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誤字報告いつもありがとうございます。
布を巻き付けて偽装したペットボトルを取り出して、入れてあった麦茶で喉を潤す。この世界では革で作られた袋を使って水分を持ち歩いているから、ペットボトルなんて見せたら目立って仕方ないだろうな… なんと言っても中身が見えちゃっているからな、さすがにこれは無いと思って手ぬぐいを巻いている。
「それにしても、昨日の今日だからか飲んだくれている人が多いね」
「ああ… どこの世界でも酔っ払いには関わらないのが正解だ。近づくなよ?」
「もちろんわかってるよ。酔っ払いの相手なんて疲れるだけだからね」
昨日の祝勝ムードがいまだに続いているんだろう、まぁ悪い事ではないけど、酔っ払いの理不尽さは素面では付き合ってられないから放置に限る。
10分ほどすると霞がこっちへやって来た。
「待たせてしまったみたいね、それなりに情報は手に入れてきたけどそっちは?」
「ああ、ダンジョンについて書いてあった本を見つけたよ。ま、詳しい話は外に出てからだな」
「わかったわ」
酔っ払いどもが盛り上がっている飲食コーナーを尻目にギルドから出て、そのまま門をくぐって王都からも出てきた。
「それじゃ一度マイホームに入るか、その方が落ち着いて話が出来るだろ」
「「賛成!」」
一応美鈴には話してあるので、西の方角に向かって王都から距離を取り、マイホームへと入っていった。
「ふー、まずはお茶の用意でもしようかね。甘い物食べる人挙手!」
美鈴の提案に無言でビシっと手をあげる霞、俺もたまには甘い物でも食べてみるかね… そっと手を挙げてみた。
マイホームにある食糧庫の謎仕様… 既製品は無いけれど食材は俺の魔力を使用して常時補充されている。そんな食材の中には高級果物であるマスクメロンとかも入っているのだ。
そしてなぜか、アイスだけは既製品としてあったりする…
美鈴は持っている知識を総動員して小豆を砂糖で煮詰めて餡子を作り出していた。何度もリトライを繰り返して好みの甘さの餡子を作り出し、和菓子の作製に成功していたのだ。
「それじゃあ今日は… おはぎという事で!」
「おはぎか… そういえば随分と食べていないな」
「餡子餅もあるけど?」
時刻はまだ10時になっていないが、まぁ一服時間の前倒しってことでいいだろうが… 朝食を食べているのに10時のおやつにおはぎを選択するとは… これが若さか。
「とりあえず報告するわね。西にあるアベマス辺境伯領という所にダンジョンがあるという話よ。そのダンジョンはアンデッド系が多いみたいで、難易度は高いけど実入りは少なくて不人気ダンジョンみたいね。他にはプラム王国に1ヵ所、帝国に5ヵ所が確認されているそうよ」
「そうか、コベルコダンジョンは実入りが少ないのか」
「そっちはどうだったの?」
「ああ、資料室にあったダンジョンに関する本を1冊コピーしてきたよ。グリムズ王国の国内だけだけどな。それを見てコベルコダンジョンが良いのかなって思っていたんだが」
「まぁ私達にとって、実入りはあまり関係が無いからいいんじゃない? 難易度が高いってのも気になるし… なによりも出てくる魔物がアンデッド系って聖女の出番じゃない?」
「そうね… でも私個人としては、ゾンビとか殴りたくは無いのだけれど」
「まぁアンデッドって一口で言っても種類は多々あるだろ? 定番のスケルトンとかは骨だろうし打撃が有利になるんじゃないか?」
「でも… 幽霊とかもアンデッドの部類に入るじゃない? そんな魔物に打撃は効かないってのも定番だと思うのだけど」
「うーん… そう考えると意外に悩ましい問題だな」
「確かにゴースト系には打撃は通じないだろうし、深く入っていけばゾンビの質が上がっていくって感じになるだろうしね… やっぱり私の天下じゃない?」
「ゾンビの質…か、確かにそうなるかもな。最初は人間のゾンビで、次第に犬とか動物になっていって、最終的にはドラゴンゾンビって感じになるのかもな」
「それじゃ私の出番は無いじゃない? 訓練にならないわ」
「ゲームの世界ではスカルドラゴンってのもあるよ! 骨だけのドラゴン。そういうのを殴り倒せばいいんじゃない?」
「美鈴… アンデッドって聞いてからやけに元気がいいわね」
「いやーだって、なんだかんだ私が活躍できる場って無かったじゃない?」
「そんな事無いわよ、オーガだってイエティだって蹴っ飛ばしてたじゃない」
「まぁまぁそう言わないで、とりあえず王都にいたって実戦訓練は出来ないんだし、行ってみようよ」
「まぁそこまで言うのなら…」
ふむ、どうやら霞が折れたようだな… ぶっちゃけ俺もゾンビが相手だなんて嫌なんだが、コピーするのに気がいっちゃって中身は全然見てなかったからな、最初に見ておけばよかった。
「それじゃコベルコダンジョンに行ってみるか。中に入ってみて俺と霞の訓練にならないようだったら諦めるって事で」
「「賛成!」」
おはぎを完食し、とりあえず西に向かって移動する事になり、マイホームから出てエ○クードで走り出した。
SIDE:レイコ
「おい聞いたか? 昨日王都に何者かが攻め込んだらしいぞ?」
「マジかよ… どこの奴よ」
「敵兵が着ていた鎧は真っ黒だったって話だ。噂の帝国の精鋭だって話だぜ?」
「おいおい、帝国が攻めてきたってんなら王都の隣町であるここもやばいんじゃないか?」
「それがな… 王都騎士団と冒険者連合で追い返したらしいぜ。自軍の被害者はゼロで、帝国兵は500人ほど倒したらしい。ついさっき来てた商人が話をしてたぜ」
ギルド内がそんな話で盛り上がりを始めた。
なんだ、あの黒い鎧の軍団… 負けたんだね。そんな事なら近場で待っていればよかったな、まぁでも仕方ないか。
噂話とはいえ、争いはもう終わっていて商人が動けるくらいには治安は復帰したという事ね。それじゃ私も王都に向かおう… 王都のギルドでおじさん方の足取りがつかめればいいけど、なんなら王都にいてもいいんだよ?
この町から王都までは、走れば半日少しで着く。本当ならこの町で食料を買っていった方が良いんだろうけど、王都までなら平気だよね?
いや… 今から出て走ったとしても、王都についたら夕方以降になる。門が閉まっていればその場で野営って事になるだろうから、多少は買っていった方が良いかもしれないね。ストックは随分と減っているし、せめて干し肉と野菜だけでも買っていこう。
ギルドで待機していたレイコは、そのまま市場の方へと歩いていった。
最新の妄想です┏oペコッ
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