1 JK、芝原雪
どうも、多比岡です。初めまして。この作品が処女作となります。非常に稚拙な部分が見受けられるかと思いますが、どうか、温かい目で見守っていただけると幸いです。なるべく定期更新していきたいと考えております。どうぞ、よろしくお願いします。
ーそれは、至極普通のJKに巻き起こる、改変と収束の歴史ーー
往来は、黒、紺、灰のスーツに身を包んだ人間、大小様々の車で溢れ、それを目もくらむ高さのビルディングが囲む。
繁栄の先端かつ飽和状態の現代都会の真ん中にいて、下校中だった。
誰一人としてそれを虚構だと思うわけはないし、私やあなたは人間で、ここは20世紀の日本で、そんな当たり前の中にいる。
とある高校で現役女子高生をやっている私―柴原 ユキ―は、今日も今日とて代わり映えのない世界に飽き飽きしながら学び舎を後にする。
もうすぐ秋だというのにそれも忘れて我が物顔で熱波を放散する太陽にはうんざりである。照りつける日差しは乱立するビルの窓に反射して人間を容赦なく刺した。
嗚呼、通り過ぎる車が武将を乗せた馬だったならこの気も晴れるというものだ。
ええ、何を隠そう私は生粋の歴史ヲタク、こじれた歴女だ。信長様と結婚したい。
……戯言はいいとして、さて今週末にでも城跡巡りでもしようかと思考を巡らす。どこに行こうか、いやはや楽しみだ。
あれこれと候補が浮かぶ。私の頭は都会の喧騒から切り離され、お城と武将でいっぱい…っと危ない、雑踏のど真ん中で妄想&立ち止まったりすれば、たちまち人ごみに揉まれてボロ雑巾の如く見るも無残な姿になるぞ。いかんいかん。
気を取り直して歩こうと一歩踏み出す。だが、背中あたりに違和感。
振り返る。目を疑ったね、あろうことか学生鞄が大口を開けている。中身足りない。マジ?
財布とケータイが盗まれている。
一体どうやったらここまで自然にカバンが開くのか。いやいやいやいや、犯人に感心している場合ではない、JKの三種の神器のうち二つ (ちなみにもう一つは化粧ポーチ) が無いんだぞ。これはJK的に死を意味する。追わなければ。
まあ、犯人らしき男を見つけるのは大分簡単だったのだが。
挙動が不審な男は雑踏に揉まれて進むに進めないようだ。目の前だし、たぶん走れば追いつく。中学では陸上部だった腕(脚)前、舐めるなよ。
しかしまあ、流石はスリだ、なかなかの逃げ足を持っている。中々追いつかない。タッチの差でかわされる。息が上がって視界が狭い。気付けば道路に飛び出ていた。
ヤバい、戻らなきゃ、足を止める。と、悲鳴。何?
衝撃。躰が宙に浮いた。右半身に鈍い痛みが走る。二度目の衝撃。地面に叩きつけられて、身動きかなわん。ああ無念。