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ブレンダの手紙


 パパ ママ 彼との結婚を許してくれてありがとう

 彼ったらパパに会うって決まってからとっても緊張して服を裏表逆に着ちゃったりしてね

 少し頼りなく見えるかもしれないけれど彼はとっても紳士的で面白いのよ

 彼と打ち解けたらきっとパパにもお腹が捩れるぐらいのお話をしてくれるわ


 パパは寂しそうな顔をしてたけど私には応援してくれてるって気持ちもしっかり伝わってきたわ


 私はとっても幸せ

 だから今度はパパとママにも同じぐらいの幸せをお返しするつもり


 遠く離れても私は元気に、そして胸いっぱいの幸せを抱えて彼と生活する

 また近いうちに彼と2人で帰るから楽しみにしてて

 たくさんのお土産を用意するわ


 愛してる

 ありがとう パパ ママ








 聞いて!

 彼の絵が高名な美術商に素晴らしいって絶賛されたの!

 やっと彼の絵が評価されてお金の工面ができるようになったのよ!


 別に貧しいからといって不満があったわけじゃないけれど最愛の人が魂を込めて描いた絵が評価され、買い取ってもらえるなんてこんなに嬉しいことはないと思うの!

 私ってばあまりに嬉しくて朝食に焼いていたハムを真っ黒に焦がしてしまったぐらい!


 まだまだ駆け出しだけどこれが彼の名が広まる最初の一歩だと思うとなんだか涙が止まらないわ


 今度家に帰る時、パパとママの絵を描いてもらいましょ

 最愛の人が描いた絵が最愛の家族の家に飾られる

 そんな素晴らしいことってきっとないもの


 また良い報せを手紙に書くわ

 愛してる








 彼ったら最近寝れてないみたい

 みるみるうちにやつれて目には深い隈

 制作が上手くいってないのかしら


 私には大丈夫大丈夫って優しく微笑みかけてくれるけどとっても大丈夫には見えないわ


 私に何かできることってあるのかしら

 辛い思いをしてる彼を放って置くなんてことできないもの


 あまり良い話じゃなくてごめんなさい

 次こそはパパたちが泣き出しちゃうぐらい良い報せを手紙に綴ることにするわ


 愛してる








 彼とケンカした

 結婚して初めてのことよ


 私に思い当たることは一つとしてないの

 ただ私は行き詰まっている彼の助けになろうと彼の作業部屋に夜食を運んだだけ


 そしたら彼、この部屋に近づくなってものすごい剣幕で叫んだの

 意味がわからない……


 意味がわからないけど……きっと私が悪いのよね

 彼が浮気なんてするはずもない

 けれど私にだって見られたくないものの一つや二つあるはずだもの


 本当は少し寂しいけれど私が彼を愛する気持ちは変わらない

 きっと制作活動が上手くいけばまたいつもの彼に戻ると信じてる


 この前良い報せをするって言ったのにまた暗い話になってしまってごめんなさい

 次こそは必ずするわ


 愛してる








 彼が起きてこなくなった

 まるで死んでいるみたいに冷たくて

 いったい何が起こってるの?

 医者に診てもらってもわからないとしか言わない

 おかしい

 時折彼は苦しそうにうわ言を呟くけれど内容は理解不能

 悪夢にうなされている

 そんな感じ


 とっても辛い

 彼が飛び起きて冗談だよって笑いかけてくれるのを毎日のように夢に見る

 出会ったあの日のように優しい笑顔で頭を撫でて抱きしめてくれるのを願ってる


 辛い助けてパパ ママ








 彼が亡くなった


 あのまま起きることもなく彼は私と言葉を交わすことなく旅立ってしまった

 涙が止まらない

 胸がくるしい

 神様はどうしてこんな酷いことをするの


 死因は衰弱死とされたけどそんなのありえない

 医者には適切な処置を毎日のように、パパにもらった大切なネックレスを質に入れてまでしてもらったのにこんなことってない

 医者の処置が間違っていたの?

 付きっきりでいた私にはそうは見えなかった

 おかしいきっと他に何かある

 おかしい








 彼がいなくなって3日が経った

 小さな借家が広く感じるほどに彼がいなくなってしまったのは私にとって辛いこと


 毎晩毎晩、彼の夢を見る

 何も言わず、私に微笑むその姿は昔のまま変わらなかった


 朝起きると枕が濡れている

 悲しい辛いもう耐えられない


 もうこの家にはいられない


 来週には家に帰るわ

 彼との思い出と一緒に









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