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誤字報告いつもありがとうございます。
通路の先には6人の冒険者がいた、多分この6人が『レップー剣』なんだろうな。その中で座り込んでいるのが2人、その2人とも足に怪我しているようだ。
詳しくは分からんが、ズボンのいたるところが破れていて、血痕らしきものも見えるから多分そうだろう。
それにしてもコイツら… 通路を塞いで何やってんだ? この先がボス部屋なんだろうから怪我人を休ませているんだろうけど、何やら作戦会議でもしてたんだろうかね。
「おじさんどうする?」
美鈴がコソっと声をかけてくる、まぁこの状況なら接触は免れないからな…
「まぁなるようにしかならんだろ、ここを通らないと奥には行けないんだし、なるべくスルーの方向で行こう。向こうから絡んできた場合は、相手側の対応でこっちの行動を決めよう」
「そうね、個人的に言わせてもらえば絡まれる率は100%だと思うわよ」
「うんうん、私もそう思う。向こうは男6人でこっちは男1人に女2人、小規模ハーレムに見えてると思うよ」
「マジか… 実際はそんな事無いのにな」
「だから、「そんなおっさん放っておいて俺達と~」的な絡みが来ると思うよね」
「うぜぇ… まぁいいや、一応何かあったら嫌だし、美鈴はスマホで録画だけしといてくれ。俺達は撮影していることを前提に、少しばかり丁寧に行くぞ」
「了解よ。蹴り飛ばすにしても、その理由を証拠として残しておかないと、ギルドに顔が利くであろうパーティ相手だから、嘘つかれたらそれが通ってしまいそうよね」
「ああ、問題があってボコったとしても、間違いなく「突然やられた」とか、「不意打ちを食らった」なんて言うだろうね」
「ホント、浅い階層で出会ったゴミのような冒険者のおかげで、事前にそういった準備が出来るのはいいね、そこだけは利用価値があったよ」
「ひどいな?」
歩きながらの打ち合わせも終わり、美鈴がスマホを取り出して録画を開始する。相手が男性6人パーティなので、一応格好だけでも俺が一番先頭に出る事にする。
一番接近戦で強いのは霞だが、何も知らなければ黒髪ロングの華奢に見える美人さんだ。ある程度の自信を持っているであろう冒険者であれば、霞の容姿に舐めてかかってくる事は間違いないからな。建前だけでもおっさんが前にいれば、相手側も少しは警戒するだろう。なんせ40階層に無傷で来ているパーティだからな。
ズンズンと歩み寄って、接触まで残り10メートルを切ったあたりで向こうから声をかけてきた。
「なんだお前達、ここから先は通行止めだ、さっさと引き返すんだな」
「いや、その女の子2人は置いていっても良いぜ? 2人はどんなスキルが使えるんだ? それによっては俺達のパーティで使ってやってもいいんだぜ」
ふぅ… あまりにも予想通りなのに驚いてしまったが、同時に呆れてしまうな。
「通行止め? そんな話はギルドで聞いていないな。そもそもここを通らないとボスの所に行けないだろ」
録画されている事を知っているから、一応筋だけは通してみようか。
「ぁあ? ギルドなんか関係ないんだよ。この先は俺達のパーティ『レップー剣』が攻略完了するまで誰も通せないんだよ」
「何を言っている? お前達の要望なんか聞いていない、俺達は冒険者としてダンジョンの奥に進むだけだ。一番で攻略したいのなら実力で通ればいいだろう」
かなり固い喋り方になってしまった… 後ろで美鈴が震えているのを感じる、コイツ… 笑ってやがるな? こっちは真面目にやってるというのに!
「お前らの都合なんざどうでもいいんだよ! とりあえず引き返す前に手持ちの食料と女を置いていけよ、そうすりゃ見逃してやるぜ?」
「おっと、ギルドに報告したって無駄だからな? お前のような鈍くさそうなおっさんよりも、このダンジョンで最強パーティである俺達の言う事の方が信じられるもんだろ? わかったらさっさという事を聞いて消えやがれ!」
「おじさん… 私もう我慢できないわ、ヤっても良いかしら?」
「ああ、コイツらはどうにも救いようが無さそうだし、許可する。ただし、殺さないようにな?」
「もちろん分かっているわ、一応取りこぼしが出たら対処をお願いするわ」
「はいっ! それは私に任せて!」
あーあ、霞のご機嫌が急降下してるよ… なんだか相手側が可哀想になってきたな。だけども、やってる事はある意味強盗と何ら変わらない事なので、お仕置きはやむなしという感じだな。
スっと前に出る霞。腰に下げていたマチェットを鞘ごと俺に託すと、スタスタとレップー剣メンバーの方に近づいていく。
「お? なんだなんだ、話が分かるじゃないか。あんなおっさんよりも俺達と一緒にいた方が良い思いが出来るってもんだぜ? なんせ俺達の女になりたいって奴は山ほどいるんだからな! そんな中で選ばれるんだ、お前も嬉しいだろ?」
「何を言ってるのかしら、あなた達のような下衆とは喋りたくも無いので黙っていて。そしてこの通路は力尽くで通させてもらうわ」
「ギャハハハ! 女が1人で何が出来るって言うんだ! こっちは怪我人がいるとはいえ6人もいるんだ、組み伏せてくれって言ってるようなもんだぜ? よし、やっちまいな!」
ゲラゲラと下品な笑い方をしていたレップー剣、怪我をしていない4人が霞を取り囲むように動き出した… が。
ゴキッ!
「ギャアアアァァ! 足がぁ!」
素早い動きで近寄ってきた男の足にローキックを入れる霞、その音から…
「あー、ありゃ足が折れたな」
「うん、超痛そう」
すっかり他人事のように見守る俺と美鈴、目で追う事の出来ないような速さで繰り出されるローキック、当然速さの分だけ威力も乗っているだろう。あー痛そうだ。
「てめっ、何をしやがった!?」
「不愉快だから喋らないでくれるかしら」
ゴキッ! ボキッ!
続けて近い順に2人の足に蹴りを入れ、音から察するにこの2人の足も折れたようだ。えげつないな…
「グワァァァ!」
「いってぇぇぇ! 足がぁぁ!」
痛みに耐えきれなくなって倒れ込む3人の冒険者、残る1人は一番偉そうにしゃべっていた奴だけだ。座り込んでいる怪我人は驚愕した表情のまま固まっているから、どうにかしようと動き出すことは無さそうだな。一応監視はしておくが。
「ま、待て! 分かった、ここを通る事を許可してやってもいい!」
「何を言っているのかしら、元からここを通るのに許可なんている訳ないじゃない。見苦しいから倒れてくれないかしら」
ゴキッ!
「グアアアアアア!」
結局放たれたローキック、偉そうな男も崩れ落ちてのたうち回りだした。




