バーグ地区への旅【2】
二部目です。ミキさんはやっぱりかっこいい。
あっという間に夜になり、私たちは森の中で過ごすことになった。焚き火をして夜ご飯を食べ、しばらくミキさんと話した。
「ここは危ないので、この石を置いておきましょう」
「・・・これは?」
「私の意識を一部入れたものです。何か来たらすぐに気づくことができます」
「へえー」
すごいな。私てっきり交代で見張りをするのかと。
「この大森林を抜ければバーグ地区へはすぐです。魔物に気づかれないよう明日は夜明け前に出発しましょう。
・・・では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
豆を放り投げると、寝袋になった。
・・・良かった、私にも出来た。
ミキさんがテントを出してくれたので、雨が降っても大丈夫だ。
「起きて下さい」
目を覚ますと、いい匂いがした。
「おはようございます」
「朝ごはんできました」
作ってくれたんだ。私も手伝えば良かった。
朝ごはんは目玉焼きと木の実のスープだ。
「とてもおいしいです」
「ありがとうございます。これはコケ鳥の玉子、こっちはスープの実のスープです」
面白い実があるもんだね。スープの実って・・・
朝ごはんを食べ終え、早速出発した。まだ日は昇っていない。
今日も魔物が出てくる可能性があるので、注意しなきゃね。
1日経って、ようやく森を抜けた。その間、魔物が何回か来たが、ミキさんが全て軽々と倒していた。もう魔物は来ないだろう。
・・・というのは甘い考えだった。
ドラゴンに遭遇したのだ。
「これは・・・厄介な相手ですね」
「・・・え?」
ミキさんがそんなこと言うの珍しいな。
「ドラゴンは頭がいいのです。これはまだ弱いドラゴンですが、油断は出来ませんね」
そう言ってミキさんは馬車を降りた。
これは私も戦った方がいいかも。仮面を付けてスタンバイする。
・・・魔法はまだ使えないけど、この方が落ち着く。
「私も参戦します」
「ありがたいですが・・・」
「大丈夫ですよ。どっちにしろ危険なことに変わりはありませんし」
「・・・では、私は足を狙いますので、あなたはドラコンの気を引いてください。ドラゴンは珍しいものが好きです。
・・・出来れば火を吹く前に終わらせたいですね」
「分かりました」
気を引くのは得意だ。私は道具箱から2つのナイフを取り出した。
それを思いっ切り上に投げる。
ドラゴンは見事に食いついた。ナイフから目を離さない内に、ミキさんが魔法でドラゴンの足を切る。
ドラゴンは倒れた。・・・あとは・・・
私はさっき投げて、落ちてきたナイフを2つともキャッチし、それでドラゴンの目を突き刺した。とりゃー!
・・・これで火を吹くことはないだろう。あーあ、ナイフが汚れちゃった。
「やりますね!」
ミキさんはそう言うと、魔法でドラゴンの首を切り落とした。
「・・・このドラゴンはバカドラゴンと呼ばれるものです。ドラゴンの中でも弱い種類ですね。
強いものでは魔法を通さないものや喋るものまでいます。集団で来られるともっと厄介ですね」
「それじゃなくて良かったです」
「はい、本当に。
テルさん、手伝って頂き、ありがとうございました」
「いえ、いい経験になりました」
「・・・では、行きましょう」
「はい」
ドラコンの体の中に入っているクリスタルは高く売れるらしい。ミキさんは私に譲ってくれた。本当にありがとうございます。
しばらくすると、村のようなところが見えてきた。
「あれがバーグ地区です。・・・思ったよりひどいですね」
「・・・え?」
「あの地区は農作物がたくさんとれる場所なのですが、もう焼け野原ですね。農作物を狙って魔物が襲って来たのです」
「そうなんですか」
農家さんにとっては大打撃だろう。
「今、国とギルドが協力して種や苗を送っているところです。収穫期じゃなかったのは不幸中の幸いですね」
馬車の後ろにあったのは種や苗が入った箱だったのか。
「もう少しで着くので、着替えをした方がいいと思います」
「分かりました」
でも目立つから仮面だけでいいや。・・・装着っと。
そうしてようやく、私たちはバーグ地区にたどり着いたのであった。
今回をテルちゃんが大活躍でした。あと、意外だったのは、ミキさんが料理上手だったことですね。
次の話ではバーグ地区の子どもたちが出てきます。よろしくお願いします。