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同窓会の再会

 勝利は心の中で叫んでいた。心には今までの苦しさと閉ざした自分が小さくなっているのが見えた。そのおそらく勝利であろう小さな少年に声をかけたい、半ば自分の世界に入っていた。

(俺だって初心者だけど見えないものと戦う気持ち、熱い気持ちを持っているんだ!俺は勉強ばかりさせられてデートも夜遊びもゆるされず子供の頃から我慢ばかりしてきた。だから東山さんだけじゃない。その向こう側にいる何かが敵であり目標なんだ。)

小宮が言った。

「抑えつけてきた日向君の気持ちがいま弾けている!」


 しかしその勝利をようしゃなく冷酷なパンチが襲った。顔やボディに東山の拳がドスンドスンと情けなく突き刺さる。しかし苦しみながら勝利は変な恩恵の様な感情を東山に抱いていた。それも勝利の人柄なのかもしれない。

(東山さん、俺にボクシングの冷酷さを教えるために。)

またドスとパンチが入った。勝利は痛みをこらえ、気持ちを維持するため必死だった。客席はムードが悪くなった。

「ま、まずいぞありゃ。」

勝利はさっきまでの気持ちを盛り返そうと必死に吠えながらぶつかった。しかし突進した直後カウンターが入った。戸田は思った。

「彼の熱い気持ちを冷たいパンチで封じてるみたいだ。」

 

東山は挑発した。にやりとしながらも太く冷たい声だった。

「どうしたもう終わりか?」

流れる汗が目に入ってかつあざで視界がさえぎられても勝利はこらえた。

「ま、まだっ!」

しかし東山は何となく勝利の気持ちに気づいていた。

「単に気持ちのはけぐちでは相手には、俺には勝てんぞ。」

「はっ!見抜かれてたのか。」

見抜かれていた事で勝利は東山との実力の差を知った。

(たぶん何となくの表情とかで俺の事がわかるんだ事情を知らなくても。東山さんは俺には元々勝てない相手だ。だけど今の俺の心をもやしつくしてやる。)

勝利は必死でパンチをよけた。客席はどよめいた。

「よ、よけた!」

「やるな日向!」

しかし東山は動揺しなかった。

「甘い!」

「ぐっ!」

 勝利のはらにボディが入った。

「少しはやるようだがまだ全然だ降参しろ、もう。」


 東山は冷酷に言った。見下し少しだけは認めているような気持だった。しかし勝利は足ががくがくになりながらふんばった。上体も折れそうだった。最後の意地を見せたかった。

(椿が見てるんだ。)

真澄の方をちらりと見ると目があった。真澄ははっとした。

「日向君、私の事を意識して?」

真澄は涙がにじんできた。必死にたたかった自分の頑張りを理解し答えようと言う気持ちが伝わったからだった。

「頑張れっ!日向君!」

真澄は声をあげ応援した。勝利のパンチが当たった。

「当たった!」

「いいぞ日向!」

さらに勝利は攻めた。最後の力をふりしぼった。ラッシュと言う表現がふさわしい。

「いけいけ!」

はけ口、東山に勝ちたい、そして真澄に答えたかった。しかし東山の冷酷なパンチが襲った。ついに致命だをくった。戸田はさけんだ

「あと、20秒耐えるんだ!」

勝利は倒れなかった。

「くっ耐えたぞ!」

最後のぼろぼろの身体で耐え、ダウンしたがカウント8で立った。


 光子は都内の会館で開かれる高校の同窓会に来ていた。しかし入り口ではさすがに戸惑っていた。無理もない、不安の種は電話の相手優馬の事だった。

(どういおう今の自分の事。話したいような話したくないような)

生来のおとなしい性格が躊躇させたが一方大士が怒るのを承知でここまで来た。あそびや付き合いを許さない大士や姑に反抗したい、やっと少しだけ反抗できた。

「馬鹿だねあんたはほんとに!」

「あんたが嫁としてそそうがないように同居してみはってるんだよ。」

姑の罵声を思い出した。

(あの女・・それもあるだろうけど大士さんから離れられないだけでしょ・・)

