テクナ地区の惨状【3】
とてつもなく暑っついですね!時が流れるのが早すぎてもう夏なんて信じられません。けどこれが現実。。。
瓦礫の中にいたのはどんな人だったんでしょう??
「わたし、まだ空飛ぶ魔法は練習中なの。だから、高くジャンプできるようにする魔法をつかうよ。ぶーちゃんには、一瞬だけ大きくなってもらって、そこからジャンプする!」
「・・・分かった」
なんか不安。
「大丈夫!成功するって!」
ミーニャちゃんは自信満々な声で言った。これはもうやるしかないね。
「じゃあ、行くよ!・・・高く高く、飛ばせー!!」
その瞬間、ぶーちゃんは大きくなった。そこに私たちが飛び移る。そして、人がいるところに向かって飛び降りた。
ぶーちゃんは小さいサイズに戻り、私の手の中に収まった。
「きゃー!!」
悲鳴が聞こえた。・・・確かに、急に人が落ちてきたら怖いよね。
そこにいたのは、2人の親子らしき人だった。
「怖がらせてごめんね。わたしはミーニャ。こっちはふしぎさんことテルちゃんだよ!あなたたちを助けにきました!」
私は、挨拶代わりに手の中から小さなピンク色の花を出した。
「・・・私はユリカです。この子の母です。そしてこの子はモメ。3ヶ月前に産まれたばかりなんです」
「うわー、かわいい・・・」
モメという名前の赤ちゃんは、すやすやと眠っていた。私から花を受け取ったユリカさんは、モメの頭にそれをそっと付けた。
「・・・何が起こったんでしょうか。私は、この子を守るのに必死で、逃げ遅れてしまいました。助けに来てくれて、本当にありがとう」
「いえいえ。・・・何が起こったのか、わたしたちにも分からないんです。まだ調査中みたいで」
「そうですか・・・私たち、ここから出られますか?」
「はい!大丈夫ですよ!でもちょっとだけ危ないかも知れないですね」
ミーニャちゃん・・・不安にさせちゃだめだよ。
「お願いします。この子だけでも、助けてください」
「分かってますよ!ちゃんと2人とも無事に帰してみせます。・・・モメちゃんを身体に固定出来ればいいんですけど」
確かに、高くジャンプする方法だと、赤ちゃんが危険だよね。ミーニャちゃんは辺りを見回し始めた。でも、瓦礫の中に、そんなロープがあるはずも無い。
別の方法を探そうとしていたその時。
「ぶー!!」
私の手のひらの上にいたぶーちゃんが何かを主張している。
ミーニャちゃんは頷きながら聞いていた。私には「ぶー」としか聞こえないけれど。
「なるほど!」
ミーニャちゃんはポンっと手を打って笑顔になった。
「ぶーちゃんがおっきい姿に戻って、その勢いでここ全部ぶっ飛ばしちゃおうだって!そうすればこんな狭い場所から解放されるよ!」
・・・え?それって大丈夫?
「ちょっとだけ危険だけど、テルちゃんとわたしがいるんだから大丈夫だよ。心配なのは、赤ちゃんが起きちゃうことくらいかな」
「モメはちょっとやそっとじゃ起きません」
ユリカさんがそう言って少し笑った。
「わたしが魔法でシールドを張って瓦礫を抑えるから、テルちゃんは二人を守ってて」
「分かった」
「じゃあ行くよ!3、2、1!」
ぶーちゃんが大きな姿になる。瓦礫が吹き飛ぶ。
「・・・ちょっとやばいかも。シールドが弱い!まだ修行が足りなかった」
ミーニャちゃんが叫ぶ。どうしよう。瓦礫は次々とこちらに飛んできている。思ったより重かったようだ。
私にできること。ミーニャちゃんを、ユリカさんたちを、守りたい!
そう思った時、急に身体が軽くなった。これは。
「テルちゃん!」
私はシールドの前に出た。そして、瓦礫を蹴り飛ばす。
飛んで、蹴って、飛んで、蹴って。それを繰り返していく。瓦礫は重たいけど、大丈夫だ。
そうして、飛んでくる瓦礫は無くなった。
「テルちゃん、ありがとう!」
「ありがとうございます!」
「ぶー!!」
みんながうるうるした目でこっちを見ている。
ぶーちゃんよく無傷だったね。
ユリカさんたちは、猫ロボット(?)に連れられて去っていった。これで一件落着だね。
「よし、まだ人がいないか探そう」
「そうだね」
「それにしても、テルちゃんの身体強化、すごかったね」
「身体強化?」
「知らないで使ってたの?・・・もう、テルちゃんは謎が多いな」
ミーニャちゃんはなぜか上機嫌になっていた。
「じゃ、もうひと踏ん張り、頑張ろー!」
ユリカさんとモメちゃん。とてもかわいい親子です。また出せたらいいな。ネーミングセンスは別として。