるかどうかも分からん物に対して熱くなりすぎだと思うんだ。いや、俺もリンゴは嫌いじゃないよ? 蜜たっぷりの青森産を食べた時は感動さえしたもんだ。
「まーでも問題ないから良いか、どうせここまで辿り着ける冒険者はまだいないだろうしな」
当面の目標はあくまでも俺達の戦闘経験のアップだし、副産物としてダンジョンを潰して帝国にダメージをって感じだからな、優先順位としては戦闘をこなす事が優先される。だからというわけではないが、まぁ狩りたいというなら狩らせても良いと思っているし、霞が言うように訓練には向いているとも思っている。
一番良いのは相手がトレントという事だな、なにせ返り血の心配はいらないし人型でもないから無心で戦う事が出来る。訓練として体に動きを染みつかせるにはもってこいじゃないかと…
とはいえ、今日からこの階層を動かないでひたすら乱獲するという事ではない。今いるのが通常版のトレントだとして、別バージョンのトレントが現れるまでは進んで行くと思う。上位種ならドロップのリンゴも上位種なのではないかという安易な発想だが、多数決の結果満場一致で可決したから言うことは無い。
つまり… 俺も賛成したって事だね!
リンゴの上位種かぁ… 気になるよね。まだ食べられると分かったわけではないけど、ダンジョン産だけに多分食べられるとは思うんだよな。
もういっそ美鈴を待機させて毒見をしてみるべきかね… まぁいい、今日もいつも通りに進んで行くだけだ。
しばらくして美鈴と霞が起きてきたので、準備を整えて出発となった。31階層から40階層到達まで5日間かかったのを考えると、41階層から先も同等以上かかるのではないかと予想される。ダンジョンというのは深く潜ると比例して難易度が上がって行くから、5日以上かかると考えた方が間違いない。
とはいっても、現状では見つけられなかったトラップは無いし、見つけさえすれば美鈴の魔法障壁でトラップそのものを破壊する事が出来るので、油断さえしなければ大丈夫なんじゃないかと思っている。
「それじゃリンゴの乱獲始めようかい!」
「リンゴが目的になってるぞ」
「それで良いのよ、目的はリンゴだわ」
霞を先頭にスルスルと探索を始める。トレントと接敵しても、昨日結構戦闘していたから特に問題を感じさせない内容で倒していく。相も変わらず魔物を見つけると順番に先頭を入れ替えて、全員が単独で戦闘経験を積んでいく。
ゲームだとパーティ組んでいたらメンバー全員に経験値が入るものだが、さすがにそこまで現実は甘くないよな。見る事も経験の一つかもしれないが、はっきり言ってそれだけじゃ成長できていないっていうのが体で感じるんだ。なので、順番で戦闘をして経験を積む…
連携の実習とか全然やってないけど、そこだけが心配だな…




