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新年明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします┏oペコッ
「うわっ! 思ったよりも大きいね!」
「大丈夫よ、槍が届く範囲だわ」
「よし、霞に任せたぞ!」
20階層ボス部屋にいたのは予想通り大型のスライムだった。サイズ的には1人が膝を抱えて入れる浴槽くらいの大きさで、無理矢理正方形にさせたら1立方メートルくらいだと思う。
「なんか大きい分動きが緩慢だねぇ… 障壁いる?」
「いや、一撃で仕留められると思うから不要よ」
スっと前に出た霞が、タプタプと蠢いている大型スライムに接近し、内部に見える核をサクっと一突きして離脱。その直後、大型スライムは形状を保てなくなって崩れ去った。
そして魔石を残してダンジョンに吸収されていく。
「ま、20階層じゃこんなもんか。油断はダメだけど必要以上の緊張もいらないな」
「そうね、却って気疲れしてしまうわ」
「ちょうどいい時間だし、今日はこのくらいにしようよ。私達のパーティはホワイト企業だからね!」
「企業かどうかは別として、今日はこの辺にしとくか」
「「賛成!」」
ボス部屋には特に宝箱とか見当たらなかったので、魔石だけ拾い部屋を後にした。そして21階層へと続く階段の手前でマイホームに入るのだった。
「さて、ギルドで購入した30階層までのマップで予習しておくか。罠の位置と行き止まりの場所だけ要チェックだな」
「そうね、行き止まりに宝箱があるかもしれないし、一応見て回った方が良いと思うわ」
「まぁ最高到達地点が40階層だっけ? だとすれば、そろそろ普通の冒険者の姿がいなくなる頃よね。探索していっても良いと思う」
「そうだな、ここまではマップに従って直行してきたから、宝箱とかの要素は無かったもんな」
「移動中も結構人がいたしね、あの中に飛び込んで探索とかちょっと嫌だよね」
「ええ、分かるわ… しかも低階層なら中身も大した事無いと思うし」
「まぁアレだ、30階層以降はマップも無い事だし、そこから探索で良いんじゃないか? 俺としてはさっさと40階層以降に行って、誰もいない所でじっくりとやりたいんだが」
「それもそうね、40階層以降は誰もいないだろうし。というか、その40階層に到達したパーティは40階層のボスは倒して無いって事かしら?」
「そうじゃない? 倒したんなら最高到達点は41階層になるはずだし」
「分かったわ、明日からは急いで進みましょ。40階層の初討伐も頂いて…」
「んじゃそれで行くとするか、それじゃあ本日の営業はおしまい! ここからはプライベートという事で解散!」
「「了解!」」
明日からの方針もすんなり決まり、女性陣は揃って厨房に向かったので俺はトレーニングルームに入る。
出てくる魔物がまだまだ弱いので、前衛にいる霞がほとんど倒してしまうので俺は歩くだけだったのだ。美鈴はたまに乱入して戦闘していたが、さすがに俺がそこに入っていくのは… と、自重した。
要するにアレだ、運動不足なのだ。ダンジョンの階層が深くなっていくにつれて魔物は強くなっていく、そんな時に鈍った体ではどうにもならないからな。それでも、たとえ俺が調子悪かったとしても美鈴と霞がどうにかしてしまうと思っているが、そこはホラ、おっさんにも小さなプライドって奴があるんだよ。女の子だけに戦闘させて後ろからついていくだけ… そんなのはちょっと嫌すぎる。
異世界生活102日目
昨日は急ぎ足だったとはいえ、半日ほどで20階層まで進んでこれた。多分これはこのダンジョンでは最速記録になっているだろう… 誰も競っていないと思うが。
今日も同じようなペースで進められれば、多少難易度が上がっているとしても30階層は越えられると思っている。
一応冊子ではトップが40階層と書かれているが、もしかしたら更新されている可能性もある。どこの誰とも知らない冒険者とダンジョン内でかち合うのは正直望ましくないので、早急に未踏破の階層へと行きたいものだ。
というのも、昨日ここまで来るときにも何組かのパーティとかち合ったんだが… どいつもこいつも無遠慮というか図々しいというかアホなのかバカなのか、『こんなおっさんよりも俺達と一緒に進んだ方が楽できるぜ?』とか、『良い槍持ってんな、ソレをヨコセよ』とか。
しまいには『怪我して動けないから転移陣まで連れて行ってくれ。あ、当然俺達の荷物もな』とか…
俺もそうだったが、特に美鈴と霞のあの顔! 『関わるな!』を全力で伝えられるような顔をしていたからな。まぁ全部断ってやったんだけどね…
ともかくだ、すでに攻略されている階層では大した発見は無いだろうという判断があり、先を急ぎたいだけだ。実戦訓練にしたって現状では先頭にいる霞だけで事足りてしまうし、その霞ですら面倒そうに槍を突くだけの簡単なお仕事と化している。
モチベーションを上げるにはもう少し手ごわい方が良いだろう。ま、ある意味これも油断と言われてしまう事かもしれないけどね…
「やっと30階層に着いたね… 今何時?」
「今は午後3時半だな。んじゃ早速行くとするか?」
「そうね、ボスを倒してからお茶にしましょう」
21階層からここまでの間、出てきた魔物は2足歩行の犬だった。美鈴が言うには、あの魔物は『コボルド』というらしい。
まぁ俺でも名前だけは聞いた事はあるが、ゲームに出てくるコボルドはドット絵のしか知らないから瞬時にその名前は出てこなかったのだ。
つまり… 30階層のボスはコボルドの上位種である可能性が非常に高いという事だな。
とはいえ、コボルドの上位種だと言われても、ソイツがどんなもんかは良く分かっていない。ゴブリンだったらゴブリンキングとかがいるというのは聞いた事はあるが、コボルドねぇ… どんな奴なんだろ。道中に出てきたコボルドは、立った状態で身長が150センチくらいのマッチョボディだったんだが… これよりも大型になっている可能性は高いよな。
「グルルルルル…」
思った通りだ。でかいコボルド… 俺よりもでかいぞ!
「なんか筋肉がうざい感じだね?」
「そうね、顔もごめんなさいだわ」
早速酷評を浴びせる女性陣。顔がごめんなさいって… いや、確かにコボルドの上位種と思われるアイツの顔は、ブルドッグの垂れた頬肉を、更にだらしなくした感じで涎が滝のように流れている。
「確かにごめんなさいだな…」
誤字報告いつもありがとうございます。




