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勝利の捜索

「日向がいないんだ。」

ホームルームの前に職員室に担任の西巻は真澄のみを呼び出して事の成り行きを説明していた。いきなり「日向がいないんだ。」である。真澄は青ざめた。嫌な予感が胸をよぎった。

「連絡がないから電話したがご家族もいない。日向はこのまえ家出をした時だけ無断欠勤をしたんだが…何か知らないか。」

どうか少しでも手がかりをつかみたいと西巻はわらをもつかむような顔だった。

「い、いいえ。」

しかし真澄も答えるのが精いっぱいで現実を受け止めきれなかった。


 学級会で西巻は言った。

「実は日向君が学校に来ない。普段は絶対無断欠勤はしないんだが…」

「何かあったってことですか?」

「お、おい!」

演技でもない生徒の発言にさすがに気まずい空気が流れた。


皆は休み時間小グループに分かれて話し合った。

「ついに家庭の問題で我慢出来なくなったんじゃ。」

「まだわかんないけどあいつの一番大きな悩みってそれだよな。」

「何かあったのかな。」

「家庭の問題に入るなよ。」

「でも入らなきゃ原因がわからない。」

「もしかしたらホテルに泊まってるかもしれない。ホテルに片っ端から電話かければ。」

心配する雰囲気と相手の内情に関心があって話している雰囲気両方だった。噂は別グループでも広がった。しかしそこでも心配しているようでどこか勝利の家庭の問題を噂したり予想したりするのとどっちが大事なのかと言う雰囲気が感じられた。妙に楽観的とも言えた。


「どこにいそうかなあ?予想やめぼしも曖昧だし根拠のある手がかりなら。」

「どこか行きたいって言ってたっけ?」

「あいつ言わないだろ好きな事を。いつも受験の事ばかりで。」

「あまり日向君の好きなものってみんな知らないよね。」

「あいつ遊びに行く事はあるのか?」

「あいつ遊ばないだろ。」


 国木田は神山と2人で話していた。神山はさすがに冷静さを保っていても真剣だった。

「神山君、何かないかな。」

「家に置き手紙ないかな。」

「なるほど。」

「でもなかったら冷静でなく出てったって事。」


 またクラスメートは各々噂した。しかし心配しているようでどこか本当の深刻さに欠けた。

「電車賃そんなにないんじゃないか?そうだ定期がある。定期の使える沿線かもしれない!」

「なるほど!」

「あてもなくさまよってるかも。ホテルって高いよ。そんなに泊まれないだろ。」

「とすると公園で寝てるとか?」

「あいつアルバイトやめたしどのくらい貯金あるのかな。でもまさかどこかに住み込みで働く気じゃ。」

「働いているならいいよ。でもまさか最悪の行動に」

「変な事は言うな!」

振り返るとそこに進藤がいた。いつになく神妙な面持ちである。

「進藤…」

「ぼ、僕もあいつに意地悪したんだから言う権利ないけど。でも俺も今は心配だ!だから探したい!」

「私も協力するわ。」

「大泉さん。」

「生徒会長とか関係なく。それと…あんたの事を少し見直したわ。」


 また別の生徒たちは噂していた。どうも嫌われてなくともあまり良い雰囲気の噂ではないようだった。

「狭そうだよね。遊びの範囲あんまりデートスポット知らなかったしね。」

「勉強ばかりしてあいつあまり自分の事をしゃべらなかった。」

「ボクシング好きだって初めて知った今まで話題にしなかったし。」「出さなかったのかな」

「いや、好きだったらもっと早くやってるだろ。」

「いや、好きでなきゃあんなに熱い試合出来ないだろ。」

真澄は他の生徒たちがあまり勝利の事を知らないのに驚いた。

(日向君って自分の事人にあまり話さないんだ。悩みをためるタイプかも。)

あまり付き合いが上手くないのかと思った。

(ボクシングが何かてがかりにならないかな。普通に考えれば公園で寝てるかも。でも夜探しに行くの怖い。)

そんな真澄に国木田がのっそり近づき唐突に話しかけてきた。

「あなたも日向君を探すの?」

言い方がいつもと違う明るさや優しさが少しないというか疑念に満ちていた言い方をした。真澄もそれを感じ取った。

「うん。」

「男として?女として?」

この質問を国木田がするとは真澄は面食らった。少し危険な雰囲気を察した。

「国木田さん…」

少しいった事に後悔しながら国木田はもう少し柔らかく聞いた。

「ごめんなさい変な事聞いて。でも一度あなたが日向君をどう思ってるか知りたかったの。」

「うん、好きだよ多分。」

「私も」

「えっ!」

本当に思い切っていた。まさかこのタイミングで国木田の本心を聞くとは思いもよらなかった。

「まだ本人に打ち明けるきはなかった。でもこんな切羽つまってて、だから椿さんを敵に回してでも。」

明らかに様子が違うと真澄は感じ取り緊迫感が流れた。

「どうしたの国木田さんらしくないよ。」

「いいえ、私はこういう性格なの。」

お互い少しの間黙ってしまった。


 2人は場所を移した。

「女だってこと皆に言うの?」

「うん、言うわ、必ず。」


 真澄は家で母と話した。

「えっ、日向君がいなくなった?」

「うん。」

「お母様に連絡とってみる。」

真澄の母はダイヤルしたが反応はなかった。

「電話つながらないわ。」

真澄は思い立った。

「今日夜探しに行く。」

「だめよ、あぶないわ。」

「男の恰好してるけどね。」

真澄は勝利の言葉を思い出した。

「ボクシングやってやっと自分の居場所を見つけたんだ。でも東山さんにはけ口としてやってるのを見抜かれて負けた。」

「それだけだったとしてもいいと思う。」

真澄は言った事を思い出した。


 真澄は次の日の日曜電車にのり勝利を探しに行った。あてもあまりないが、都内の有名な場所にいるのではと思い目星をつけて探した。町を歩きもしや偶然あうと言う事があればと思った。国木田と行ったと言うファッション店にも行った。

「おおっときれいな服に見とれてるひまない。」


 真澄は9時ころ帰ってきた。母は言った。

「ちょっとどこ行ってたの遅いじゃない。」

「日向君を探してたの。」

「何か手がかりは。」

(そんなに彼お金もってなければあてもなくさまよってるかも。夜公園とかにいるかな、でもいくの怖い。)

真澄は神山のいった事を思い出し次の日勝利の家に行き思い立ってポストを探った。しかし辞めた。

(勝手に見るのはまずい。)   

しかし帰ってくると母親は駆け付けた。

「この手紙、日向君から、置手紙!」

真澄は急いで手に取った。そこには時計台の絵と病院があった。

「なんだろ?何かの暗号?」


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