ある日のトレーニングルーム内
閑話的なアレです。ストーリーには関係ありませんが、おじさんの見えない所でこんな事をやっていた!的な…
「そういえば美鈴」
「ん? なに?」
「王都でのおじさんとのデート… 楽しかった?」
「はあああ? なにそれデートなんてした事無いし何言ってんのかな霞はもう」
「ちょっと狼狽しすぎじゃない? 落ち着きなさいよ」
「いやいやいや、デートなんてした事無いし!」
「あの時の事よ? 私が伯爵に取り次ぎに行って、あなた達がギルドに報告した時。確か3個目の魔道具を持ち帰った時ね」
「3個目の魔道具を持ち帰った時? いや、デートなんてしてないし」
「まだ言うの? 確かあの時は…『まさか、自分の父親と同じくらいの年のおじさんと、こうして異世界の町を2人きりで歩く事になるなんて… 世の中何が起こるかわからないね!』だったわね」
「ちょっとなんでそれを知っているの? おじさんから聞いたの? ねぇ?」
「え? 普通にインカムから聞こえてきてたわよ。はっきりと言わせてもらえば… 聞いてる方が恥ずかしかったわ! 伯爵邸に1人でいるのに、なんか顔がすごく熱くなってたから、きっと真っ赤になっていたと思う」
「インカムって… マジで?」
「ええ、楽しそうに街を歩いているなって伝わって来てたわ」
「うう… いやでも、デートじゃないからね? なんていうかおじさんってさ、父親として結構理想だったりするんだよね。うちの親はクズだったから… こんなお父さんが欲しかったなっていう理想がおじさんみたいなタイプだったの」
「なるほど… でも親をクズって言うのは感心しないわよ? 思ったとしても口に出したらダメなんじゃないかしら」
「いやもう間違いなく、誰が見てもクズオブクズだったから問題ないよ」
「そこまで言うなんて… どんな人だったの?」
「聞く? 聞いちゃう? ならば教えて進ぜよう。うちの両親は長男教だったんだよね、長男が一番でそれ以外の兄妹は長男のために動く召使のような物っていう感じ」
「長男教? それこそこの世界のような時代背景で、貴族なんかが良くやっているような?」
「そんな感じ。両親とも実家が田舎の農家でさ、祖父母もそんな感じだったのよ。小さい頃に祖父母の家に行った時も、お兄ちゃんだけものすごく可愛がって、私は玄関に立たされるとかよくある事だったね」
トレーニングの手を止め、何やら遠くを見つめるように黄昏れだす美鈴。
「祖父母からそんな扱いされても、両親は何も言わないし、私を置いて兄だけ連れて外食しに行ったりとか… おかげで小学1年の時には祖父母の家に行くときはついていかなくなってたよ」
「それはひどいわね… 長男教とか絶滅危惧種だと思ってたけれど、まだまだいるものなのね」
「まぁ祖父母があんな感じだからなのか、お父さんが次男で似たような扱いを受けてきたからか分からないけど、私は喜んで留守番してた記憶があるね。そんな頃から、『こんなお父さんだったらいいのにな』って妄想するようになったんだよね」
「なるほど… 私の親もクズだと思ってたけれど、いる所にはいるものなのね」
「ちょっと! さっき口に出したらどうのって言ってたくせに、自分は言っちゃうってどうなの?」
「なんかどうでもよくなったわ…」
「どうでもって… というか、霞の親もクズなの?」
「クズだと思ってたわ、でも今の話を聞いたらまだ我慢できる範囲だったかなって思ったわ」
「へぇ… ちなみにどんなクズだったの?」
「うちの両親は… どっちも愛人がいたのよ。もう夫婦間の冷め具合と言ったら氷点下だったわよ」
「うはぁ、なんかサスペンスドラマが作れそうだね」
霞は汗をタオルで拭きながら大きく息を吐く。
「いえ、さすがに殺人事件は起きなかったからサスペンスではなかったわね。でも… 2人とも全然家に帰ってこなかったし、ほとんど1人暮らしをしてたような物よ。食費がちゃんと出てたのは救いだったけれどね」
「そうなんだ、霞も色々と抱えてたんだねぇ」
「そう思ってたわ。でも美鈴の話を聞いたら、案外キツくなかったのかな…」
「そっか。そんなんだったから帰れないかもってなった時に悲観しなかったの?」
「そうかもしれないわね。もちろん日本の方が住み慣れているから戻りたいっていうのはあったけど、帰れないなら帰れないでも良いかなって… もちろんこれはおじさんのマイホームがあってこその考えだけど」
「ホントマイホームってすごいよね… ぶっちゃけ一番のチートなんじゃない?」
「そうだと思うわ。最初の決断を間違えなくて本当に良かったと思っているわ」
「いやぁでも、あの金髪ヤンキーとおじさんとの2択だったら、間違えようが無くない?」
「まぁね、最初に食料に飛びついてハーレムとか言い出した時、コイツは救えない人なのねって素直に思ったわ」
「ま、今どうしてるかは分かんないけどね、あの2人は。でもぶっちゃけて言うけど、あの2人、もう生きていないと思うんだよね… 勘だけど」
「普通に考えて無理よね。食料だって残り少なかったはずだし、あの性格ならばどこに行っても馴染めないと思うし」
「まぁいいんじゃない? 自分で選んだ道なんだから。日本人同士で協力しようっていうなら断らなかったけど、アレは無いよね」
「そうね…」
すっかりトレーニングを続ける気が失せてしまった2人、タオルで汗を拭いながらもお喋りに花を咲かせるのであった。
「…で、霞としてはどうなの? おじさんの存在って」
「ええ? うーん、そう言われると困るわねぇ… でも敢えて言うなら美鈴と同じ感じかしら。頼れる大人であり、信頼できる身内であり… 確かに父親がこうだったらいいなとは思うわね」
「うんうん、後20歳若かったら良かったのにねぇ」
「そうね… まぁ今の姿も十分若々しく見えるけど」
「ホントそうだよね! 最初は普通に中年です!って感じだったのに、すっかり引き締まってさー、ちょっと誘惑でもしてみよっかな」
「無理だと思うわよ? ただでさえ女性として見られていないのに、さらに美鈴は小柄でしょう? 私から見ても妹みたいだって思うもの」
「え? 妹に見られてたの? 同じ歳だよね?」
「ふふふ」
「ちょっと! 笑ってごまかさないでよ!」
トレーニングルームを出て、汗を流しにシャワー室へと移動する2人だった。
誤字報告いつもありがとうございます。




