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誤字報告いつもありがとうございます。
「それじゃ、いつものように霞は受付嬢を口説いて来てくれ。俺達は資料室とか見て回ってくるから。何かあったらインカムで知らせてくれ」
「口説くって何よ、まぁいいけれど。それじゃ行ってくるわ」
霞が受付の方に歩いていくのを見送った後、美鈴が依頼の掲示板の方に行き、俺は資料室を探しに歩きだした。
今まで立ち寄ったギルドにはほとんどあったからな、多分ここにもあると思われる。まぁ無いと新人とかは満足に調べる事も出来ないから常設されているとは思うが… どこだ。
しかしこのギルド、グリムズ王国の王都ギルドと同じくらいの広さがある。それだけ多くの冒険者が立ち寄るギルドなのだろうか、多くの冒険者が立ち寄るって事は、それなりにここには仕事があるって事になるが… 実はこの近所にダンジョンがあったりとかしないかな? そうであれば少しうれしいんだけどな。
時刻が10時を過ぎているせいか、広さの割には冒険者の数は少ない。まぁおかげで歩きやすくて良いんだが、どうも12~3歳の子供が多い事に疑問に感じる。こんな子供も冒険者として働いているって事だよな、なんだか逞しいよな。おっと、資料室を発見した、早速入ってみよう。
中に入ってみると、6畳間くらいの部屋に書籍と思われる物が壁際の棚に収められていた。
書籍と言ったが、せいぜい10ページくらいしか無いので冊子と言った方が間違いないな。今まで気にしてなかったけど、この世界は紙というのは貴重品なんだろうかね。
薄っぺら過ぎて、棚に収められた状態ではどれがどのような事を書いているかの判断が全くつかないので、端から順に見ていく事にする。
最初に手に取った冊子は手書きの魔物図鑑のようで、ブラッドウルフとか、黒い蛇とか、森を抜けてくるときに見かけた魔物達の絵が描いてあり、猿っぽい奴と黒い蛇は上級者向けと書いてあった。
「しかしブラッドウルフ… 本当にどこにでもいるんだな。まぁ肉も皮も需要があるらしいから悪い事ではないと思うが、それでも魔物だから戦えない者とかは襲われて殺されたりしてるんだろうな」
まぁ魔物としては小物に入る部類だと思うから、若手のパーティとかが狩っているんだろうな。次の冊子を見てみるか。
次に手に取った冊子も手書きの魔物図鑑で、その中には今まで見なかった魔物が書かれていた。そう、RPGなどでは良く見る最底辺の魔物、スライムとゴブリンが描かれていたのだ。
「おお、スライムか… そういえば初めて見るかもしれないな。半透明の体の中に核があり、それを破壊すると倒せる…か。溶解液に注意とも書かれているな、キングオブ雑魚だと思っていたけど、思いの外強そうな事が書いてるぞ? マジかよ」
良くある設定と同じで、なんでも取り込んで溶かしてしまう魔物だという事。核を壊すために刃物を突き刺しても、グズグズしていると刃物まで溶けてしまうような事まで書いてあった。
種類により大きさも違うらしく、大きなものはゴブリンすら覆い尽くせるほどだと… これは雑魚じゃないな、かなり怖い魔物だわ。
そしてゴブリン、身長が100cm~120cmの小柄なサイズで2足歩行。木の棒や冒険者が落としたと思われる武器を使用したりと、これも日本で語られるゲーム内のゴブリンと同じ感じだな。
1体が相手なら特に問題は無く倒せるが、複数でいる事が多く、物量で押してくる作戦を取る事もあるそうだ。中でも上位種が指揮を執っていた場合、その討伐難易度は跳ね上がるそうだ。
「ゴブリンは大体ゲームで知る知識と変わらないな、上位種って事はファイターとかマジシャンとか、果てはゴブリンキングとかいるのかもしれない」
しかし、オークやオーガの上位種との戦闘を既に経験しているから、特に脅威には感じなかった。それよりもスライムの方が怖い感じだよ。
刃物まで溶かしてしまうなんて、相当強い毒性を持つ溶解液って事なんだろうし、そんな液体をかけられたら… おお怖い怖い。
他の冊子にも目を通していくと、どうやら魔物図鑑がメインのようで、かなりの種類を網羅していた。
角の生えた兎とか、蝙蝠のような奴、ワニっぽい爬虫類系まで描いてあるとは… この周囲にはどんだけ魔物がいるんだ? だからここのギルドは栄えている感じがするのか? そう考えると、高い防壁は魔物達の脅威度が高いという事を示唆していたのかもしれない。
「ん? おやおや?」
次に手に取った冊子… ダンジョンのマップが描かれていた。
これは… 早速ダンジョンに当たってしまったか? どれどれ。
『バイソンダンジョン、低階層図面』タイトルはこんな感じ。バイソンってどこだ? そういえばこの町の名前も聞いていなかったな… ここがバイソンであれば言う事無しなんだが、とりあえず続きを見てみるか。
バイソンダンジョン、現在最高到達階層は40階層。Bランクパーティ『レップー剣』が記録した。30階層から40階層までの情報は公開されていない為、マッピングが完了しているのは30階層までとなっている。
「なんだ、あるじゃないかダンジョンが。しかも30階層までの地図はあると… おや? 地図は受付で販売中って金取るのかよ」
値段にもよるが、割に合わないと判断したら買わなくてもいいな。最高到達階層は40階層という事だから、そこが最下層では無いって事だよな… よし、この冊子だけコピーしておくか。
資料室からササっとマイホームに入り、大急ぎで15ページほどの冊子をコピーする。ページ数が少ないから数分で終わり、こそっと戻る。
「もう美鈴達と合流しても良いな、あっ、他のダンジョンについて書いてある物もあるかもしれないな… やっぱり全部目を通しておくか」
そう思い直し、さっきの続きから順に見て回るが、他のダンジョンについて書いてある物は無かった。
ちっ、時間の無駄だったな… まぁいい、今度こそ合流しよう。
資料室を出て、ギルドのロビーに戻ってみると、なぜか美鈴の周囲に子供の冒険者が集まっていた。何をやってるんだと伺ってみると… どうやら子供達にクリーンの魔法を範囲でかけているようだった。
「何をやってるんだ?」
「あっ、いやぁ依頼表をチェックしてたんだけど… この子達がちょっと臭くてね、ちょうどクリーン魔法の範囲化できないか試したかったから練習台になってもらってたの」
「そうか、なんだかお疲れさん」
その後、「お姉ちゃんありがとー!」と声をかけながら子供達は散っていった。町の中での仕事を受けたのか、この時間でも出来る事はありそうな感じだった。




