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見え始めた粗

 東山は注意深く経験者の目で勝利の目や動きを見ていった。すると東山の素質及び経験者の眼力で色々な面が見えてきた。

「確かに切れがまし、無駄な動きとエネルギーロスがなくなっている。どういう事だ、まるでさっきの試合から何度も経験をつんだようだ。」


 そんなことを東山が考えているとはしらず、前の試合より体調が良くエネルギーに満ち溢れた自分に出来る事をしようという気持ちで勝利は挑んでいた。

しかし一見生き生きして隙がなくなったようでも経験者の目からみるとそうではなかった。

「少し動きに慣れていない感がある。無理をして速く動こうとしている感じもするし、まだまだ無駄があるしその時によって動きの速さに誤差がある。」


 東山はジャブを打たず防御を固めた。それは不気味な雰囲気を感じさせた。何らかの思惑があるようだった。しかし勝利は夢中で東山の戦い方が変わったのに気付かなかったが客席は気づいていた。

「なんか打たず防御してるよ。」

「あまり迂闊に攻め込まない方がいいんじゃ。」

しかしそんなことはしらず勝利は自分のペースで攻めた。しかし東山は何かに気づいたようだった。

(やはりな・・)

ボクシング部員たちは敏感に気づいた。

「東山ってやつ何かに気づいたみたいにみえる。」


 勝利は普通に攻めていたが勝利の動きや目をじっと見ていた東山は思った。それは素人にはわかりにくいことだった。

(やはりそうだ。こいつは「楽しみ」でボクシングをやっている・・)

続く勝利の攻撃を東山はかわして見せたが勝利は体調が良いため気がつかなかった。戸田は言った。

「何か不穏な空気。」

東山は思ったしかし勝利には悟られない様に表情の演技をした。

(楽しみでボクシングをやるか・・やはりまだ初心者だな。才能は感じるが。)

勝利のジャブをまた東山はかわしたが勝利は何も気づかないようだった。客席は空気を感じ取った。

「なんかいやな雰囲気だな。」

「おーい日向うかつに攻め込むな。」


 しかし勝利には聞こえていなかった。一方で東山は確信した。

(こいつは技術のことじゃなくボクシングを何もしらない・・!)

また東山は勝利のパンチをよけた。そして思った。

(そして怖さもしらないだろう・・!)

勝利は東山が攻めて来ない事にしびれをきらし始めた。

(何故攻めて来ないんだ。)

「日向、挑発にはのるな。」

戸田は檄をとばした。しかし勝利はかっとなった。これが彼の意外に猪突猛進な一面である

(馬鹿にしてるみたいだ!)

 

勝利は思わず勢いよく前に出てパンチをしたがこれもかわされた。冷静でしかしわざと大げさによけているようだった。らちがあかないと判断した勝利は猛然と自信に満ちたしかし過信ともいえる勢いで突っ込んだ。しかし東山は思った。勝利が感情的になって戦い方が変わっても動じなかった。

(こいつは調子ついてる。こいつには勢いづく悪い癖がある。気づいてないようだが。)

勝利は東山の思惑どおり「うおお!」と言いながら突っ込みボディブローを打った。観客は勝利が得意とする技なので歓声があがった。しかし難なくブロックされた。がっちりとした鉄壁の防御だった。それはふせがれた相手を委縮させるのに十分だった。

客席は冷え、勝利も動揺した。しかし当たらなかった屈辱からもう一発放って見せた。しかし東山はこれをブロックなしで腹で受け止めた。まるで違う材質でボディが出来ているようだった。この行為に勝利は驚き小さな恐怖が生まれた。それは狙いが分からない事と東山の身体の強靭さからだった。

「うっ!」

勝利は1発目よりさらに動揺しかつ戦慄と小さな恐怖を覚えた。勝利の自信は30%ほど削減された。その表情の変化を東山は見逃さなかった。

「何だ?自分の得意攻撃を破られたからか?」

さらに思った。

(やはり初心者か、挫折してないな。)

東山はてをくいくいさせて挑発した。

「もっとこい!」

「何!」


 勝利にだけ聞こえる声で東山は挑発した。これにも思わず勝利は乗ってしまった。前に中西がした時とは違う冷酷な何かを企む笑みだった。カンにさわった勝利は大振りのパンチを打って行った。しかし1,2発を東山は避けずに堪えて見せた。顔はのけぞったものの足腰でがっちり耐えて見せた。客席はどよめいた。

「どういう事だあいつよけないぞ。」

もちろん勝利も動揺し息が切れていた。しかし勝利はまた何発もパンチを打ったそれは不安をふりはらうようだった。勝利は自分のパンチがきいていないのか1発ごとに自信を無くし逆に恐怖を感じた。

そして東山の突然様子が変わった。

「パンチってのはこう打つんだ。」

いきなりカウンターが勝利の顔を襲った。冷酷な重い一撃だった。それは勝利が食らった事のない。重く冷たい一撃だった。鉄が飛んでくるようで、気持ちをそぐ一撃だった。


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