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悲しき電話再会と決戦の日

「なぜ俺にそんな事を言うんだ?」


 勝利は感謝の意と共にやや不機嫌で懐疑的な表情をした。


 真澄の真意が計りかねるような顔で言った。


 気持ちはうれしいが、何故個人の問題にそこまで、と言う困惑も感じられた。


 またこの質問は真澄にとって不意であった。返答に窮した。

「…と、友達だから、初めて話しかけてくれたし。」

「俺の家庭問題にそこまで…」


 真澄は何とか理由を言い次に拳を握って見せた。


 勝利を救いたい熱くほとばしる何かがあった。たとえそれが1人よがりの突っ走りであっても。


「友達だからだ。だから僕が力を貸す!」

勝利は疲れていながらも感謝した。

「…ありがとう。」


 勝利は真澄とはなれ寂しさを感じながらも思った。


 真澄の言葉の真意を思い返しまたなぜ今日2人で行こうと誘ったのかと。


(何で男二人でいくなんて言うんだろう、何か目が訴えてるみたいだったけど。椿も心配してくれてるし、俺も頑張らないと)


 真澄は1人で地元のラーメン屋に入った。真澄は母がお金を手渡してくれた事を思い出した。

「これで何か食べなさい」


 その言葉がむなしく思い出され、真澄はカウンターに座りため息をついた。

「まあ、デートじゃないからな。結局1人か」


 真澄は落胆して周りが見えなくなっていた。疲れがすわりどっと出た。

「お客さん、ご注文は?」

甲高い声が聞こえて真澄は一瞬戸惑った。

「あ、醤油ラーメン」


 真澄は割り箸を出したがどこか落ちつかず足が貧乏ゆすり気味だった。本当は勝利と一緒に食べたかった。


 普通のカップルなら今頃そうしているだろう。自分がしがない人間に見えた。

しばらくして注文が来た。


 何度かきた店で味が上手いことは知っているが寂しく食べた。真澄は家に帰った。

「ただいま」


 真澄はうつむき元気なく言った。


 母と顔を合わせづらかった。

母は楽しみに聞いた。勝利とどうなったか聞きたいようだった。

「ご飯は?」


「ごめん1人で食べた」


 母の気持ちに答えられず申し訳なさそうに真澄は答え母は残念そうに弱く答えた。

「そう…」

真澄は服を脱いだ。

「日向君、無事帰ったかな。怒られてないかな」


 勝利は帰っていきなり大士に怒鳴られた。


「馬鹿者! こんな遅くまで遊びに行くとは貴様は受験をなめてるのか! ただでさえ貴様には光子の血が流れた劣っている出来の悪い人間なんだ。トイレ以外外に出るのは許さん!」


 勝利は部屋で机に座り肘をつき心の暗部や深部に触れていた。

(喧嘩っぱやい人やもしくは不良ならとっくに怒ってなぐるかぐれているだろう。俺の自制心って少しおかしいのかもしれない。)


