キメラさん、なんだかんだ仕事をするようですよ。
さて今日の食事は、結界に引っかかった獣ちゃん。計4体。
「あら、クリムゾン様。食事中失礼します。」
「よい。胸を揉ませば許す。」
自分の手のひらから、更に腕を生やす。
その腕は、過去に食べたモンスターたちのもの。
「前から思ってましたけど。見た目が結構エグいんですよねそれ。」
胸を揉まれるのにも慣れて来たのか、最近は抵抗がなくなった。
俺の手の平→獣の足→虫の足→人間の腕→胸
「それで、なんか用?式場の場所決まったか?」
もにゅもにゅもにゅ
「いえ、単純に戦線の移動です。今度は人間側が押し上げて来まして。」
「ふむ。人間側が。新兵器でも開発したか?」
「いいえ。なんでも“勇者の弔い合戦”だといって士気が異常となり勢いづいたらしく。」
俺のせいやん。魔王許して。
「ま、魔王がなんとかするっしょ。」
俺はもうやめたし。もにゅもにゅ
「この街にも人間側の冒険者の人数が増えると思います。」
「なるほど。いざこざが増えそうだな。街のみんなには?」
「いえ、まだ。ですので、巡回の際に街のみんなに声をかけてやって欲しいのです。やり方は任せます。」
「あい、わかった。青年団を使うとする。」
「いいと思います。」
仕方ない。俺1人じゃめんど………効率が悪いからな!
もにゅもにゅ
「クリムゾン様。貴方が食べてるそれ。」
え?これ?
「結界に引っかかった。つまり害意を持ってこの街に近づいた。別段ヒューマンだからといって食べないわけじゃない。」
うーむ。骨が多いから食感が良いな。
「女性のヒューマンが男の人の腕を飲み込んでるのは見応えありますね。」
ヒューマンの踊り食い大会だったら芸術部門ですら優勝出来るくらい自信あるね。
「決して、私以外の前で【合成】使わないでくださいね。」
「いやん♡独占欲の強いお嫁さんだわぁ♡」
「見られても困りますし!!客だけじゃなく世界を滅ぼされても困るんです!!」
「大丈夫。俺はまだそんなこと興味ないから。それに――――」
「それに?」
「――――こんな素直な自分を見せるのはミルフィーの前だけだから。」
「.........。も、もう!!そんなこと.......////」
チョロイン。
◆
「というわけで、ココアさん。あの家で娘は帰ってきました?」
「ごめんなさい。クリムさん。ラミスはあの後も帰ってこなくて。」
「やっぱりですか。」
「クリムお姉ちゃん、ねーさまに用なの?」
「今日も可愛いなぁティアは。よしよし。そうだよ。」
昨日の荒れてる様子とは全く違う。
紫色の長い前髪が目元まであり、昨日見えた光るツノや紫紺の瞳は隠れてしまってる。
鬼の一族は必ずツノを持ち、ツノを刺激すると活性化する。
いわゆる”覚醒”状態で、肉体と精神共に強化される。
しかし、ティアはまだ幼いので覚醒状態をうまく扱えず性格ががらりと変わる。
「多分。いつものように鬼越山にいるかと。」
「わかりました。どうもありがとう。ティアちゃんもまたね。」
「またね!またね!」
腕をぺしぺしと叩いてきて可愛いなぁこいつ。
食べてしまいたいぐらい可愛いとはこの子ことだ。
◆
用心棒の仕事その3は青年団の統率なんだが、元々青年団には長がいる。
この街の青年団は、全て女性で構成されていて、理由は謎だが”深淵騎士団”を自称している。
そんな彼女達のトップである騎士長を、ティアの姉であるラミスちゃんが務めて居るらしい
だが、俺がこの街に来てから1度たりも、ラミスちゃんと顔を合わせたことがない。
副長や部下たちとは蹴り玉する仲だ。
「我々は、街から派遣された用心棒であるサー・クリムの命令であっても決して従えません。」
なんだが、騎士長であるラミスちゃんの許可ないからと従ってくれない。
「サー・クリムゾンが騎士長より強いのなら別ですけどね。まぁ、それはないと思いますが。」
「この村の最大戦力にして最強。あの方がいるからこそ、この街は中立の立場で居られるのです。」
今は、深淵騎士団の力が必要だ。
俺も全部の家を把握しきれてるわけじゃない。
情報は出来るだけ早いに限る。
それに今回の件は、彼女達だけに動いてもらう必要もある。
仕方なく俺は鬼越山に向かった。
え?用心棒が街を離れちゃダメだって?
大丈夫。今の俺のレベルは333。村にLv.666の俺を置いてきた。
スキル【合成】をマスターした俺はついに自分でスキル【分配】を生み出した。
自分の身体とレベルをケーキのように切り分けるのだ。
ポタポタと、天井から雫が垂れる音が聞こえる。
鬼越山の中腹に開いた洞窟にラミスちゃんは居るらしい。
どれくらいだろうか歩くのが面倒になった俺は、下半身をスライムに変えた。
うにょうにょ。
進みが遅いが無意識のうちに先に進んでくれる。
今の姿を見られたら、新種のモンスターとして登録されてしまうだろうな。
そしてまた小一時間くらいだろうか、進んだころ。
キンっ!キンっ!
金属が硬いものにぶつけている音が聞こえる。
やっぱりか。
ダークハウンドの目玉を身体に生成して後ろ姿を見る。
紫の髪が赤黒色の兜の隙間から見える。
どうやら、手に持つ銀に輝く槍を洞窟の柱にぶつけているようだ。
「誰だッ!?」
お、この俺に気がつくかよ。
「スキル【気配同化】。消すのでなく自然状態へと帰化させる技術。フッ我が†血塗られた深淵の眼†でなければ見抜けなかっただろう。」
なんだそのむず痒くなる名は。
幼い頃に居た拗らせた俺を見返してるような。
「ふむ。乗るのも一興か。吸血鬼。」
闇の中で鎧が振り返りこちらを見つめてくる。
わずかな光だが、その瞳は金色に輝く
「フッ。我を知っているのか。ヒューマン。いや、外見だけかそれは。」
吸血”鬼”。鬼の血の中でも最強の種族。ツノを歯にもつ鬼。
この村の最大戦力(俺がいるので2番目)であるラミスちゃん。
実力を図る為にも、ちょっと本気出さなきゃな。
今度こそ、ちゃんと力を使う。20%くらい!
「惚れた。俺の嫁になれッッッッッッッ!!!!!」
次回、魔王をも超える最強の力の片鱗を見よ!
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