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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:レイコ
「おい、そこのお前… ちょっと執務室まで来てくれ、聞きたい事がある」
「はあ?」
なにこの筋肉ダルマ… しかもなんか偉そうだし。というか、その無駄にでかい体が邪魔でおじさんたちを見つけられないでしょ? どけてほしいんだけど。
「お前は雪月花の連中を知っているだろ? あいつらは今どこにいるか知らないか? というか、ここじゃなんだから場所を変えさせてくれ」
「はぁ…」
一体何だろう、でも雪月花って言ったよね… それって間違いなく日本語だし、もしかしたらおじさん達のパーティ名なのかな? ギルド内で場所を変えるって事はギルド関係者で間違いないだろうし、何かあっても逃げられそうだし話だけでも聞いてみようか。でもその前に…
「ところでアンタはどこの誰?」
「ん? ああ、俺はここのギルドマスターだ」
「なるほど、それじゃあ良いよ、場所を変えても」
「そうか、こっちだ」
この筋肉はギルマスだった… さすがにギルマスっていうなら怪しい事はしてこないでしょう。しかしすごい腕だね… 私の太ももくらいあるよね、針で刺したら破裂しそうなくらいパツパツだわ。
ともかく、先導するギルマスについてギルド内部へと入っていき、ギルマスの仕事部屋だと思われる場所までやって来た。
「その黒髪… お前はタイキ達の仲間だろ? あいつらはどこに行った?」
「タイキ? おじさんの事? 私もおじさんを探してここまで来たんだよね」
「なんだ、あいつらと一緒じゃないのか。先日この町に帝国軍が襲ってきてたのは聞いているか?」
「ええ、ちょうど鉢合わせて、町に入れてもらえないと思ったから隣町まで避難してたんだけど、戦いが終わったって聞いたからやって来たんだよね」
「まぁ戦後処理というか、タイキ達に仕事を依頼したくて来るのを待っているんだが、全然来なくてな。昨日までは間違いなくいたのに」
「昨日まではいたんだ…」
よしよし! これはもしかして追いついた? ああ早くおじさんのマイホームでカレーが食べたい! 熱いお湯のシャワーを浴びたい! シャワーの後はやっぱりアイスだよね!
「おい聞いてるのか?」
「き、聞いてるわ。でも私もおじさん達と合流するために来たばかりだから、詳しい事は分からないよ」
危ない危ない、こんな所で妄想に耽って周りが見えなくなってたわ。
「ところで… お前は何ができるんだ? カスミはゴリゴリの戦闘系だったし、ミスズは良く分からんかったが…」
「私は魔法使いよ、ちなみに美鈴は聖女だよ」
「ああ? 聖女だぁ? その割には近接戦闘しようとしてたんだが…」
「いや、間違いないよ。魔法の訓練は美鈴から学んだし、魔力の扱いなら私より上だと思うし」
「そう…なのか? とても信じられないが、しかし聖女か… もし本当なら国宝級じゃないか」
「あ… もしかして隠したかったのかもしれないわね。今聞いた事は黙っててよね」
「……」
やばいやばい、普通に考えて聖女っていったら勇者のお供で回復支援の最上級職よね… あくまでゲームの知識だと、それを周囲に知られたら、そりゃ騒ぎになるから隠すよね。
「とりあえず用件はそれだけ? 私もおじさんが来るまで待つつもりだから、そろそろ行かせてもらうわ」
「おっとその前に、ギルドカードを見せてくれ」
「ギルドカード? 別にいいけど…犯罪歴とか無いけど?」
ギルマスにカードを渡し、なにやら装置を使って見ているようだ。
「ふむ、名前はレイコか。しかもマインズダンジョンで40階層まで行っているのか… 腕は確かのようだな。さすがはアイツラの仲間と言った所か。
よし、もしかしたら仕事を頼むかもしれない、ロビーで待機しててくれ」
「はぁ? 何度も言ってるけど、私はおじさんを探しに来てるんだよ? 仕事を受けるんなら合流してからだよ」
「まぁそう言わんでくれ、それじゃあ頼むな」
「ちょっと!」
もうなんなの? めっちゃ強引なんだけど…
でも、とりあえず出来る事は待つ事だけかな。昨日まではいたって言ってたし、多分ここにいれば会えるよね? 霞と美鈴は嫌な顔をするかもしれないけど、なんとか言いくるめるしかないね。
あっ、カオリの事なんて言おう… まぁいいか、正直にカオリの男性関係が嫌だったって言えば通じるでしょ。
SIDE:来栖大樹
「おおおおお、ちゃん…と、捕まってろ…よ!」
「飛ばしすぎだよおじさ… 痛っ、舌噛んだ!」
辺境へと行き来するための道、一応街道だとは言え満足な整備がされていない道を… なんと80キロも出して走っている。
いくらエス○ードがRV車だからと言っても、これだけ道が悪ければバインバイン跳ねまくる。よって、喋れば舌を噛むのだ。
後方には目潰し攻撃とばかりの土煙が舞い上がり、却って目立っているような気もするが、あえて気にしないようにする。
4~50キロで走って来て日暮れで止まったくらいの距離だ。この速度なら夕暮れまでには王都に着くかもしれないからな、サクっとギルドマスターに報告して防衛準備を整えてもらわにゃダンジョン探索どころじゃない。
無駄な干渉に見えるかもしれないが、帝国とグリムズ王国が戦争し、南側に隣接するというプラム王国も怪しいとなれば、俺達の今後のために干渉しといた方が良いだろう。
もしもグリムズ王国の王都をスルーしてアニスト王国に向かうって言うんなら歓迎するけどな! むしろ協力してやるぜ。
でも、魔道具を使ってまで王都を落とそうとしてたし、仮にスルーするといっても、一度は戦火を交えたんだ、後方の憂いは残しておくわけ無いんだよな… 普通の考えならば。
いやでも、攻めてきた時の指揮官は普通の考えじゃなかったよな?
まぁ良い、わざわざ相手のアホさを期待して策を練る訳にはいかないから、最悪を考えて動くしかない。
「全くどいつもこいつも、争いばかりやりたがるよな!」
「えー? なんか言った?」
砂利道とタイヤの摩擦音がうるさくて、どうにも声が届いてないらしいが… 独り言だ、気にするな!
まるでラリーをやっているかのように、砂埃を巻き上げながら街道を爆走していくのだった。