 勝利は真澄から借りた本を読んだ。

「家事のやり方が悪いと怒鳴る男」


「無視したのをせめると暴力を振る」

「子供は自分が悪いと、自分が邪魔者だと思い振る舞う、親の言う事を聞くのが正しいとうそぶく」


「一通り暴力を振るうと謝る男。」

「男がやると言ったんだから黙ってきけという男。」

「離婚する前前の奥さんをまだ愛してるとうそぶく。」


 勝利は階段を下り意を決して母親の所に行った。無我夢中な姿勢がそうさせた。ここまで言えるようになったのは初めてであり無茶でも成長と言えた。


「母さん、離婚しよう」

「何を言ってるの」


 光子は疲れた顔であきらめており、きっぱりとした口調で断った。しかし勝利の勢いは止まらなかった。


「俺は母さんを救うため子供として出来る事を言ってるんだ。それは離婚を手伝う事だ」


 父への憎しみと将来への不安が心を痛くした。


 しかし返答はなく光子は後ろを向いた。


 やがて電話がなった。電話をとり光子は少し驚いた。間が悪そうな顔をして慎重に答えた。

「優馬さん」


 電話の主は光子と違い元気な口調だった。

「この前行った同窓会来ないのか?光子はあまり昔の友達と会わないからどうなってるのかわからないんだ」


「会わないんじゃなくて会えないのよ。主人が許さないの。」

「ご主人と上手くいっていないのか?」


「な、なんとか。」

光子はとりつくろったが優馬の心配口調はさらに強まった。


「ひょっとしたら離婚を考えているのか?」

自分の事を心配してるようで光子は頼もしく感じた。それが不覚だった。

「…」


「とにかく、同窓会ではなそう」

相手の優しく頼もしい口調に安堵している自分に嫌悪も感じ光子は電話を切った。勝利は聞いた。


「誰?」

「…お母さんの昔の恋人よ」

隠しておいても仕方ないと言った風だった。


 次の日の英語の時間で教師は言った。

「テストを返却する」


 皆に順番に返したが、真澄は浮かない顔だった。勝利は聞いた。

「どうだった?」

「64点だよ、うーん」


「俺は72点、うーんだね」


 真澄は思った。

(結構最近の外出が響いたな)


 国木田は少しして真澄の所へ来た。

「この問題集結構良かった。きっと役に立つよ」

「ありがとう」


 真澄は感謝した。勝利の事は抜きに純粋に友人としてだった。

「予備校へは行かず独学で受けるの?」

「うん、だから予想問題とか塾で受験用に作られたテキストや何より教えてくれる先生がいない。あとは赤本頼みかな」


「そうなんだ」

国木田は心配していて真澄は気遣い元気に答えた。

「でも何とか受かりたい」


「頑張って」

優しく微笑む国木田に真澄は同じように笑顔で返した。

「うん」


 西巻は真澄に職員室で聞いた。

「最近どうだ?何せお前が女だと言うのを知ってるのは私だけだからな。」


「それと、国木田さんも」

「言ったのか?」

「いつかは皆に言わなければいけないと思います」

「あまり罪の意識を持ちすぎないようにしよう」


「日向君、君の親に僕が文句を言ってやろう」

真澄は決意と共に肩をいからせ勝利の前に立ち勇猛に言った。


 後へは引かないような気持だったが勝利は意外さだけでなく少しいやな顔をした。

「えっ?」

「僕が言ってやる。言ったろう君を救うためだ」


 さらに真澄は前に出て怒りの表情を勝利に近づけた。


 周りが見えていないようだった。自分しか勝利を救えるのはいないと思い込んでいるようだった。


「あ、ああ。すごく嬉しいよ。でもちょっと考えさせてくれ。俺にもそこまでの勇気があったらなって思う」


「他人の領域に踏み込んでごめん、でもがつーんと言ってやれば?自信持った方がいいよ。腕力は君の方が上だ」

少し勝利が大人しいのを責める言い方だった。勝利は自信について見つめなおそうとした。


 ボクシング部の練習に勝利たちが参加し追い込みがかかっていた。戸田は練習中に言った


「試合まであと3日」

戸田はそんなにプレッシャーを感じていなかった。明石もそんなに緊張せず言った。


「ま、気楽にやれ」

「ひどいなあ」


 冗談ぽくかえした勝利に明石は今度は真面目に言った。

「やっぱり君は高1からボクシングをやった方が良かったと思う」


「うん、俺もそう思う。生きる力や切り開く力が沸いてきたと思う」


 勝利も相手の意をくみ真面目に言った。

「相手はプロを目指してるし、負けるよねそりゃ。ただ葛西さんと試合出来るの嬉しい」


 その頃新聞部が校内で勢いよく新聞を配っていた。

「道場破り対仮ボクシング部葛西対椿」と言うタイトルだった。女生徒たちはうわさしていた。


「葛西ってどんな人?」

「椿君があんな細い体でやるの?」


 男子生徒たちが言った。

「大会は3時から!」

「椿、大丈夫か?」

「うん」


 そしてついに試合の日が来た。体育館にリングが設営され観客の生徒たちが集まってきた。垂れ幕も貼られていた。前回と同じ湧き方だった。

「椿って強いのか?」

「椿が出るのが前回との違いだよな。」


 噂をよそに真澄はグローブをつけスタンバイした。葛西はどこかにいるのかと皆気にしていた。

「では葛西選手の入場です!」


 少し大げさに入場は演出された。


 葛西はアルバイトの時と全く違うにらみ顔で入ってきた。試合に餓えた獣のようだった。


 そしてスタンバイしていた真澄の入場になった。アナウンス後からだの前で手を合わせこわごわ入ってきた。

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