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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:勇者君
とりあえずこの先は森の中を進むという事で、暗い中進むのはさすがに危険。夜が明けるまで休憩となった。
ガイルが持っていた時間の分かる魔道具で、交代で夜番をする事にして休む事になった。最初にガイルが見張りをし、次に賢者で最後に俺という事で、見張りの後はそのまま森の中を進まなければいけないから早々に休ませてもらう事にした。
ま、体力的には俺が一番あるだろうからな、こればかりは仕方がないだろう。
夜が明け、薄っすらと明るくなって来た所で行動を開始。
ガイルが用意した干し肉を齧りながら森の中を進みだした。神聖教国の皇都までの最短距離である森を進めば大体6~7日で到着するらしいが、当然森の中なので道なんかが整備されているわけではない。
森がそのまま国境になっているらしく、森さえ抜けてしまえばそこは神聖教国の国土であり、安全になるという。
「そいっ!!」
「ギャン!」
森の中を移動中、木の陰から赤茶けた毛をもつ狼が現れたが、昨日王城から持ち出した剣を振れば容易く撃退できた。
賢者の奴も氷の矢みたいな魔法で他の狼を倒している。
「片腕でもとりあえず動けるな」
「ま、この辺に出てくる程度の魔物で手こずってれば、この先進むのが怖いんだがな」
全くその通りだが、腕を失ってから初めての実戦だ、ウォーミングアップにはちょうどいい魔物だった。
ガイルも神官騎士?とやらで、治癒系の魔法も使える騎士らしいから戦力としても申し分ないだろう。ただ… 賢者と同等の体力だっていうのには笑ってしまったが。
「一応最短距離を進みますが、出来る限り森林地帯は早い内に抜けたいと思ってますので」
それには同意だ、いくらなんでも森の中で何日も野営するのは疲れるだろう。そもそも野営なんて経験ないからな… キャンプくらいならあるけど、あんな楽しい物じゃないはずだ。
「とりあえず国境を越えてから…だな」
「ああ、そろそろ王城でも俺達がいないって気づいてるだろうからな」
まずは神聖教国のお偉いさんに会う約束だからそれをやり、それから他の日本人を探しに行くべきだよな。特に聖女… ゲームやラノベなんかでは勇者と聖女はセットのような物、なんなら嫁にしてやっても良いしな。
ま、聖女がどんな女だったかすっかり忘れたけどな!
SIDE:来栖大樹
異世界生活78日目
これから11階層、予想通りならこのフロアはスケルトン系が出てくるはずだ。つまり… 匂いが無い! ゴースト系は物理的な攻撃が当たらないっていう難点はあるが、ゴースト自体に匂いは無いと思う。ゴーストそのものに対しては、現状美鈴頼りになっているけど、今日は余裕があるうちに物理的な攻撃方法を試しておこうと思う。
魔法が当たるけど物理は当たらない。そうであれば… 物理攻撃に魔力を纏わせればどうなるか試そうと思っている。魔力の部分に当たり判定があるんなら、俺や霞でも対処が可能になり、今後強くなっていくであろう魔物にも後れを取る事は減ってくるはず。
当たらないと思って攻撃に参加できない… なんて考えなくて済むからな。
「さて、奇数階層はともかく、偶数階層だけは探索無しで突き進む… この方針で良いか?」
「「賛成!!」」
「よし、そんじゃ今日も気を付けて行こう! いくら聖女がいるからって無駄に怪我する必要は無いからな?」
「大丈夫、痛いのは嫌いだから!」
「私もよ、残念ながらそんな趣味は無いわ」
「俺もだ、それじゃあ出発!」
意気揚々とマイホームから飛び出し、迫りくるスケルトンをビシバシ粉砕しながら進んでいく。もちろんゴースト相手で試す事は忘れていない。
「あら、少し強めに魔力を籠めたら当たったわね」
「いい感じだな、これを確認できたのは大きいぞ」
「うんうん、でも私の魔力は余裕あるから任せてもらっても大丈夫だけど」
「いやいや、ゾンビ相手に活躍してもらうんだから、温存できるところは温存しようぜ。他にも試したい事があるから次にゴーストが出て来たら俺にやらせてくれ」
「試したい事? それって打ち合わせに無い奴って事?」
「まぁそうだな… 何だよその目は! 言わなかったのは悪かったと思うけど…」
美鈴がジト目で見つめてくる… いいじゃないか少しくらい遊んだって! 俺にだって冒険心くらいあるんだよ!
だって手足に魔力を纏わせればゴーストに攻撃が当たったんだよ? 当然次に試すのは武器に魔力を…ってなるだろう。って事になれば、銃火器にだって纏わせられるはず!
このダンジョンの奥に進めば多分ゴーストの上位種だってワラワラ出てくる可能性があるだろう、そう考えたら使える手段は増やしておきたいよな?
「…と、いう訳で、作っておいたRPG-7の対人弾に魔力を籠めて撃ってみようと思う。炸裂するみたいだから無暗に近寄らないようにな」
「それが上手くいくなら、ゴーストの集団が相手でも対処が楽になるわね」
「障壁ビンタで間に合うと思うんだけどなぁ…」
「まぁそう言うなって。手段は多い方が安心だし、魔力の負担が1人だけって事が無くなるだろ?」
「はーい」
カチッ ボシュッ!
RPG-7から放たれた弾頭が、青っぽいゴーストに向かって飛んでいく。うん、思ったよりも弾速が速いんだな。
ドパーン!
「どうだ?」
「ん… 倒せてるね?」
「倒せてるわね」
「ふむふむ、RPG-7でイケるって事は、対戦車ライフルでもデザートイーグルでも可能だって事だな」
「そうかもしれないね。でもああいったゴーストみたいに肉の無い魔物に対しては効果が薄そうな感じもするけど… デザートイーグルは」
「そうかもしれないわね、肉のある魔物だと着弾の勢いで肉が弾けるみたいだけど、ゴーストに対しては攻撃効果の範囲が狭くて微妙な気がするわね」
「ま、それもおいおい試して行けば良いさ。多少でも効果があるんなら射撃訓練のつもりで撃てばいいんだし」
「そうね、普通であればそんな判断はしないと思うけど、おじさんのスキルで弾丸が作れるから出来る事よね」
「うん… ホントおじさんってチートだよね」
「まぁいいだろ、そんな話は。隣の芝が青く見えるってアレと同じだぞ? 俺にしてみれば戦闘職は羨ましいし回復職も無くてはならないものだと思ってるしな」
RPG-7の使用は今回1回だけで終了した。なんせ爆発するもんだから危ないからね… 特に耳が。ダンジョン内で爆発物の使用は控えようと思ったりしたのだった。




