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誤字報告いつもありがとうございます。
11階層は予定通りすんなりと進み、マッピングをしながら隅々まで探索して階段へと辿り着いた。残念ながら宝箱とかそういった物は見つかっていない…
「はぁ、憂鬱だが12階層に降りるか。憂鬱だが」
「本当ね、でもさすがに防臭装備にも慣れてきた感じがするわ」
「うんうん、なんか着込む時スムーズに着れるようになった気がするよね。防水エプロンに安全長靴、ゴム手袋にガスマスク… ああフル装備だ」
「まぁマスク以外は気休めのような気もするけどな、だって近づく前に倒せてるわけだし、返り血とか浴びる距離じゃないからな」
「そりゃそうよ、そうならないようにしてるんだから」
「でも万が一が心配だから着ておくわ、さすがに気分の良い物じゃないから」
別な意味での覚悟を決め、12階層へと進んでいった。
当然の事だが、気分が乗らない以上モチベーションの継続なんて無理ゲーであり、出来る限り最短距離を進んで行く。
12階層でも人型のゾンビと狼系のゾンビが異臭を放ちながら徘徊していて、見つけ次第即排除という形で戦闘をこなしていく。まぁはっきり言ってこのやり方では… 戦闘経験を積むなんてことは無いかもしれない。だけどゾンビが相手であれば仕方がない、だってアニスト王国と事を構えるにしたって、王国側からゾンビが出てくる事なんて無いだろうしな。
とりあえずこれは… そうだな。サーチ&デストロイの練習という事で割り切ろう。
索敵しつつ見つけ次第デストローイ! 人型ゾンビはズルズルと何かを引きずるような音を出し、狼系ゾンビもビチャビチャと何かしら音を出しながら移動しているので、索敵の練習にもならないんだがそこは目を瞑る事にする。
「10階ボスのオークゾンビ、普通に雑魚として出てくるのはどの階層からだろうね。ぶっちゃけるけど大きい分匂いもひどかった気がするよね」
「確かにそうね、近接で… しかも私のような打撃系では絶対に戦いたくない敵ナンバー1だわ。今のところは」
「でもさ、今後はオーガのゾンビとかイエティとか? もっと大型のゾンビが控えているかもしれないよね」
「私もぶっちゃけるけど、そこは美鈴に頑張ってもらいたいわ。その代わりスケルトンは任せてもらって大丈夫よ」
「やっぱそうなりますよねー、分かってた。でもまぁ適材適所だって事は理解してるから… それに霞やおじさんがゾンビの返り血塗れになられたらと思うと… そっちの方が嫌だから頑張るよ!」
「もしそうなったら、クリーンの魔法を使うのは美鈴だしな。どういう結果になったとしても聖女が大活躍で間違いない」
「本当そうよね、でもそれなら少しでも臭くない方を選ぶよ」
美鈴もこのダンジョンでは自分が主戦力だという事を理解してモチベは高い、俺と霞も対スケルトンではちゃんと近接戦闘をしているが、低階層では訓練になるような強い骨は出てきていない…
やはり攻略するにしても早急に深い階層へと進んだ方が良さそうだな。実際に強い魔物と戦った後は、それなりに成長しているというのが実感できるから、もしかしたら目に見えないだけでレベルという概念があるのかもしれない。
まぁ俺もRPGとかで遊ぶと、ラスボス前にレベルカンストにしてから挑むタイプだから、経験値上げに対しては特に苦行だと思わないので大丈夫だろう。
それに、俺の持つマイホームベースというスキルはゲーム的に考えると… どこでも宿屋でセーブ可能って事になるんだよな、良いじゃないか、甘い人生大歓迎だし。
「よし、それじゃゾンビゾーンだけど行くか」
「「了解!」」
それからの攻略は速かった… サクサク進むという目標を掲げているので美鈴の障壁ビンタも戦闘ごとにどんどん効率化されていき、霞もスケルトンを粉砕するのにあの手この手で効率を上げていった。
俺はというと… いつものようにすっかり出番を取られてしまい、美鈴と霞が高速で倒していく魔物のドロップを拾うだけで手一杯になってしまっている。
美鈴はまだいい、壁に向かって障壁ビンタをするので、壁際にドロップが固まって落ちるから。しかし霞、もう少し手加減をしてくれ! あっちこっちに吹き飛ばして粉砕するもんだから拾うのも楽じゃない。
「ふー、階段を見つけたからここでお昼にしよう?」
「そうね、次は15階層… 思ったよりも速く進めて満足だわ」
「ソーデスネ」
「おじさん元気ないよ? もっと張り切って行かないと!」
「俺にもスケルトン分けてくれよ… 殲滅速度が速すぎて、ドロップ拾っているだけですぐ次の戦闘に入っているから俺の出番が…」
「ああ…」
「おじさんの言いたい事は分かるわ。でも適材適所の話はしているんだし、回収したドロップ品を倉庫に入れられるのはおじさんだけなの。パーティとしてしっかりと貢献しているのは美鈴も分かっているから戦闘は任せてもらっても良いのよ?」
「そうじゃない! それについては俺だって納得している。ただ体を動かしたいんだ、それも分かるだろ?」
「まぁ分かるけど… じゃあゾンビでも叩いてみる?」
「嫌だ、スケルトンが良い」
「だって霞、少し自重しないとダメなんじゃない?」
「………………」
「スルーしてやがる… まぁいい、隙を見て乱入してやる」
「ちょっとおじさん、それは大人気無いんじゃないかしら。そこは若者の成長を見守るために…」
「いやいや、魔物が強くなってくれば必然的に頼る事になるんだ。それに弱いスケルトンばかり倒してても飽きるだろ?」
「飽きないわよ、見事な程に粉々に砕けるから、むしろ楽しいわ。じゃあ妥協案として提案するわ、ゴースト系をお願いしてもいいかしら?」
「ゴーストかぁ… それじゃゴーストで発散するかね」
霞もなかなか譲ってくれなかったが、とりあえずゴーストは俺が担当するという事で話がまとまり、昼食を取るためにマイホームに入っていく。
今日の昼食はカツサンドだ。前回もそうだったが、ダンジョンアタックをしている時の俺達3人はものすごく良く食べる。
このカツサンドだって、俺達的には『軽く済ませている』という状態だが… 実際にはかなり重いはずだ。
それでも俺を含めて太らないという事は、摂取と消費の釣り合いが取れているのだろう。まぁ体脂肪率とか健康とかを気にしないでたくさん食べられるのは良い事なんだけどね。
「さて、一休みしたら続きを始めるかね」
「了解、ダンジョン最下層をクリアしたらどんな風に消えていくのか… 楽しみだね」
「そうね、他のダンジョンならその資源で食べている人がいるから、安易に討伐は出来ないけど、このダンジョンならだれも困らなそうだから良いわよね」
よし、それじゃ再開と行くか




