ワード神生誕祭
生誕祭はなかなか過酷なもののようです。
まあ、頑張れ。(それしか言えない)
夕方になると、ワドル族の人たちは一斉に教会へと足を運んでいた。いよいよ神様、ワードの生誕祭が始まるようだ。
「緊張してきたな」
コノがミーニャちゃんに言った。
「大丈夫だよ、毎年やって来たんでしょ?」
「うん、そうだよね・・・大丈夫」
教会へ着くと、コノは準備があると、奥へと去っていった。
私たちはワドル族の人たちに倣って、教会の中央の床で円になって座った。
「最近魔物がたくさん出るわよね。コノちゃん大丈夫かしら」
近くでそんな声が聞こえてきた。
「どういうことですか?」
すかさずミーニャちゃんがその声の主に訊いた。
コノの家に来ていた女の人だった。
「あら、知らないの?この儀式が終わったあと、魔力を捧げた子どもは、3日間意識が朦朧とした状態で過ごすことになるの。そんな状態で強い魔物が襲撃してきたら、コノちゃんは逃げることができないのよ」
「ワドル族は魔物に慣れていると聞いたんですけど」
「ええ、普段訓練をしている大人がコノちゃんを守る役割をするのだけれど、もしも強い魔物がここに襲撃したら、コノちゃんは動けないから、守りながら戦わないといけない。だから危険なことには変わりないの」
「以前に魔物に集落が襲撃されたことはあるんですか?」
「ええ、あるわよ。そのときは集落の大人が総出で倒したわ。チョーデカワニが出たのよ。みんな逃げたから無事だったけど、家が潰されて大変だったんだから」
・・・ワドル族の人たちにとっても魔物は厄介な存在なんだね。
「じゃあ、わたしたちもやります!!」
急にミーニャちゃんが立ち上がった。みんながこっちを見る。
「・・・え?」
「コノちゃんの護衛です!わたしたち三人なら魔物なんてワンパンです!!」
ちょっとミーニャちゃん・・・護衛って・・・
「でも・・・」
「大丈夫です。わたしたち、旅人なので魔物に慣れてるんです。それに、コノちゃんとは友達ですし・・・ね?」
もう友達になったんだ。早いね。
そして、ちょうどそこにコノちゃんが来た。
真っ白な衣装に身を包んでいる。
「はい、友達です。でも、そこまでしてもらうなんて悪いですよ。ミーニャちゃんたちにも目的地があるのでしょう?」
「うん、でもね、わたしたち全然急いでないし、今はコノちゃんの方がだいじなの!!」
「・・・そこまで言ってくれるなら、してもらえばいいじゃないか、コノの護衛」
そう言って立ち上がったのはコノのお父さんだった。
「もう、お父さん!」
「俺も他の奴らもいるんだから大丈夫だろ。それに・・・ばあさん、3日くらいお三方を泊めてやってくれないか?」
「ああ、暇だからねえ」
「ほらな」
「じゃあ、決まりだね!」
おお、ここで3日過ごすことが確定したね。
私全く会話に参加してないけど。
しばらくして、生誕祭が始まった。
教会の真ん中で、鈴を持ったコノが一礼した。
「みなさん、このめでたい日を、また迎えられたことを感謝しましょう。これから、ワード様に感謝を込めて、この聖典を読みます」
コノは、分厚い本を開く。そして、透き通った声で読み始める。
みんなは静かに聴いている。
「私たちは、この世界を守らなくてはなりません。ワード神のために一」
このあと30分ほど話は続いた。みんなよく寝ないで熱心に聞けるね。まあ、神様への言葉だもんね。
読まれたのは神様のした素晴らしいことや、この集落のルールなどだった。
「ーでは、これから、ワード様に、魔力を捧げます。みなさん、お祈りをしてください」
コノがそう言うと、みんな正座してうつむき、何やらぶつぶついい始めた。
コノは水晶玉のようなものを持って上にあげ、何かを呟いた。
すると、ものすごい光が教会中を包み込んだ。
光が収まると、コノは静かに眠っていた。
「付いてきて」
コノのお父さんがコノを抱っこして言った。
家まで運んでいくようだ。・・・と思ったら・・・
「コノはここで3日間過ごす」
運ばれたのは教会の2階だった。
「神様の加護を得られるように、太陽に一番近いところで寝かせるの」
コノのお母さんが教えてくれた。
「じゃあ、俺達は教会の外で護衛をするぞ」
「はい!!」
ミーニャちゃんはすごいやる気だ。
「ぶー!!」
・・・ぶーちゃんも。
まあ、3日間頑張ろうかな。
コノは無事でした。
さて、次の話では大丈夫でしょうか。(作者も含めて)