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誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活68日目
いつものように目が覚め、すでに生活のルーティン化となっている製造メニューの確認中だ。こいつはいつの間にか、本当に知らないうちに増えてたりするからな… チェックは欠かせないのだ。
「おお?RPG-7だと? これって対戦車なんちゃらってやつだよな… 確か着弾と同時に小規模の爆発が起きるやつ。おおおお!」
いいねいいね、目に見えない速さで飛んでいく弾丸も強くて効果的だが、目に見えない分威嚇に使う事は出来なかったんだけど、これがあれば… これで爆発を見せればかなりのアドバンテージになるぞ?
もしもこの国で戦争が起きてしまっても、これで敵方の進路上を爆発してやれば、ビビって進軍が止まるかもしれない。まさに威嚇射撃の効果が爆上げだ!
これは人数分作っておかないといけないな、擲弾も。弾って言うのかこれ? 1発が非常に長いんだが… でもそれなりな量が無いとダメだろうな。
ポチポチと製作を進め、スタートさせた。
「おはようおじさん、ちょっとこれから体調の悪い日が数日続くと思うから、フォローの方よろしくね」
「お? ああそうか、わかったよ」
美鈴が何か具合の悪そうな顔をして洗面所に入っていった。 なるほど、所謂女の子の日ね。
俺に言わずとも霞と連携すればと思うが、まぁ体調が優れないという事は申告してもらわないと心配になるからな。それに、原因が分かっているなら対処もしやすいし… って、アレ? 確か聖女の魔法なのか知らんけど、避妊の魔法があるとか言ってなかったっけ? それを使えば生理も無いんじゃないかな…
確か薬で避妊するやつは生理も止まるから、スポーツ選手とかがコンディション管理のために使っているとか聞いたことあるけど。
まぁいいか、男の俺には分からん何かがあるんだろう。
「あう~、お腹痛いよぉ」
「なんか大変だな。回復魔法でも痛みは止められないのか?」
「はっ!? そういえば私、聖女だったっけ! 最近物理攻撃の事ばかり考えていたから忘れてたよ!」
「マジか… どんだけ殴りたいんだよ。でもそれなら、以前言っていた避妊の魔法を使えば、生理その物を止められるんじゃないのか?」
「……、そうかも。ちょっと試してみる価値はありそうだから、やってみるかな」
「おう、そうしろそうしろ。それで体調が良くなるんだったら儲けものだろ」
美鈴はソファーに座り、お腹に手を当てながら集中しているように見える。こういう時は邪魔しない方が良いよな… 俺はRPG-7の弾を作り続けるだけだ。
「うわ! ピタっと痛みがなくなったよ! これは便利だなぁ… 日本で生きてる時から使いたかったよ。ところでおじさんは何を作っているの?」
「ああ、これはRPG-7と言ってな、新しく作れるようになっていた武器なんだが… 俗に言う対戦車ミサイルってやつだ。中東とかの紛争地域では未だに現役で使われている武器だな」
「ああ、良く見たらニュース映像で見たことあるかも。戦車だけじゃなくて、普通に建物を破壊したり、ヘリコプターとか撃ち落としたりするやつだね?」
「そうだな。着弾と同時に小規模で爆発するから、1発お見舞いすれば相手が魔物だろうが人間だろうが、間違いなく躊躇すると思うぞ?」
「なるほど… 牽制するのにも効果的なんだね?」
「とりあえず人数分を作って、今は弾の在庫を増やしているところだな。終わったら道具箱に入れておこうと思ってな」
「なるほどね… 今やってる依頼の魔道具、それを設置した連中とかち合ったとしてもすぐに使えるね」
「まぁ確かにそういった事も考えてはいたが、対人戦闘は普通に考えて嫌だろ? そりゃ襲われて命に係わるのなら抵抗はするだろうけど、自分から進んで殺しに行くとかは… さすがになぁ」
「まぁそれは確かにあるね。でも、この世界で生きていく上では必要な事かもしれないよ?」
「まぁな、甘い考えでやっていたら… 『雪月花』を襲っても殺されないからガンガン行こうぜ! なんて言われてしまうかもしれないしな」
「まぁでも、進んで殺しに行くっていう考えは無いよね」
「ああ、俺達は殺し屋でもなければ戦争屋でもないからな。そう考えると、霞が武闘家で、色々と教えてもらった経験が役に立ちそうだな」
「それね! 確かにローキックで足をへし折っても相手は死なないからね!」
「私が何かしら?」
おっと、今日の霞は早起きの日みたいだな。
「いやいや、対人戦闘の話だよ。武闘家から指導を受けた経験が役に立ちそうだなって」
「なるほどね、確かに武器で傷をつけるわけではないから、殺さずに制圧するには良いかもしれないわ。… ところでそれ、見たことがある武器ね」
霞もRPG-7に気が付いたようだ。美鈴にしたのと同じ説明をしてやると…
「確かに、突然こんな物を撃ち込まれたら、相手は相当驚くでしょうね。全身鎧の騎士が隊列組んでいても、一撃で粉砕できそうね」
「わーお、発想が過激だった」
「でもでも、戦車とかヘリが無い世界なんだから、使い道は当然そうなるよね? もしくは敵拠点の破壊とか!」
「映画じゃないんだから… と言いたい所だが、使い道としてはそうなるだろうな」
そんな話をしつつ、朝食を終えて外に出てきた。
今日も魔道具探しの簡単?なお仕事だ… 数日体調不良だと思われた美鈴が元気に復活しているので、魔道具の捜索は任せてしまっても問題ないだろう。
昨日と同様、王都に沿った感じで移動を開始する。
今回は、魔道具が複数ある事は報告済みなので、もし見つけたとしても日が暮れるまで探索を続け、王都に報告するのは明日で良いだろう。
願わくば、明日はそのまま王都に滞在し、明後日に鍛冶屋に行って頼んでいた武器を受け取る…と。
頼むよ~? 何事も起きないでくれよ~?
「あっ、やばいな… フラグを立ててしまったかもしれん」
「何々?どういう事?」
「いや、最低でも鍛冶屋で受け取るまで何事も起きないでくれって考えてしまった」
「あちゃー、それは間違いなく立ったね。1級フラグ建築士の称号を与えよう」
「いらんわ!」
なんだよ!フラグ建築士って… しかも1級だと? 最上級じゃねぇかよ!
集中しながら索敵と捜索を続けているが、変な緊張感は無い。その後、夕方まで働いた結果… 魔道具が1個見つかったので牢屋に隠し、残業無しでマイホームへと撤収が完了した。