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キメラさん、痛恨のミス。やっぱ残念ヒロイン過ぎるようですよ。

【人間側の冒険者】



「おい、ヴェール飛ばしすぎだ。他の奴が付いてこれなくなる。」



「気がつかなかった、すまん。」



2人は、バリンガムの直前



「………それ、まだプロポーズしてなかったんだな。」



 男は、ヴェールの手に握られた指輪を指差す。



「まぁ、な。毎日、魔族やら化け物やらと戦っていだからな。」



「だとしても、プロポーズで渡すのが【魅了無効】の指輪はないんじゃないか?」



 指輪にしては飾り気のなく安物の赤い石が取り付けられたものだった。



「こういうのは誠意なの。それに機能性とか気にするタイプだろアイツ。」



「確かに。下着じゃなく常にプレート仕込んでだからな。寝てる時も鎧を寝袋にしてたし。」



 2人は、手綱をゆっくりと引き仲間と合流する。



「絶対に助けよう。」



「わかってんよ。元勇者パーティの“緑”を冠するお前だけじゃない。」



 男はキャンプを見回しながら喋る。



「ギルドのシルバークラスの冒険者が28人。残りはブロンズだがどれも経験豊富な奴ばっかりだ。余裕だよ。」



「そうとも限らない。あの歴代最強の勇者のルージュを洗脳する奴らだ。油断は出来ない。」



「それじゃ尚更、ちゃんと休んで準備万端でなきゃ。」



 2人は、馬から降りると各々休憩を取った。



 そして、皆の緊張が緩んだというタイミングでソレはやってきた。



「なんだコイツ!?コウモリか?」



 仲間の1人が騒ぎ出した。皆が疲れて静かに過ごす中、彼の声は全員の耳に入る。



「うるさいな、コウモリなんかにビビってんじゃねえよ。」



「た、助けてくれ!俺苦手なんだよコイツ。」



 ヴェールは仕方なく馬から降りて近づく。



「【セイクリッド・エンチャント】」



 男の胸に魔法陣が現れ、身体が光る。



「D級魔法だがコウモリ程度なら逃げてく。」



「た、助かった。妙に俺に取り付いてきてな。」



「お前は少し太ってて血が多そうだからな。」



「その言い方はひでぇよ。」



 グループ全体から笑いが起きる。



『確かにそれは酷い。いじめじゃん、私なら泣いちゃうね。』



「誰だッ!」



 休憩中だった全ての人間が武器を直ぐに構えていた。



 返事はない。

 すると、森の中から音が聞こえてくる。



「羽音…?」



 最初は、1つや2つだった音が直ぐにその数を10倍以上に増やす。



「な、【ナイト・アイ】!………アレ?なんも見え。ッ!?」



 男は、尻餅をつく。そして、そのままみっともなく漏らしてしまった。



「どうした?何が見えた。」



「た、大量のコウモリが!!この森を覆い隠すほどの数。千や二千はいる!」



 直後、飛び出してきたコウモリの群れがグループ全員を襲った。



「ヴェール!」



「【セイクリッド・エンチャント・サークル】。神よ我らを守り給え!」



 グループ全体を覆うほどの大きな魔法陣から光の壁が全員をコウモリの海から守った。



『おいでやす〜。本日は遥々(はるばる)遠いところから。お通しとしてぶぶ漬けでもいかが?』



「あっちからだ!」



 1人が指差した先に、コウモリ達が羽を広げている。

 すぐに反対の方向にいた白いコウモリから光が出る。



「な、なんだ……?」



 コウモリ羽を使って映し出されたのは映像だった。



『はい、どうもー。バーチャル人間娘ヨウジンボーのクリムでーす。』



声の正体は、クリムを名乗る銀髪赤眼の美少女であった。



「ルー、ジュ……?」





「あれ、反応ないけど写ってる?写ってるよね。この魔法作るの大変だったんだから。」



「クリムおねーちゃん、この小さい人型たち何?小人族?」



「これ、ティア。クリム殿のお手を煩わすな。」



「まぁまぁ。これはね。遠くの所に私たちの姿を見せる【フォトン・イメージ】って魔法。」



 B級魔法だが実は魔力消費がマッハだ。コウモリ達も光が熱いって呻いてるし



 右にティア。

 左にラミス。

 姉妹に挟まれるようにして俺は座っている。



『ルー、ジュ……?』



 ふーん、この体はルージュって名前なんだ。俺の名前のクリムゾンと色は似てるな。



『お前、やっぱり洗脳されてるのか。』



 は?なんだそれ。噂じゃそんなことになってんのか。



『俺だよ、ヴェールだ。お前と共に魔族と戦って飯食って寝て。忘れちまったのか?』



「知らん知らん。ま、兎に角。ようこそバリンガムへ。身体の疲れを癒してゆっくりしていってね。」



『洗脳はしっかりされているようだ。くそ…犯人は、そこの鎧の女か。』



 どうやらヴェールはラミスにこの身体が洗脳されていると勘違いしてるようだ。



 確かに、ラミスは赤黒色の鎧に長い紫の髪、黄金の瞳に吸血鬼という完全に悪役な見た目だが。



『お前がルージュを誘惑したんだな!』



「お姉様、あのヒューマンにビシッと言っても構わないでしょうか。」



「おうおう。言ってやれもうビシバシと指摘してやれ。」



 違うと完璧に跳ね除けてしまえ。



「…………ふっ、そうだ。私はこの娘に惚れた。よって我が手中にしたのだ。」



 ん???え、ちょっと待って。



『その牙。まさか吸血鬼か。悪いことは言わない。俺は祓魔師(エクソシスト)の職ももつ。祓われたくなければ彼女を返せ。』



「それは出来きぬ。たかが虫けら如きにこれは勿体ない。我が全てをかけて愛そう。よって、貴様らが大人しく帰るのなら皆殺しせずにおこう。」



 似合いすぎる悪役ムーブ!



「ちょ、ま。」



『仕方ない。ならば力ずくだ。首を洗ってまってろ吸血鬼。【雷撃(ライトニング)】。』



「うわっ!俺特製の投影コウモリちゃんが!殺された!」



 映像切れる直前で魔法が飛んでくるのが見えた。



 あれ完全にキレてるよ。どうすんだよ…。

 歓迎するつもりが宣戦布告になっちゃったよ。



「どうですか!クリム殿。きっちりハッキリ言ってやりましたよ。これで気にせず皆殺しに出来ますね!ふふーん。」



「お姉ちゃんすごいカッコよかった!流石だね!」



 感心してる妹の前で怒れない。あとで説教だ。



「えぇ、褒めなさい!もっと褒めなさい!最高にかっこいいクリムゾン様の眷属の私がカッコよくない訳がない。」



「お姉ちゃん、クリムゾン様ってだれー?」



「…………あ。」



 よし、お仕置きだな。説教じゃ生温い。


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