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16 爆術

さて、残りわずかとなったらしい鍛錬の続きだ。

「さあ、雪殿、ここからは爆術の実射訓練になります」

そう語るはるは今日一番に険しい表情をもって警告するかの如く、だが淡々と述べる。


「先刻に私や雪殿が作り出した火球は、系統的には近しいものではありますが、爆術とは似て非なるものであります。あれは、正式には『火術』と呼ばれる、より実戦的に改良された術です。ですから、扱いもある程度は容易いものであります。最も、術熟練者なればの話ですが」


「しかしながら、爆術、こちらは火術などという生ぬるいものとはケタが違います。あれを刀だとするならば、こちらは鉄砲隊十個隊以上の戦力になります。先の先頭に手雪殿がご覧になったであろう爆術は、最低限まで力を抑えたものですから、とにかく、爆術を甘く見てはなりません。絶対に!」


「気を抜けば一瞬で塵と消えるでしょう」


その圧は息をも塞ぐ勢いで忠告するのには、きっと先代の無念が相当応えているのだろうと見て取れる。

…それを今から習得するのだというのには、少々覚悟が足りないだろうか。


膝が震えている。


「…申し訳ありません。少々騒ぎました。どうですか、今日はこの処に留め置きますか」

勿論はるがその震えを取りこぼすことはなく、気を遣わせた。


無論も無論であろう。さじ加減一つで塵にもなろうかという大技、恐怖の一つも感じるさ。


だが、先刻はるの華奢な躰から放たれた橙の術が脳裏にこびりついて離れない。


曲りなりにも一族の主として、家臣より力で劣ることが、この弱肉強食の世界で許されようか?


許されまい。


腹の底で渦巻く恐怖はいつしかその術の燃料となり、炎は覚悟となって顕現する。


「やろう」


抑え込む力に打ち勝ったその一言が、唇を破って飛び出した。

それに呼応するように、はるの頬は一層引き締まる。


「流石、そうでなくては雪殿ではありません。照光様!」

「承知」


いつからいたのか、縁側に座す照光。

それが両手を合わせ、唱える。何と言ったか、呪文だかお経だかわからないがぶつぶつやっている。

唱え終わって合わせた手の力を抜く。と、刹那、柏手を打ち鳴らした。



またもや壮大な術。周囲の眺めは頭上へ吸い込まれて一転に凝縮した。次の瞬間には我々三人は見も知らぬ草原に立っている。見渡す限りの淡緑。


「無限遠を持つ空間を生成しました。心置きなく」

たかだかJKの術に対して少々大げさじゃないか?


大げさだよね?フラッシュバックするはるの警句がチクチクと刺す。


「やりますよ、準備はいいですね」

心の準備はとっくに済ませたはずだが、どうもね。


「先ほど蒼焔火を放った時のことを思い出してください。術力を目いっぱい溜めたら、小さな蒼焔を前方に展開します。あとはそれに向かってありったけ術を解放するのみです。小手先の微調整は効きません。実戦では敵陣壊滅をイメージすることです。」


「即ぐに蒼炎と術の術式共鳴ののちに爆縮が起こりますから、直ちに回避行動を取ります。なんでもいいです。甲壁が張れるなら張ってください。それだけの術力が残っていなければ、屈むなりして耐衝撃体位を」


JKの術だ、たかが知れている。



———

—術の力は未知数だ。侮るな—



!?

今誰か喋ったか?

照光を仰ぐが、別段変わった様子無くこちらを見、いぶかしげにしている。


はるじゃない。男の声であった。明瞭に聞こえた。私だけか?



耳を澄ませど、二度はなかった。



幻聴か?



「雪殿!いいですね!」

おっと。そうだな。

「いいよ。やってみる」



大きく、深く、息を吸った。四肢の隅々まで酸素を行き渡らせる。


先の字見急襲の時と同じ、力が漲る感じ。

これが術力充填だろう。


そのまま体幹に注力すると、さらにさらにエネルギーが蓄えられる。


そのうち、四肢の先から、徐々に和青色透明のオーラが発生し始めた。


足元から、術の高まりに呼応して旋風。あっという間に成長し天を穿つ大竜巻へと変貌する。


束ねていた髪はいつの間にか解け、空に向かって靡き翻る。


大体術が溜まってきたのが分かる。躰の芯が熱い。腹の底で燃え盛るものがある。


旋風で巻き上がった塵芥すら彼方へ吹き飛び、晴れた視界には蒼炎の火球。


準備は上々か。




その瞬間、目前で火球がはじけた。

いつもよりも短くしての投稿となることをお許しください…繁忙期であと一週間程度更新が滞る可能性があります(泣)

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