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誤字報告いつもありがとうございます。

「おじさーん! 晩御飯がもうできるよー!」

「おっ、了解した。すぐに汗を流してくるよ」

「はーい」


 軽く体を動かすだけのつもりだったけど、夢中で動いていたら汗だくになっていた。


「俺も何かしらのストレスでも抱えているのかね、こんなに汗をかいているのに気づかないって…」


 まぁいい、せっかく食事の用意をしてもらっているんだから待たせるわけにもいかない。ササっと俺専用となったお風呂場に直行して汗だけ流す、お風呂は夕食後にもう一度入るつもりだからこれで十分だろう。



 この異世界に来てから間もなく3ヵ月になろうとしている。交代で調理番をしているとはいえ、ほぼ毎日料理をしているという事で、美鈴も霞も非常に料理が上達している。俺は相変わらずなんだが…

 そのおかげで、食事の時間というのは1日の中でも楽しみな時間になっていた。


 さすがにレシピが無い以上レパートリーを増やす事は難しいが、何となくこうだった… なんて知識でも、2人で時間のある時に研究し、じわじわと種類も増えていく。

 俺も参加したいんだが、なぜか俺は朝食のみの当番となっていた。まぁおにぎりとかサンドイッチとか実力が無くとも食べられる物限定といった感じだ。

 一番得意だったカレーも、最近では美鈴と霞の方が美味しく作るようになっているのですっかりお役御免だ…


「しっかし上達してるよな、料理」

「そりゃそうだよ、人間ってやつは美味しい食べ物が待っているというだけで、意地でも家に帰るって気分になるんだからね。士気向上にもってこいってやつだよ」

「それもあるし、どうせ食べるなら美味しい方が良いじゃない? 食は宝、これは間違いない事よ」

「そうだなぁ、この世界に来てからは特にそう思うよな。日本にいた頃は、金さえあればいつでもどこでも旨いものが食べられた… こっちの方が特殊だったんだって思うようになってるよ」

「そうね、思えば日本という国は素晴らしい食文化だったと感じるわ。この世界で日本料理を再現する事は不可能でしょうしね… 特にお刺身とか」

「まぁ魚を生で食べる文化は、地球世界でも特殊だったっぽいからね」

「そうだなぁ、グリムズ王国みたいに内陸部の国だと、市場に行っても魚なんて見かけないもんな」

「海の近くや川の近くだったらあるんだろうけどね、それでも塩漬けくらいしか無いでしょ」

「馴染みのある魚は遠洋漁業で取れるものが多いもんな… マグロとか」


 残念な事に、漁業についてもあまり詳しくない為、海のどのへんでどんな魚が獲れるとか良く知らない。マグロ漁船が非常に辛く厳しい仕事だというのは聞いた事あるから、ずいぶん長い事陸から離れてるんだろうな~程度の認識だ。


 この世界に魚料理を広めてやるというのも楽しいかもしれないな… まぁそれを仕事にしたくはないが。

 冒険者生活に慣れて来たせいか、こっちの方が性に合っているような感じがしているから、今から汗水垂らして社畜のような仕事をするのもどうかと思っている。


「でもアレだな、冒険者生活ってツボにはまるとすごく稼げるから辞められなくなるな」

「そうね、全てが自己責任だから、仕事の内容と自分の能力をうまく測れる人でないと大成しないと思うけど、私もこれが合っていると思ってるわ」

「私達がこれだけ楽に冒険者が出来るってのも、おじさんがいるからなんだけどね… そろそろどこかで野営の練習とかした方が良いのかな? 護衛とか」

「うーん… まぁ経験して損をするってことは無いだろうけど、正直護衛は嫌だな。だからDランクから上げてないわけだし」

「そうよね、やっぱり護衛とかだと他のパーティと合同になったりするから、他の冒険者が鬱陶しくなると思うわ」

「まぁそうなんだよね」


 護衛の仕事はしないって事で決定だと思っているが、野営の練習か… それは有りかもしれないな。

 キャンプ気分になりがちだけど、実際には夜行性の魔物に対抗する手段を身に付けておくのも悪くないかもしれない。


 見張りをするとなると… やっぱり気配を察知する能力が必須となるだろう。俺達もダンジョン内や森なんかにいる時は周囲を警戒しているし、魔物よりも先に気づく事も良くある。

 これは経験しておいた方が得になりそうだな。ただ敢えて言うならば、野営をするなら虫対策だけはしっかりとしておかないといけないな。


 虫が媒介となって蔓延した伝染病の記録も多々ある事だし、現地人には何ともなくても俺達地球人には有効なウィルスとかもあるかもしれない。

 ああいうのって喰らって覚える抗体だからな… 明日王都に入ったらそういった魔道具を探してみるのも良いかもしれないな。

 ん? そういえば制作で虫除けスプレーとかあるかもしれないな。まぁこの世界の虫たちに通用するかは分からないけど、無いよりはマシか? 後で見ておこう。



 そんな感じで夕食も終わり、後片付けを済ませると美鈴と霞はトレーニングルームに入っていった。

 なんだかんだ毎日何かしらの訓練をしている… これもある意味日本人の習性なのかもしれないな。やっておかないと落ち着かないっていうのは確かに俺にもあるから、あの2人にもきっとあるのだろう。


 さて、んじゃ俺はのんびり風呂にでも入るか…



 異世界生活88日目


 予定通り朝から徒歩で王都に向かう。王都の街並みは見えないが、背の高い防壁はちゃんと見えている距離なので、ほどなくすれば到着するだろう。


「しかしこれ、地面焦げてない?」

「焦げてるわね… 何があったのかしら」

「うーん、さすがに予想は出来ないな。ギルドに行ったら聞いてみるしかないな」


 そうなのだ、大地が広範囲で焦げているのだ。一体何をどうやったらこんな惨状になるんだか… ところどころ土が抉られている形跡があるし、木材の破片とかも落ちてたりする。


「もしかしたら帝国軍と王国軍、この場で一度やりあったのかもしれないね。そして昨日の場所まで撤退して追いつかれて… みたいな?」

「それはあるかもしれないけど、この惨状の説明にはならないな」

「そうね、以前見た防衛戦での魔法攻撃じゃこうはならないわよね」

「うん、ファイヤーボールっぽい魔法も規模が小さかったしね、これだけの事をするには… おじさんの持つ武器で出来る?」

「いやぁ無理じゃないか? 焼夷弾を乱射したってこうはならないな」


 少し離れていただけで一体何があったのか… なんかギルドで話を聞くのが億劫になってくるな。

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