そう思いながらも意を決して中に入り、1階奥の桜の間に行った。するとクラス全員ではないが15人くらいが集まっていた。面影のある者、大分変わった者。そこへ男性が声をかけた。

「日向さん、久しぶり!」

「ああ、ええと。」


 自分の事がすぐわかった男性が凄いと思ったが光子はだれかわからなかった。

「は、はい。」

とだれ?と言うのは失礼と思い笑顔で返した。自分は大人しくそんなにめだたない方であった、だからそんなに覚えられていないと思っていたが嬉しかったしかし距離も感じた。結婚してからは遊びを許されず旧友と疎遠になった事を。光子は他の人間が自由な人生を送れているように見え少しうらやましかった。そこで部屋の先を見ると優馬が男性たちと話している。優馬は40をすぎていても30代にしか見えない、中年太りなどなくスマートで足も長く、スーツが良く似合っていた。際立ってもてそうであった。そこで偶然目があった。優馬は来た

「ああ、優馬さん。」

会えてうれしいのかよくわからない気持ちだった。優馬は

「日向さん、卒業式以来だね。」

「えっ?ええ!」

本当はそうでないが実は交際していたのは他の人間は知らないので伏せようとしたのを察した。他の人の輪に入った。

「私は大人しかったからあまり付き合いがなくて・・」

「うーん、連絡してもあまり来ないわね光子。」

「旦那さんが厳しいそうね。遊びを許してくれないって。」

友人の1人が言うと少し空気あ重くなった。男性1人はフォローした。

「まあ、今日は楽しい日だから。ぶしつけな話はやめよう。色々話そう。」


 そして懇談後優馬と2人きりになる時が来た。

「女の子たち大分変わったわね。私はどうかわからないけど。」

「君は変わってないよ。」

「えっ・・」

その言葉に意味を光子は感じた。切り返そうとした。

「そんな事言って、奥さんや恋人が怒るわよ。」

「僕は結婚してない、いや恋愛も。」

「えっ?あれ以来。」

「うん・・」

「優馬さんって若く見えるわね。他の男性よりずっと。」

「多分恋愛をしてないからだと思う。」

「恋愛をしてないの・・?」

「うん、その、日向が忘れられなくて、他の人を探さなかった。」

「・・・」

「今どうなの?幸せかい?」

幸せかと言うのがとても重い問いだったしかし心から優馬は心配しているようだった。それに答えたい気持ちもあった。

「つらいわ。」

「今の生活ってご主人とはうまく・・」

「ええ。」

「一回どこかで会って話さないか?大分疲れているように見える。」

「で、でも・・」

「今今日ここに来ただけでもすごく良かったと思う。」

「うん、遊びもろくに許されていないの。妻は大人しくしてろって主人や姑が。」

「大変だったんだな・・」

「・・・」

「やっぱり今のままじゃ苦しすぎるんじゃ・・顔にもそれが出てる。」

「・・・」

「何とかして出ないと、出来れば僕が救いたい。たとえ君のご主人とトラブルになっても。」

「なぜ?」

「それは今でも君の事が・・」

「大丈夫私離婚はしないわ。」

「大丈夫なはずないだろう」

少し優馬は必死になった。その気持ちがつたわり光子は辛かった。優馬は切り出した。

「会が終わったらその辺を歩こう。」


 2人は近くを歩いた。光子は思い出した。

「そういえばこの近くの橋じゃなかった?あなたが告白したの。」

「そうだったあれから本当にろくに女性と付き合おうとしなくなった。」

「本当?」

「君に逢いたかった。」

「まだ気持ちは続いてたの。」

「君以上の人はいなかったそれ以上に過去の君を裏切っているようで恋をしなかった。」

光子は優馬の一途さに驚いた。さらに優馬は必死になった。

「今つらいのか。だったら助けたい君を。今の状況から。」

「あなたにもわかるの?」

「わからないけどわかりたい。」

「離婚はしないわ。」

「なぜ?」

「高校2年の息子がいるからよ。」

「子供の為離婚しないのは間違った考えだ。」

「・・・」

2人はいつの間にかいいムードになった。そして優馬は光子を抱き寄せキスをした。 



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