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誤字報告いつもありがとうございます。

 それから2時間ほどで王都に到着し、とりあえず真っ直ぐギルドへと向かった。報告だけは済ましておきたかったからな、『報連相』は終わらせておかないとなぜか落ち着かない性分なのだ。



「あ、皆様お久しぶりです。ギルマスが会いたがっていましたよ」

「ええ?」


 会いたがっていたなんて… キモいだろ。個人的にはあのような筋肉とはお近づきにはなりたくないんだが。ふと横を見ると、美鈴と霞も嫌そうな顔をしている。

 あのギルドマスターは暑苦しいからしょうがないか…


「こっちも報告があるんだ、取り次いでもらえるかい?」

「はい、こちらへどうぞ」


 事前に言われていたかのように職員は俺達をギルドマスターの部屋へと案内してくれる。


「おう、雪月花の諸君久しぶりだな。こっちからも話はあるが、何か報告があるって?」

「ああ、アベマスにあったダンジョン… 俺達で潰してきたよ。ダンジョンコアと思われる物を持ち帰って来たんだが、ギルドで買い取ってもらえるのか?」

「はぁぁ!? アベマスダンジョンといったらゾンビや死霊系しか出ない場所だよな? あそこだって確か12~3階層までしか到達していなかったはずだ、最下層は何階層だった? そして最下層のボスは?」

「落ち着けよ… ダンジョン最下層は30階層、ボスはドラゴンのゾンビだった。かなり大きかったし腐肉を散らしながら動いていたから普通に強いと思うぞ」

「ドラゴンゾンビだと!? そんな奴がいたとは… しかし良く倒せたな、聞いてるだけだとA判定のボスだと思うが」

「まぁアレだ、ウチには聖魔法を操るのがいるからな… もうほとんど1人で片付けたようなものだ」

「はいはーい! 私が仕留めました! それも一撃で!」

「マジか…」


 俺達の中で一番小さく、見た目だけなら一番冒険者らしくない美鈴の発言に、ギルドマスターは怪訝な顔をしている。


「一応記録は取ってあるけれど、見る?」

「記録だと? ど、どれどれ?」


 霞がスマホを出し、当時の戦いの録画を流し始めた。ギルドマスターは小さなスマホの画面にくっつきそうなほど顔を寄せ、食い入るように見ている。


 ボス部屋に入りドラゴンゾンビが立ち上がり、腐肉をこぼしながら咆哮を上げ、そして美鈴の障壁ビンタによって秒殺されているシーンが流れていく…

『うぷっ、か、回収よろしく』

『… 行ってくる』


 画面の中の俺がドロップを拾いに行ったところで動画は終了する。


「この魔道具はすごいな! 下手に絵を描かせるよりよっぽど使い道があるぞ! この道具は売らないのか? 高値で買うぞ?」

「悪いけどこれは売れないわ、大事な物なのよ」

「そ、そうか… 残念だが、本当に一撃だったな。これだけ見ればドラゴンゾンビは弱そうに見えるけど、実際はそうじゃないんだろうな。しかし今の魔法は何だ? あんな魔法は見た事無いぞ」

「私のオリジナルなので教えられませーん」

「そ、そうか…」


 少々小馬鹿にしたような態度の美鈴だが、ギルドマスターはドラゴンゾンビの存在に衝撃を受けているらしく、スルーだった。美鈴は筋肉嫌いなのか? 後で聞いてみるか。


「それで、アベマスダンジョンはどうなったんだ?」

「現地の職員と話している最中に消えてしまったよ。あそこの職員の仕事を奪ってしまったようですまないな」

「いや、あのダンジョンは実入りが少ない上にやってくる冒険者も数少ない、あの場所の出張所は早々に引き上げたかったから問題は無いぞ。ダンジョンがあるから引き上げる事が出来なかったくらいだ」

「それじゃ次は… ダンジョンコアでも見てもらおうかな」

「うむ、この部屋に出せる大きさなのか?」

「ああ、それは大丈夫だ。俺の収納空間に入れてあるのを直接見てもらおうと思ってるから」


 俺はスキルを使い、ダンジョンコアを入れたガレージを出してシャッターを開ける。

 そこには転がして入れたままのダンジョンコアが杜撰な雰囲気を出しながら転がっている… 


「随分と大雑把な仕事をしたんだな… これだけなんか雑じゃないか?」

「コアを取り出したらダンジョンがどうなるか分からなかったからな、安全のために大慌てで脱出したんだよ」

「しかしこれは大きいな…」


 ガレージの中に入り、転がされているコアの周囲を回りながら観察しているギルドマスター。そのサイズは縦に1メートルほど、横に50センチほどの楕円形で、今は横になって転がっている。

 なぜかダンジョンにセットされている時は立っている状態だったんだよな… 不思議だ。


「これはちょっと値段の付けようがないな… オークションに出すしかないと思うぞ?」

「そうか… それじゃあ記念に取っておくか? ダンジョン初攻略記念という事で」


 美鈴と霞の方を向いて提案してみる。

 ギルドマスターが分からない程の価値があるなら、多分びっくりするような値段になる可能性がある。当然出所は明かされるだろうから、貴族たちがこぞってダンジョン攻略に本腰を入れる… かもしれない。

 そんな事になれば、ダンジョンと共存している町は大打撃を食らう事になる。

 ま、そんな簡単に攻略できないんだろうけど、間違いなく問題が起こるだろう。そうなれば領地にダンジョンを2ヵ所持ち、その収益を活用しているハワード伯爵が泣き出すかもしれないからな…


「ん、おじさんに任せるよ。これを売らなくても稼ぎは出ているし問題は無いと思う」

「そうね、一番活躍した美鈴がそう言うなら私も同意見で良いわ」

「そうだな、あのダンジョンは美鈴の独壇場だったからな… 美鈴が許可するならこれは俺達が持っていよう。何か他に使い道が出来るかもしれないからな」

「「了解!」」


 話がまとまったところで、ダンジョンコアの観察に余念のないギルドマスターをガレージから追い出してシャッターを閉じる。


「そういえばギルマスも私達に何か用事あったの?」

「ああ、お前達の知り合いのレイコがな… 帝国軍数千の兵を魔法で焼き殺して王都を救ったんだが、その力が貴族の目に留まってしまってな… 今は姿を隠しているんだよ」

「ええ? あっもしかしてあの広大な焦げ跡は…」

「ああ、レイコの魔法で地面まで焼いちまったって事だな」

「ほほぅ…」

「しっかしとんでもない魔法使いだなアイツは、まぁ先にレイコの魔法を見てたから、ドラゴンゾンビを一撃で倒したのを見ても落ち着いていられたんだがな」


 レイコ… 数千の兵を焼き殺したって、恐ろしい事をやってしまったんだな…

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