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誤字報告いつもありがとうございます。
「同郷ではあるけれど、仲が良かった訳じゃないし方向性も違うから別れたのよ」
「おおっ、そういやミスズ… お前聖女っていうのは本当なのか? もし本当ならこれも王城に報告しなきゃいけない事案なんだが」
「なにそれ、レイコが言ってたの? うわっマジ引くわ、私を売り飛ばそうなんて!」
「その言い方だと本当なのか?」
「いいえ違います。おじさん! お腹空いてるし早く夕食にしようよ! ささっ早く!」
美鈴に腕を掴まれて引っ張られ、霞には背中から押されてギルドマスターの執務室から逃げ出すように飛び出してきた。
ギルドマスターは書き物の最中だったからか、とっさに言葉も出ないようだったので、チャンスとばかりにギルドから出ていった。
「レイコまじで最低じゃない? 個人情報をあっさりと口にするなんて」
「ええ、さすがに私も引いたわ。おじさん、すでにあの2人とは袂を分かっているんだから情に絆されないでほしいわ」
「ん? さっきも言ったがあいつらは自立して出ていったんだと認識してるからそれは無いぞ。これもさっき言ったが、身内や仲間なら出戻りは歓迎するけどってな」
「ん、それ聞いて安心した。おじさんそういうところ甘そうだからね、まぁ優しいと言えるんだろうけど」
「こんな言い方はひどいと思われるかもしれないけど、あの2人はその優しさにつけ込むくらいは簡単にすると思うわ。今回の聖女の話もそうだし、あの子をこのパーティに戻したら、それが原因で壊れてしまいそうよね」
「まぁそう言うなって。俺達と別れてから精神的にも成長してるかもしれないぞ? レイコ1人だっていうのは確かに気になるところだけど、まぁカオリだしな…」
「あー、それはね。もしもカオリと折り合いが付かなくて別れたって言うなら、確かに成長しているかもしれないね」
「まぁ…そうね。初めて話をした時はどこの宇宙人かと思うほどキテたのは覚えてるわ」
「とりあえずアレだな、ギルドマスターの情報通りなら明日には戻ってくるって事だから、明日の朝一で王都を出た方が良いかもしれないな」
「それには賛成だけど… 行き先はどうするの?」
「そうね、西にはいかない方が良いと思うわ。帝国軍もそうだし、ギルマスの話を聞く限りだと間違いなく辺境伯軍が追って来てると思うわ。何事も無くすれ違えると思わない方がいいわね」
「うーん… 南のプラム王国は帝国に抑えられていることが濃厚だし、南東の神聖教国だっけ? ああいった宗教色の強い国もぶっちゃけ危ないだろうな」
「そうよね… ここに聖女がいるって知られたら、ストーカーになる事間違いないわね」
「だよな、ハンマー振り回してごまかせないもんかね」
「え? 言わなきゃ分かんないんじゃない?」
やれやれといった感じのリアクションで歩き続ける美鈴。だけどな、何か忘れてないか?
「鑑定ってスキルがあっただろ、ビリーカーンのギルドのサブマスターのような。あれって対象は物だけじゃないと思うんだよな」
「ああ… そう言えばそんな事あったね。全然そのスキルについて耳にしないし、きっとレアなスキルなんだろうね」
「宗教色の強い国家だと、そう言った所に力を注ぐと思わないか? あくまでも俺の勘だが」
「いえ、あり得るわね。ただ、無作為に誰も彼も鑑定する訳ではないと思うけど、国境とかそういった場所に配備されている可能性は否定できないわ」
「でも、それを言ったらどこの国もそうじゃない? まぁグリムズ王国ではそんな事は無かったけど」
「聖女というのはファンタジー小説とかでは神聖視されるものよ? さしずめ私達は聖女を守る護衛のようなものなのかしら」
「あははは、まぁストーリーがあるなら鉄板かもしれないな。まぁともかく、帝国の動きや先日の防衛戦… それらの情報が他の国に伝わるのは明白だから、国境というのはかなり警戒される可能性があるって事だよな」
「まぁそうだね… それじゃ意表をついて辺境伯領に行く? すれ違わないルートで行くとか」
「それだと車は使えないって事よね。時間がかかると思うけど?」
「もしも辺境伯領の偉い人に知性的な参謀が付いているとすれば、間違いなく挟撃するために動いてるんじゃないかな。そして大軍を相手にするなら疲れ切った時を狙う… つまり王都にいる兵とぶつかり合っている時」
「つまり、帝国軍の動きを見ながら追いかけて来るから冒険者には目が向かないかもって事か?」
「いやいや、目標が決まっているからそれを注視しすぎて他の所まで目が届かないって事。大軍が動いているのを見ながら追っていくと思うんだよね」
「ふむ… つまり帝国軍をやり過ごしたらすぐ後ろにコソコソと追いかける辺境伯軍がいる…と。そしてそれをやり過ごせば後は大丈夫って事か?」
「うんうん、王都の周辺は安全の都合だと思うけど、色々と開拓されていて見通しが良いけど、ちょっと離れたらすぐ森が広がっていたでしょ? だからやり過ごせると思うんだよね。こっちには必殺のマイホームがある訳だし、隠れる事にかけては間違いないと思うんだよ」
「まぁなぁ… ぶっちゃけ卑怯スキルだもんな。そんじゃそれで行くとするか? 今日の所は南門の近くでマイホームに入るとして、朝一で出ていくっと。万が一遭遇戦になってしまう事も考慮して、何かしらの対策も考えなきゃいけないな」
「対策って?」
「いや、ちょっと前に作ったRPG-7って対戦車ロケットがあるだろ? アレの弾頭に照明弾やスモーク弾って種類があったんだよ。スモーク弾ってのは発煙筒が内蔵されているみたいで、要は煙幕攻撃が出来るって事だな。これらの弾頭の制作をやっておく事にするよ」
「煙幕攻撃… なんかいいね! 他にはどんなのがあるの?」
「ん? 確か対戦車榴弾とか非致死性化学弾… これは正直言ってパスだけどな。後は焼夷弾に対人弾頭ってのもあった。 榴弾は砦とか建物破壊するのに便利みたいで、焼夷弾は… 使ってみなきゃ分からん。対人弾頭もそうだな」
「なんかもう名前がすごいよね。改めて戦争用の武器だって思うよ… それに化学弾っていうのは私もパスに1票! さすがに毒ガス兵器とか怖すぎる」
「焼夷弾というのは発火性の薬剤を使って燃やす事を目的としたものよ。荷馬車を焼くには都合が良いかもしれないけど、山火事には注意が必要ね」
「そうなのか、まぁ名前である程度予想はついていたけど、最悪アレだな、地面に着弾させて威嚇行為に使えるかもしれないな」
そんな事を話しつつ、南門の方へと進んでいった。




