139
誤字報告いつもありがとうございます。
「いやーしかし、すごい匂いだったね。確かに不人気なのも良く分かるわ」
「そうね、私個人としては、こんなダンジョンは即刻討伐して世界から消してしまわなければと使命感が湧いてきてるわ」
「あーそれは同感、サクサクっと潰しちゃおうよこんなダンジョン」
「そうだな、このダンジョンが潰れればギルドの出張所も閉鎖できるだろうし、win-winだと思うぞ」
「他にも、最下層まで攻略されたダンジョンがどのように消えていくのか… それも興味あるわね」
まぁそうだな、攻略されたら消滅するっていうのはあくまでもギルドにあった冊子からの情報だ。自分で見た訳でもないし、映像や記録が残される日本にあった情報とは精度も何もかも違うだろう。
「まぁ知ったからと言って何かが変わるとは思えないけど、確かに興味はあるな」
「そうでしょう? すでに魔法とか魔道具とかで日本人としての常識とかけ離れているのは実感している。今更ダンジョンが消え去ったとしても驚かないわ」
「まぁな… まさか防御魔法の障壁で魔物をビシバシ叩く聖女がいるくらいだからな」
「ちょっと、それって私をディスってる?」
「いやいや、発想の転換っていうのを思い知らされたと感じてるだけだ。実際すごいと思うぞ? ゲーム的な知識だとどうしても、聖女…というか、後方支援職の攻撃力ってのは当てにされないもんだからな」
「そうでしょそうでしょ! 要は使い方なのよ!」
そう、要は使い方なんだ。
敵の攻撃から身を守れるだけの障壁ならば、当然強度もあると考えられる。それを武器にするという発想は… 少なくとも俺には出来ない事だ。全く大したもんだよ…
「ああそうだ、前に言ってたマイホーム内の改造… 試してみたけどダメだったわ」
残念な事に、マイホーム内の施設については改造不可のようで、今まで使っていたシャワー室に浴槽を追加… なんて事は出来なかったのだ。
まぁ確かに、新しい部屋が使えるようになった時も、新たに使える扉が増えただけで、普段使っているマイホーム内に変化は無かったからな。
まぁそれでも、牢屋や倉庫などの増えた部屋にはマイホームから扉をくぐる事で繋がっているから、新しく風呂場が追加されれば女性専用として開放してやればいいかな。
俺自身風呂は癒しになっているから、美鈴と霞にとってもそうかもしれない。
「風呂は癒しだからな…」
「うんうん、気持ち良いよね。湯船に浸かりながらお盆を浮かべてお酒を飲むっていうのもなんか分かるもん」
「あーあれな、アレはある意味危険だから推奨できないぞ。酔いが回るのがめちゃくちゃ早いから、湯船から出た途端転んで大怪我とか… よくあるらしい」
「まぁね、血流が良くなるところにアルコールを流し込んで循環しているからね」
「よし、じゃあ風呂にでも入ってくるかな」
「じゃあおじさんが終わるまでトレーニングしてるから、終わったら声かけて欲しいな」
「ああ、覚えていたらな」
今日気付いたんだが、ダンジョンにいるゾンビ達が放つ腐臭… これはどうやらダンジョンの摂理に反することは無く、ゾンビが倒されるとなぜか匂いも一緒にダンジョンへと吸収されていく事が分かった。
つまり何が言いたいかというと、倒してしまえば服や体に移ったと思われる匂いも消えてなくなっているのだ! うん、これは重要な情報だね。
攻略を終えてマイホームに入る頃には匂いなんてすっかり消えて無くなっている、だから戦闘後もお風呂お風呂と騒がなくても大丈夫って事だ。
「ま、汗はかくから最終的には入るんだけどな」
それでも体に匂いが移らないのは非常に良かったと言えるだろう、マイホーム内が腐臭に塗れるなんて… 考えただけでも恐ろしい。
そんなこんなでコベルコダンジョン攻略、2日目が終了した。
SIDE:勇者君
俺は賢者と共に、神聖教国から来たという男についていき、王都を脱出する事に成功していた。
そのまま夜通し南西に向かって走り続け、岩がごつごつとしている場所にて休憩をする事になった。
「ふぅふぅ… すいませんね、あまり体力には自信が無いもんで。ああそういえば自己紹介がまだでしたね、私は神聖教国本館所属の神官騎士でガイルと言います」
ガイル…ね、さすがにこっちも名乗らないといけないだろう。
「俺はマサキ・カンダだ、2ヶ月半くらい前にこの国に召喚された」
「俺はジュンジ・イガラシ。同じ時に一緒に召喚された」
俺が名乗ると賢者の奴も後に続いてきた。
「マサキにジュンジですね? 今回召喚されたのは貴方達2名だけですか?」
「いや、俺達以外にもいる。俺達を含めて合計10人召喚されてたな」
「10人も…ですか。それでは貴方達以外の方々は一体どこへ?」
「先日のダンジョン攻略で… ああ、こいつが腕を失った事件の時に1人死んでいる。その他の連中はどこに行ったのかは知らないな… 聞いても教えてもらえなかったし」
賢者の奴がガイルに対して受け答えをしている。さすがに賢者というだけあって、こういった状況での会話は任せた方が良いという俺の判断だ。
片腕だけになって体のバランスが非常に悪くなっているけど、治癒魔法の効果なのか、疼くとかそういう後遺症は今のところ全然無いので戦闘力はそれほど落ちていないと思う。片腕でも少なくとも賢者よりは接近戦に秀でているだろう。だからこうして一歩引いた場所から状況を見ている事にした。
「ふむ… 10人、その中で1人の死亡が確認されているようなので… 貴方達以外、7人の召喚された異世界人がこの世界に居るという事ですね? 他の方たちの職業とか分かりますか?」
「職業…か、召喚された場で最初に鑑定を受けていたんだけど、正直全然覚えてないな。ああ、そういえば聖女という職業の人がいたな… どこに行ったかは知らないが」
「聖女… ですか、それは興味深いですね。その方の容姿とか覚えていますか?」
「容姿… ねぇ、いや、すまないが覚えていないな」
なんだ? 聖女と聞いてからガイルの態度が変わったような気がする。やはり宗教国家だから聖女というのは気になる存在なのか…




