勝利の探した物
真澄は勝利から来た手紙の内容の意味を解くことが出来ず困惑した。絵がかいてあり紙には病院と思わしきものと時計台がある。
しかし自分にだけ投函してくれた、自分を信頼し頼ってくれているのがうれしかった。手紙を握りしめ胸にあて喜びをかみしめた。
「これって何かの暗号?それとも実在する場所?この家に来たんだ・・私だけに伝えたいって事?」
(あっそれって都合のいい解釈かも。うーん他の人にも伝えなきゃいけないのかなあ・・色々な人で手分けした方がいいんだけど。伝えてくれってかいてない。)
「それもそうだけどこの病院にいるって事?ネットで調べればいいけどなんか簡素と言うか。自分の足とかで調べた方がいい気がする。」
真澄はせめて国木田に伝えるべきではないかと葛藤した。しかし本心は1人で探したかった。
次の日に恐る恐る真澄は座っている国木田に聞いた
「あの、日向君から何か連絡あった?」
「・・ううん。」
顔にとまどいがあり何の話かと言うような顔をした。国木田ももちろん勝利の身を案じているものの、これまでとは少し違う態度で真澄に接していた。
「実は・・」
真澄は恐る恐る手紙を見せた。その差出人名を見て国木田は驚いた。
「椿真澄宛て 日向勝利」と書いてある。
「えっ、これが郵便受けに?」
一瞬なぜ真澄の家だけにと言う羨望のような気持が感じ取れた。それを敏感に真澄は感じ取った。
「うん。多分ここを目指してるかすでにいるかだと思う。」
「見せてくれるの?」
また「なぜ私に?」と言う反応だった。語尾が質問と言うより相手に圧力を与えるような強い調子だった。
もっと言えば「見せる相手間違えてるんじゃない?」とも言いたげだった。真澄は真摯に自分の気持ちを打ち明けた。国木田は明らかに自分を恋のライバルとしてみている。しかし今まで仲良くしてくれた事に対する真澄なりの精一杯の誠意だった。国木田もそれを感じ取り態度を軟化させた。真澄はまるで謝っているようだった。
「・・自分だけの秘密にしたくなかった。本当は手紙を見たとき自分だけの秘密にしようと悪い心がよぎった。でも国木田さんは1人だけ私の秘密を守ってくれた。だから私だけ自分の秘密にするの最悪だと思った。」
「・・ありがとう。最近本当は少しあなたに冷たくしたと思う。」
「気にしてないよ。国木田さんが信頼できる人だから打ち明けたんだ。」
いつもの国木田の雰囲気と口調に戻ってきた。
「そう・・じゃあ図書館とかで調べるとか。」
2人は図書室に行き病院一覧表で調べた。しかしめぼしいものは見つけられなかった。
「大きい病院しか載ってない。」
「病院の外観だけで他の風景がない。」
2人は色々とページをめくってみたがそれらしいものはみあたらない。
「時計台て暗号?」
「ううん、日向君は暗号とかあまり使わないと思う。」
「あとは手がかりなにかないかな。」
交番でも2人はきいた。
「時計台の近くにある病院?」
警官は電話帳をめくったがすぐにはわからなかった。
「うーん、もう少し具体的地名がないと・・・」
「すみませんでした・・」
2人は疲れしょんぼりしていた。
2人は疲れていた。しかし勝利に何かあったらと思うと疲れは半分忘れた。真澄は弱音を少しはいた。
「結構つかれる。でもネットはあまり使いたくなかった。」
「私も足で探す方がなんか誠実って思う。でも時計台がどこにあるか。」
「大きなビルや夜光るところか駅についてるのもある。駅の時計だったらそれこそ無数にある気が遠くなる。」
「日向君って出かける範囲せまいって皆言ってた。」
「あっそうか、だったら絞れて来るかも。」
「でもこの病院にそもそも何しにいくんだろう。友達が入院してるとか。」
二人は市役所に行ったがわからなかった。根拠の持ちようがなく、仕方なく二人は手分けして沿線の勝利が行きそうな駅で期待をこめて足で探した。夕方まで探したがだめで二人は落ち合わず帰った。
真澄は疲れ1人つぶやいた。
「わからない。どこの病院に行ったのか?待てよ。そもそも何がある病院なんだろう。待てよ、もしかして…」
(多分だけど、日向君が生まれた病院だと思う。でお母さんに聞けばわかるけど通じなくてでもお父さんに聞くのはこわい。)
「こないだ行った病院に聞けばわかるかも。でも明日行くのは無理、でも早く行かないと。先生に許可を得れば。」
そして病院に真澄は電話した。
「日向勝利さんの生まれた病院ですね。」
2人は遠路はるばる県を超え新幹線に乗っていた。勝利の生まれた病院、それはある県のある駅にある大病院だった。2人は手分けして近くを探すと病院の前でうろうろする勝利が確かにいた。
「あれ、もしかしていた!」
真澄は確かに勝利を見つけた。国木田より先に。エゴをいえばこの時間を2人だけのものにしたいと思っていた。2人は見つめ合い胸に手を当て安堵した。真澄は2人きりで緊張していた。勝利は謝った。
「ごめん、心配かけて。来てくれたんだ。」
かなり申し訳ない気持ちがこもっていた。真澄はさすがに歩き回った怒りが顔と口調に出た。
「手間取ったよ。」
「ごめんもう少しわかりやすくすればよかった。手紙を残すのが最低限の礼儀だとおもったから。」
「この病院・・」
「そうこの病院が俺の生まれた病院なんだ。」
勝利は振り返って感傷にひたった。
「あっ国木田さんもきてるの。よばなきゃ」
真澄は今思い出したようなそぶりを見せた。しかし真澄は呼ぶのをためらった。
「どうしたの?」
「このまま2人きりで・・」
「えっ?」
「あっ変な事言ってごめん!」
国木田が割って入るようにうれしさのこもった顔で来た。
「日向君!無事で良かった。」
「ごめん本当にごめん。」
どことなく国木田に対しての方が深く謝っているようだった。
「ところでここで何を?」
「なんか色々な事で悩んで自分の原点をあと1つ目的は。」
「あと1つ?」
「それはあとで。」
一行は病院の廊下を歩いていた。
「あの部屋赤ん坊が泣いてる。」
「はいよしよしばー。」
「俺が小さいころはまだ夫婦は仲良かった。もしかして本当は悪かったのかもしれない。」
勝利は少しだけ悪い父親を許すような言い方をした。
「じゃあもっと大きくなってからお父さんはおかしくなったの?元々悪いひとじゃない?」
「多分母さんと愛し合ってたんだと思う。子供の記憶だけどね。あのころは食事や野外に出かけたりしていた。」
確かに勝利の脳には少年時代に見た景色があった。
「理想の家庭だね。」
「親父も多分仕事がうまく行っててあまり不満はなかったんだと思う。ただばあちゃんが同居なのが良くなかったのかもしれない。ばあちゃんは母ちゃんをいじめていた。おれも気づかなかった。でも父ちゃんはそれをみて笑っていた。」
「えっなんで奥さんがいじめられると喜ぶの?」
「わからないけど妻の仕事はいじめを我慢する事だとか言ってた。もしかしたら新婚の時から全ておかしかったのかもしれない。俺の力じゃわからないけど。」
「お母さん、ずっと耐えてたんだ。立派だね。この前逢った時も疲れから解放されたような表情だった。」
3人はそこから遠くない勝利の祖母の墓に行き線香をあげた。手を合わせ黙とうした。




