100
誤字報告いつもありがとうございます。
「よし、それじゃあ王都に向かうとしますか。ギルドに報告した後は各自行動という事で、一応インカムを持ってバラけよう」
「「了解!」」
今朝はゆっくりと朝食を取り、8時にマイホームから出て王都へと足を向けた。
1時間かけて王都まで移動、真っ先にギルドまで足を運んだ。
そして単独で行動しても武力的に大丈夫だと思われる霞を、ハワード伯爵の王都邸へ面会のアポを取るために先行させた。
「なんだと…? まだ魔道具が出てきたのか。これはプラム王国の王家が絡んでいるのは確定だな… 国宝級の魔道具を3個も使えるなんて、開発したプラム王国にしかできん事だ」
「そうなのか、周辺国家の事は良く分からないから何とも言えないが…」
ギルドマスターの驚愕した顔を見ながら、そんな事を言われても知らんがなと、角が立たないように告げてみる。
「とりあえずこれで依頼は達成でいいよな? ちょいと所用があって出かけたいんだ」
「ああ、十分すぎるほどの成果だ。王家の判断を待ちつつ、ギルドでも対策を練る事にする。何かあればまた依頼させてもらうぜ」
「まぁその時に何も無ければな」
ギルドを出てからインカムを通じて霞に連絡を取ってみる。
「あーあー、霞は聞こえてるか?」
『聞こえているわ、少し雑音がするけれど問題ないわ』
「こっちの話は終わった、そっちはどうだい?」
『執事に声をかけて話を通してもらっている最中よ、返事待ちと言った所ね』
「そうか、それなら俺達もそっちに向かってみる事にするよ。貴族が相手だから、当日に申し込んで当日に面会というのは無理だと思うが、ハワード伯爵なら空気を読んでくれそうな気もするからな」
『そうね、それじゃあおじさんたちが来る前に返事がもらえたら連絡するわ』
「それで頼むよ」
美鈴もインカムで会話を聞いているので、特に説明する事も無く、伯爵家の方向に向かって歩き出した。
「まさか、自分の父親と同じくらいの年のおじさんと、こうして異世界の町を2人きりで歩く事になるなんて… 世の中何が起こるかわからないね!」
「そりゃぁすまんな、こんなおじさんで。俺だって同じことを考えているよ、何が悲しくて2人の女子高生と行動を共にしているんだ… とね」
「あらま、何かご不満でも?」
「ぶっちゃけ最初は不満しかなかったよ。これだけ世代が違うと考え方も違うだろうし、何かあったとしても、若い子には体力面で勝てそうにないと思っていたからな」
「いやいや、今のおじさんは体力も腕力もすごいと思うよ?」
「今なら…だろ? 鍛える前の俺だったら… ちょっと走っただけで息を切らして無様に倒れ込んでいたよ」
「霞もね、最初は真面目ちゃんかと思っていたけど、考え方も柔軟だったし強いし、すっかり頼れる前衛になったよね」
「そういう美鈴だって、聖女の癖に前に出て、蹴りやらパンチやらもうアホかと」
「いや! 褒めてないでしょそれ!」
「あっはっは、若いってすごいなって正直に思ったよ」
伯爵邸まで歩くと大体20分ほどかかったが、到着するまでの間に霞から連絡が来ることは無かった。
という事は、いまだに返事待ちをしてるって事だよな… もしかして伯爵は家にいないのかもしれないな、それならそうで、後からギルドに… とかでも良いと思うんだが、この世界ではそういった事をしないのかもしれんな。
屋敷の入り口で門衛に声をかけ、応接室へと通してもらった。
「あらおじさん、意外と早かったわね」
「そうか? というか、まだ返事はもらえてなかったのね」
「ええ、お城に行っているみたいで、返事はギルド宛でもって言ったのだけど… 前回それでスルーしたでしょう? だから待っているようにって言われたわ」
「ああ、あれか…」
心当たりはあるね… こっちに用事が無いからと言ってガン無視したんだよな。そういった前科について言われれば、こっちも対応は考えざる得ないよな。
「しかし、王城に話をつけに行ったんなら… かなり待たされそうだな。貴族の屋敷だとリラックスも出来ないし、辛い待ち時間になりそうだ」
「ま、あまりにも来ないようなら、その時にどうするか決めよう。鍛冶屋との約束は明日なんだし、そこは譲れないよね」
そろそろ昼になる、ここで貴族飯を出してもらえるのかな? 出ないというなら、さっさと解放してほしい物だけど… どうなる事やら。
そんなこんなで、昼食は伯爵家で出してもらう事になり、その後はダラダラと夕方まで、待たされる事となった。
「お待たせいたしました。主人は軍事会議が長引いているために帰宅する事は叶わず、お言葉だけを預かってまいりました」
「そうか、こっちの情報は伝えたんだろう?」
「はい、魔物寄せの魔道具が西の森に設置されていたと。今日持ち帰った分も含めて3個であると確かに伝えました」
「ダンジョンについてはどう言っていたんだい?」
「ダンジョンが潰されてしまうのは望ましくは無い… との事です」
「承知した、それじゃあビリーカーンダンジョンの攻略は70階層で止めておいた方が良いな。うっかり討伐してしまってから最下層だった… そんな失敗はしたくないし」
「それでお願いいたします」
伯爵家の執事であるグロウとの話もようやく終わり、結局晩まで拘束されてしまった。
「はぁ~、やっと終わったね。こんな時間なら鍛冶屋の方に行って朝まで待った方が良いかもね」
「そうだな… 外に出ても、入るのに行列あるの分かっているんだ… それなら最初から中で待機した方が良い」
「それにしても… 装備の方もようやくね。随分と待たされた気がするわ」
「ミスリルのハンマー… 名前つけてあげなくちゃね!」
「マジすか… 例えば?」
「んー、完成品を見てからじゃないと思い浮かばないなぁ。明日以降のお楽しみだね」
「武器に名前ねぇ… その方が愛着湧いたりするんかね」
「湧くと思うわよ? さすがに手甲に名前を付けたりはしないけど」
「そういうもんかね… んじゃ俺もミスリルの剣に名前でも付けてやるかね」
「お? どんなどんな?」
「アイアンソードとかな!」
「あー、おじさんにそういったセンスは無かったんだっけ… なんかごめんね? 無理言っちゃって」
「いや、そこでマジレスすんなよ」
薄暗くなった中、鍛冶屋のある商業区域に向かって、3人は歩き出した。
再開です、よろしくお願いいたします。




