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ついに女とばれる

「帰ろ!」

真澄は勝利の腕の袖をつかんだ。勝利は聞いているがうつむき気味だった。やがて言葉を発した。

「うん・・でもどこかに住み込みででも働こうかと。」

しかし真澄は言葉の意味を誤ってとられて説明した。

「ああ、東京に帰るだけじゃなくて、ちゃんと日向君の実家に戻らないと。学校行けなくなるし。高校も卒業して大学も行かないと。」


 しかし勝利は寂しさを漂わせながらもきっぱりと言った。

「大学は行かない、あきらめた。」

「えっ!」

「高卒で働く、と言っても高校行きつづけられないかもしれないから最悪中卒で働く。自立したい、というよりしなきゃいけないんだ。」

かなり切羽詰った決断と言う雰囲気がした。しかし真澄はやんわりとだがはっきりと否定した。

「偉そうだけど、それは難しいと思う。」

「いや難しくてもやらなきゃいけないんだ・・!」


 批判されるのを半分は予想していたようだった。さらに勝利は後がない切羽詰った雰囲気で答えた。彼なりに冷静さは維持していたが。しかし真澄は続けた。

「それは思いあがりだと思う。仮にいくらがんばっても僕たちの、進学組の力でそんなに大金を稼げるわけじゃないんだ。いやお金だけじゃない自立能力って言うか。僕も積み込みや喫茶店のバイトとかしたけど苦労も失敗もあるけど家計を支えられるほど稼げなかった。体力との兼ね合いもあるしね。僕たちは子供じゃない。でも大の大人でもなかった。」

真澄の言い方は必死の呼び止めと言う感じでかつ経験談も踏まえ勝利に間違った道を歩んでほしくない気持ちからだった。もちろん自分だって子供であり世間知らずだとは知っている。しかしそれを踏まえ普段よりきつく言った。真澄はさらに言った。


「きついけど日向君君自分をわきまえてない。」

さすがに雰囲気を察した国木田が突っ込んだ。

「椿君・・」

「・・」

沈黙が流れ雰囲気を何とかするため国木田は言った。

「あたし、あまりアルバイト長期やってないし言えた分際じゃないけどやっぱり全部まかなうの、いやお金だけじゃなく完全自立するの無理だよ。だって私たち学校の勉強しか知らないんだもん。だから私としては少しずつ大人になる準備をしなきゃいけないと思う。」

勝利はうつむきながら何かを言いたい沈黙を時折体を震わせながらしておりやがて苦しそうに口を開いた。

「でも・・お金の為に親父と一緒に暮らすって図々しいじゃないか。それにおれは元々父ちゃんを・・」

「嫌いなの?」

言いおわる前にすこしきつく真澄が突っ込んだ。しかし勝利は元気なく言った。

「嫌いだよ。」

しかし真澄はさっきまでのようにすこし厳しめの口調で勝利を諭そうとした。

「でも仕事はずっとしたんでしょ。」

「したけど家庭内は最悪だったよ。」

君にわかるかと言うような有難迷惑的な返事だった。しかし真澄は続けた。


「僕だって雰囲気悪いし離婚したさ。だからアルバイトしたりして稼いだ。看病もした。でもそんなに母は助けられなくてむしろ僕が守られてたんだ。」

勝利は羨望をこめ冷たく言った。

「家は君の母親みたいに良い人じゃない。」

しかし国木田は言った。

「でも病気だったんじゃない。親が病気で守らなきゃいけないの大変だよ。」

少しの間勝利は返答にこまりうつむき体を震わせていた。

「でもおれ男だし嫌いな親に頼るなんて・・」

勝利の態度や表情には自分の力のなさへの悔しさが出ていた。真澄は先ほどまでと変わり初めて慰める口調をした。目も慈悲に満ちていた。

「わかる。でも男だからこそプライドを捨てたり人に頭をさげなきゃいけない事、かっこつけちゃいけない事いっぱいあると思う。」

妙に客観的で分かったような言い方に勝利は苛立った。

「君だって男ならわかるだろ?」

「わからないわ。」

「えっ?」


 分からないと言う返事のみでなく語尾が「わ」なのが勝利を驚かせた。聞き違いかとも思った。

「女だもん、私・・」

真澄は上着を脱いだ、シャツに胸が見える。国木田はついに・・と思っていた。しかし勝利の受けた衝撃はその何倍も大きかった。怪物を見るような顔をしていた。しかし真澄は謝った。拒絶されても責められてもいい、本当に申し訳ない気持ちだった。

「ごめん、本当にごめん黙ってて。でも私日向君に間違った道をいってほしくなくて、たから私も本当の事を言って日向君にわかってほしかった。本気で心配してる事、好きだって事!」

「ストープ!」

空気や雰囲気がこんがらがった様子なのを察した国木田は勝利の腕を取って引き寄せた。それは怒りを中和するためでもあった。焦り笑顔を作った。勝利は何とか事態を飲み込もうとした。国木田はにこにこしながらいつもと同じように勝利を誘った。動揺は隠しきれないが。

「まあ、この話はこの後ゆっくり。日向君、私と2人で食事行こう。」

真澄も仕方ないと言う顔をし、2人が去るのを見送っていた。


この作品は次回で終了です。ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。皆様の毎日のアクセス本当にはげみになりました。毎日賞めざして続けられました。また反省点も結構ありますがそれは次回に。ピュアフル大賞に応募するのでキーワード設定しました。

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