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勝利の目覚め

「俺が受けよう。」

勝利は疲れをあまり感じさせることなく試合を受け5分後に開始となった。10分延ばすかの問いには「いい。」と答えた。


 体を整えた勝利はゴングを待った。戸田は

「大丈夫か?」

と聞いたが

「いやこのままで。」

と勝利は答えた。そして東山と向き合い、ゴングはなった。会場は再び歓声に包まれた。勝利は最初から違って見えた。のらりくらりとした前試合と違い戦意が上がって見えていた。東山は様子見とばかりにパンチをシュッシュツと打って行ったが勝利は難なく避けた。

(避けた!)

明らかに勝利の動きは前までと違う。さらに東山はけん制のボディーを打ったが勝利はブロックした。

(何!)


 東山が驚く中勝利は思っていた。

(さっきまでは椿の気持ちを無にしたくないから戦ってたけど、今は違う。自分の為に。自分が好きでやっていて嫌で言えなかった気持ちもぶつけてる。)

(日向君・・)

真澄は祈るように見ていた。


 勝利は一定のリズムでメロディを奏でるようだった。道場破りを倒すというより純粋に試合出来る喜びだった。いまやボクシングに楽しみを感じていた。誰の目から見ても生き生きしており、また葛西戦の負けの借りを返したい気持ちもあったが決して負ではなかった。葛西との試合よりはるかに動きにキレがあり汗をかいても本人には気持ちのいい汗となっていた。それは試合の喜びだった。シュッと小気味よくしかし心と勢いのこもったパンチを打って行った。


 勝利は勢いよく前に出ていった。目が熱く輝きのらくらした前の試合とは違った。パンチを序盤から先制だとばかりきシュっと打って行った。


 東山は意外な強さに動揺し少しだけガードが遅れた。並列的に整理された勝利のパンチが流れるように連打された。ながれるようにかつ直線的に力強く打った。


勝利は感じていた。

(あつい。これがボクシング。今からじゃおそいけど今まで感じた事のない熱い気持ちでこころも吐き出せる。)


「あれだけ激しく戦ったのに。」

「一試合で成長したのか、まるで進化生物だ。」

とボクシング部員は口にした。


動きに切れがあり汗をかいてもそれが気持ちもいいあせとなっていた。また部員は言った。

「あんな動き教えてないぞ。自分で実践で身に付けたのか。」

「さっきまでとは違う。いや確かに日向ではある。しかし別人というより日向のまま変わった。」


シュッシュッと小気味良くしかし心と勢いのこもったパンチを打っていった。

からだが軽く熱い。さっきの試合でぼろぼろに疲れてたのに一回倒れて生きかえったみたいだ。はたから見ても戦意と生気に道溢れていた。東山は動揺した。

「やつが分裂したように見えるいやちがう前の試合のイメージと重なって違うため、目が異常を。パンチが弾丸のように来る早い!そして強い!」


 部員は噂した。

「しかし東山ってやつどのくらい強いんだ。技術はもちろんあの体格。」

 東山のパンチが勝利に当たった。

「おらっ!」

「ぐっ!」

勝利はひるんだ。

「もう一発!」

かいくぐってボディを放った。

「何?」

「もう一発!」

観客は驚いた。1ラウンドで熱い打ち合いになった。

「よけたっ!おおふりだけど。」

観客がどよめく中、東山は動揺した。

「お、おされた。ボディーをどう言うことだ一試合で成長したのか。よく見ている何より精神的に。」

「このくらい!」

2人は序盤と思えないほどばんばんと熱い打ち合いになった。少し東山は戦い方を変えた。

「あいつジャブを多用してきた。」

そして勝利にボディアッパーを食らわせた。これは効いた。

「ぐっ!」

うおおと勝利は雄たけびを上げそうになったが。戸田が

「おさえろ!」

と言った。勝利は反省した。

(あっつい。でもさっききれたときと違って俺はボクシングを好きになってヒートしてる。)

勝利もジャブを積極的に仕掛けた。東山はどういう事だと困惑した。確かに才能ある勝利と戦いたかったのは自分だ。

(こいつは初心者だ。しかし・・動きもきれも何より落ち着きがある。)

試合を楽しみたい気持ちよりも勝利の底力への畏怖が頭をよぎっていた。東山には勝利は生気にみなぎって見えた。

(なぜだ、なぜこんな生き生きとしている。さっき客席から見た姿とは大違いだ。心が明らかに変わっている。)

勝利の目に映るものが東山の心を動かした。

(さっきまでぼろぼろだったのにどうしたこの意気の良さは。そして落ち着きぶり。何度も経験を積んだボクサーの様だ。


部員たちは勝利をほめた。

「初心者の試合じゃないみたいだな。」

「うちの部にほしい逸材だ。」

「練習の成果もだが彼の才能で引き出したんだ。」

勝利はすでにリングを自分の土俵としていた。葛西と戦った時とは違い自分のペースで攻めすぎず引っ込みすぎずスタイルが自分の中で形成されていた。パンチを出すと同じ速さでひっこめる。脇をしめる。足を少ない隙移動する。ボディスウェーの隙を小さくするなど基礎が本能で出来ていた。

「基礎が出来たくらいで!」

「おっと!」

余裕を持って対処した。


シュッシュとパンチを出し挑発した。勝利もそれにのりパンチを出しあい相討ちとなった。さらにまた一発出した。

「ぐおおまた相討ちだ。」




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