バーグ地区への旅【1】
今回の話は二部構成でいきます。
ミキさんはかっこいいお姉さんです。
私たちは、バーグ地区へと出発した。4日ほどかかるらしく、道のりは長い。魔物に出会う可能性もあるので、注意しなくちゃ。
体が鈍るのを防ぐため、暇潰しがてらジャグリングでもすることにした。色々違う形のものでやった方が練習になる。
しばらくすると、急に馬車が止まった。どうしたんだろう。
「止まりなさい!」
「ここはタヌキ地区の税関ですね。心配ありませんよ」
「通行料銀貨1枚はらえ」
「代わりにこれを」
「・・・これはギルドの・・・すみません!どうぞ!」
「ありがとうございます」
すごい。やっぱりギルドって大きな組織なんだなあ。
「今日はここで泊まりましょう」
着いたのはアクエ地区という場所だった。綺麗な海が見える。
「ここはリゾートで有名なところです。
・・・泊まるホテルはこちらです」
「・・・え?」
「ですから、ここです」
ででで、でかくない?
「ギルドマスターがコネで予約しましたので、お金は結構です」
・・・すごいとしか言えない。
「明日からは野宿になりそうなので、今日はゆっくりして下さい」
私、毎日野宿だと思ってたわ。・・・本当にいいの?
ホテルはとても大きく、そこから見える海はとても綺麗だった。
部屋に入ると、ふかふかのベッドがあってそこに飛び込んだ。
んー、気持ちいいー!
・・・なんか・・・ねむ・・・
「・・・きてください」
・・・ん?
「起きて下さい」
「は!」
「夕食の時間です」
「・・・すみません、寝てました」
「見れば分かりますよ」
夕食はコース料理だった。魚がメインで、とてもおいしい。これはソテーかな。
ミキさんも隣で食べていた。幸せそうな顔をしている。
・・・そうだ。
「あの、魔法について教えて頂けませんか」
「いいですよ。食べ終わったら私の部屋に来てください」
「はい、ありがとうございます」
今は食べることに集中したいのね。
最後に出てきたデザートはタピタピのゼリーだった。
タピタピは海の生き物だったらしい。
乾燥させて保存できるため、内陸の方でも食べられているそうだ。
食べ終わった後、ミキさんの部屋に行った。
「さて、魔法の何を話せばいいですか?」
「実は、私魔法のこと何も知らないんです」
「そうですか。・・・実は私は、元冒険者の上級者だったんです。{魔法使い}で」
「え」
ええー!?
「まあ、とある理由でギルドの社員の一人になったのですがね。
・・・では、初歩的なことから話しましょう」
「はい」
驚き過ぎて頭がフリーズした。もういいや。
「まず、魔法は限られた人にしか使えません。魔法適正がある人です。
そして、魔力をたくさん持っている人の中で、稀に自分だけの能力を開花させる人がいます。ギルドマスターがその例のひとつですね。彼はいくつかの能力を持っています」
「例えば?」
「それは企業秘密ですよ」
「そうですよね」
「魔法適正が一切ない人は、魔法は全く使えません。
なぜならその人たちは魔力を持っていないからです」
「いきなり魔力を持ち始めるとかは?」
「ないです。これは生まれ持った宿命ですね。しかし、冒険者からは結構重宝されるんですよ」
「何でですか?」
「魔法による攻撃が全く効かないからです。
でも、もしケガしたとしても、治癒魔法が使えないので苦労しているようです」
「へえー」
「自分の魔力を全部他の道具に移し、わざと魔法適正をなくす人もいました。その道具を身につければ魔法適正は戻ります。
まあ、それはよっぽど生命力がないと死んでしまうので、やる人はほとんどいないですけど」
・・・それ私かも知れない。
仮面を付けたとき、カイさんに魔力があると言われた。
「やった人いるんですか?」
「ええ。100年前に活躍した勇者がやっていたと聞きます」
「ふーん」
「それから、普通の魔法使いはこうやって魔法を使います」
そう言うと、ミキさんは杖を取り出した。
何やらぶつぶつと唱えている。
すると、杖が光りそこにあったコップに水が注がれた。
「すごい!」
「こんなの初歩ですよ。魔法石でもできます。
もっとすごい魔力を持つ人は、無詠唱で、杖を使わなくても魔法が使えます」
「そうなんですか」
一色々魔法のことを聞けた。私もいつか使えるようになりたいな。楽しそうだし。
明日も早いのでもう寝ることにした。
・・・やっぱりベッドふっかふかー♪
すぐに寝られそうだ。
次の日、また馬車は出発した。
街を出て、後はひたすら森が続いていた。
「ここは魔素が濃く、魔物が出やすいので気をつけてください」
「分かりました」
ここからは気を引き締めていかなくちゃな。よし。
しばらく進んだとき、何か嫌な気配を感じた。
「ミキさ・・・」
「静かに。魔物がいます」
「・・・はい」
これが魔物の気配か。
私は一応道具箱からナイフを取り出し、構えた。
「ゴルルルル」
鳴き声が聞こえる。
「この声は、ウルトラタイガーですね。」
ミキさんはそう言うと、杖を持って馬車を降り、走って行った。
・・・そしてすぐに戻ってきた。
「おいしい肉が手に入りました。昼に食べませんか?」
「・・・え?」
「ウルトラタイガーはおいしいんですよ」
え?倒すの速くない?
「言ったでしょう?私は元冒険者ですよ」
「・・・かっこいいです」
「え?」
「弟子にして下さい」
思わず言ってしまった。
「うふふ、ギルドマスターからお許しを頂いたら考えましょう」
「・・・ありがとうございます」
怒られなくて良かった・・・
昼、ウルトラタイガーの肉を焼いて食べた。すごくおいしかった。
ウルトラタイガー食べたい。お腹空いた。
次の話ではテルちゃんが大活躍する予定です。応援してね!