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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:賢者
「この辺にいないっていうのはどういう事だ?」
「一番最初、召喚された日に国王と一緒に移動したのは俺達3人だけだったろ? もしかしたら他の加護は不要って事で追い出されてる可能性があるな」
「マジかよ… 聖女もそうだし、侍とか使えそうな奴だっていたじゃん」
「あくまでも予想の話だよ、それに… 俺達の価値観とこの城にいる連中の価値観は全然違うだろ?」
「まぁそうだけど…」
「これはあくまでも仮定の話だが… 俺達3人が別の部屋に移動させられて、その後でそれぞれ王女があてがわれた。もしかしたら俺達のような誰でも知っているような強力な加護を持った者だけを狙った召喚だったって可能性を俺は感じているんだ」
「つまり、必要なのは強力な加護ってだけで、他の連中のような普通っぽい加護には興味はなかったって事か」
「ああ、それにこの国には王子がいないみたいだから、聖女も他の連中と一緒にされたって事かもしれないな」
「よく考えてみたら、この城で生活していて他の連中を見た事は一度も無いな」
俺の推理に勇者も思い当たる節があったようだ。これは調べてみないといけないな… 色々と良い事を言われ続けてきてたけど、即座に王女をあてがわれてベッドを共にした… もしかしたら血筋が目的だったという事もあり得る。いや、もうそれしか考えられないな。
「しかし、お前は片手でも剣を振るえるのか? 勇者のスキルに何か影響があるとか?」
「いや、まだそういう事は試して無いな。俺も気を失っていて、起きたのは今日なんだ」
「そうか、まぁバランスは悪くなるとは思うが剣を振れないって事は多分ないと思うが… とりあえず今後は共同作戦を取らないか? 今更だけどこの国が信用できなくなってきた」
「おう! それは俺も願ったりだぜ。その話をしたくてここまで来たんだ」
「俺も重傷だったらしいが、今自分でも回復魔法を使って治療しているから、多分明日には動けるようになると思う」
「そうか! さすが賢者だな! それで? 今後の方針はどうする?」
「うーむ、情報収集したい所だが… 王命が出ている気がするから王城勤務の連中から話を聞く事は出来なさそうだよな。いっそこの国から出ていくか?」
「それは良い考えだな、せっかくの異世界だっていうのに、城の中で閉じ込められていれば鬱憤も溜まるってもんだ。せっかくダンジョンに行けたのにあっという間に終わってしまったからストレスがハンパないんだよな」
「いや、そこは怪我をしたんだからしょうがないだろ。でも大体俺も同感だ、もうこの国の事は見限っているよ」
「んじゃとりあえず、2~3日は体調管理をするって事か? 俺も腕は痛むけど動けないって訳じゃないが… お前は無理だろ?」
「そうだな、早ければ明日中に、遅くても明後日には動けるまで回復させておくよ」
「よし、それじゃあこの国の連中に悟られないようにしつつ、明後日にまた来るわ」
「ああ、俺は俺で動けないフリでもして油断をさせておくよ」
「おう、俺は持ち出せそうな剣でも探しておくわ。それじゃあまたな」
「ああ」
勇者が部屋を出ていき、また静寂が戻ってきた。魔法を使いすぎて疲れた体を癒すため、一眠りする事にした。
SIDE:来栖大樹
「おはようおじさん!」
「おはよう、元気だな」
「よく言うでしょ、元気があれば何でもできるって」
「ダー! だろ?」
「そうそう!」
美鈴… 今日は朝から全開だな。やっぱり昨日見た殺し合いの事で眠れなかったのかな? 空元気を見せているような感じがするが… もしかしたらケアが必要になるかもしれないな。もちろんそんな知識は持ち合わせていないけど、話を聞くだけでも軽くなるかもしれないから心しておこう。
洗顔を終えた美鈴は厨房に入り、朝食のサンドイッチと昼食のおにぎりを作り始める。サンドイッチの具はハムとレタスに薄っすらとマヨネーズを付けたもの、おにぎりの具は塩鮭とおかかだな… どっちも好みだから問題は無い。
なんなら数日分まとめて作って道具箱に入れておいても良いんだけど、何となく気持ちの問題で毎朝作るようにしている。いくら箱の中が時間停止していようが、数日前に作ったおにぎりとか気分的にね…
2杯目のコーヒーを飲み終えた頃、霞が起きてきた。
「おはよう… なんだか昨日は眠れなかったわ、やっぱり人の死に様を見た事で何か引っかかっている物なのかしら」
「そうかもしれないな、本人が気づいていないだけで。美鈴もそういうのがあったらちゃんと言えよ? 言うだけでも何かが変わるかもしれないからな」
「うん、そうさせてもらうよ。正直私も気分が優れないんだよね… やっぱり昨日のことが原因だったか」
「まぁアレだ、少なくとも昨日の帝国騎士を見た限りじゃオーガよりも弱そうだっただろ。俺達は俺達で殺さずに効率良く無力化できる方法を探っていけばいいんだ」
「そうだね… 金的蹴りとか効率良さそうだね」
「いやいや、鎧着てたらそうもいかんだろ。それにサラっと怖いこと言うな」
「それなら鎧の上からちょっと強めにローキックを入れたら良いんじゃないかしら。それなら強打しても足だけで済むし、倒れてから腕を折っておけばもう戦えないでしょう?」
「そうかもしれないが… なんにせよ対人戦闘があるとすれば、タイマンの状況の方がレアなくらいだろうから… 一度鎧を蹴っておく必要があるかもな」
「そうだね、どの程度力を入れれば鎧越しでも足を潰せるか… 試しておかないとまずいよね、特に霞が」
「そこでどうして私の名前が出てくるの?」
「え? なんか蹴りで相手の足が爆散しそうだなーと思って」
「さすがに無いわよそんな事。それよりも美鈴の結界で相手を閉じ込めたりできるんじゃない?」
「あーそれは出来るかもしれないね。今日ちょっと練習してみるかな、一度起動した結界の大きさを変えられるかどうか」
「なるほど、一度大きな結界で相手集団を閉じ込めて、それからサイズを小さくしてまとめてしまうって事か」
「そうそう、そんな事が出来るんだったら戦闘そのものを回避できるでしょう? それで結界ごと牢屋に入れてしまえば完成っと」
「それは良い考えかもしれないわね、結界ごと牢屋に入れられるかは試してみないと分からないけど、面白い案だわ」
ふむふむ、今日の二人はいつものような好戦的な感じでは無いな。でも結界で閉じ込める作戦は有りかもしれないな… 今後アニスト王国に何らかの形で報復する事になれば、王命で仕方なく動いている者達を無力化するのに役立つかもしれない。




