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男としてやるべき事と母親同士の会合

 極寒の寒さの中最近アルバイトを辞めた真澄は直近で帰宅した。


 帰り道息は白く手をこすって暖めた。


 帰ってきて扉を閉め寝ている母に話しかけた。

「ただいま、あーさむさむ。外は寒い。練習してる時は暑いんだけど」

「ボクシングなんかやって…大丈夫なの?本当に」


「しょうがないわ。前回は他の人に出てもらったし。ここでやらなければ男じゃないって思われちゃうから。やっぱりお互いに助けあうのが男じゃない」


 真澄は決意を母に聞かせた。切っておいた野菜をだし汁に入れ温めた。母はこれまでの事を思い返した。


「やっぱり無理だったんじゃないの男のふりなんて」

「それはいいっこなしよ」


 真澄は雰囲気を遮断した。

「でも演技をしたり男ぶったりつらいでしょ」


 真澄は努めて心配をかけないように疲れた顔で取り繕った。


「好きでやってる部分もあるから。自分が気がつかないけど人が見てる仕草とか、自然じゃないといけないから他の人がみても。でも最近気まずさや皆への申し訳なさが前に出ちゃって結構悩んでるんだよね。みんなすごくいい人達だから」


「今からでも皆さんに言えば?」

「うん考えてる。いつか言わなきゃいけないし転校も考えるよ」


 真澄は食事が終わり立ち上がり数発ボクシングのパンチを打って見せた。

「私のパンチどうかな」


 自信半分照れ半分といった感じだった。

「私ボクシングTVでしか見ないけど男の人に比べて弱いわよ」

「私が負けると控えの人に迷惑かかっちゃうから」


 翌日国木田は皆がいないところで勝利に言った。

「この前はありがとう」


 最近妙に態度が違う、笑顔にしても雰囲気が違うのを勝利は半分くらいしか気づいていなかった。


「あ、ああ」

「皆のまえだとちょっと言いにくくて。またどこか行こう。こないだ買った服着ていくわ」

去る後ろ姿もどこかしら意味ありげだった。


放課後のボクシング部の練習で真澄は明石の前でパンチを打った。明石は腕を組み考えた。


「早いけど軽いんだよな。何かうーん」

勝利は

「重さってウェイトを上げればつくんですか?」

と聞くと明石は答えた。


「いや、生まれつき差があるらしい。力と言うか才能というか」

真澄は少し気にしていた。


 終わってから真澄は道具を片づけ校庭の端で言った。


「あーあ陸上とは勝手が違うのかな、昔は将来を期待されたんだけど。カンガルーのような足だった。僕のパンチ受けててどうだった?」


「そうだね、少し軽く感じた」

真澄は少し傷ついているのを隠すように楽天的なふるまいをした。

「陸上部の頃は校庭を何十周も走ったり周りも走った。毎日走り込みやった。試合にも出たよ」


「何学校だっけ?」

「磯浜中。」


「選手名簿とか見とくわ」

「あ、いやいい」


「足の筋肉しなやかそうだけど、カンガルーの足って言われてたんだ。背筋は?」


「100kgぐらいだったかな。高跳びはジャンプするだけじゃなく体のしなりが必要なんだよね。でも腕は弱いのかな。腕立てもやってたけど腕を使う競技はあまりやってない」


「俺椿が初めてバレーボールやってた時腰に力入ってると思った。」


「バレーボールは腰を鍛えたのが生きた。でもボクシングは違う。腕力ないとだめでしょ。あと明石君の言った重いパンチの才能。最近重いもの運ぶ仕事やってないし。それに・・それ以前にリングで人と向き合うのこわいんだよ。人と殴りあうのは」


「喧嘩とかは?」

「ぜんぜん」


「ただ足腰はいろんなスポーツの基本だから土台が出来てるんじゃないかと思う。得意な事を伸ばして生かせれば」


 勝利は少し落ち込んでいる真澄を気遣った。

「じゃあ足のばねを生かせればもう少し強くなるかな」


「うん、ただ女子たちみんな椿の汗かいたりはあはあ言ってんのすごくキレイだって言ってた。男でキレイって言われるのうらやましいよ。みんなスポーツマンって汗臭いイメージじゃない」

「そ、そんなことないよ。すぐ息を切らすだけ」


 勝利は帰宅後母に言った。わざわざ座って神妙な顔で話した。なんとなく光子は聞きたくなさそうだった。


「友達にシングルマザーの息子がいるんだ。離婚して2人暮らし。家はそうしないの?」

疲れ切ったうつむき顔で光子は答えた。


「別に私は問題ない。お父さんを愛してるわ」


 その言い方には説得力が感じられずあきらめている感じだった。勝利はもっと真剣に聞いてくれるよう話した。


「だからそう思おうとしてるだけだって。専業主婦でDVを受けている人は自立心に欠けていて依存心が強いんだって。だから旦那が支配者になってる。自立心が足りないと相手に付け込まれるらしいんだ」


 勝利がいなくなり光子は言った。

「離婚する度胸がないのがくやしい。殴る男から生活費をもらう。私は昔の女、ただ男に従っている。情けないけど。勝利を私1人では育てられない。」


 次に日勝利は学校で真澄に言った。かなり疲れている。収穫がなかったと言う表情だった。


「昨日シングルマザーの事母さんに話した」

真澄は何とか励まそうとした。


 真澄の母の考えや生き方が光子にもつたわってほしいと言う願いだった。


「私の母は昔から自立心強かったよ。男性にたよらないって言うし。」

「そういう人は悪い人に引っかからない。」


 変に勝利の言い方はクールだった。それはわかっていても光子には出来ないのが問題なんだと言いたげだった。その様子を真澄は察した。


「こんどうちの母と4人で会わない?」

意外な提案に少し勝利は驚いていた。


「母さんと日向君のお母さんを会わせたい」

かなり真澄は力の入った言い方をし勝利も受け止めた。


「うん、母さんにとっていいと思う。俺から見ても俺はバイト辞めて最近してなくて、何か躊躇してる。こないだ父に反対されたけどそれだけじゃなくて」

「何か珍しいね。弱音吐くのって」


 軽蔑ではなく心配して真澄は言った。

「最近色々あって自分に自信がないんだ」

「多分親との関係のせいじゃない?まだ門限あるの?」

「この前は行ったけど」


「え?」

「あっいやなんでもない」

そこへ国木田が来た。

「日向君? あっごめん後でいいわ」


 真澄は夜トレーニングで家の近くを走っていた。


(これでいいんだ。私が出来るのは男として試合に出る事。でも最近何か国木田さんと仲いいな。日向君の事は別にどうとも思ってないし2人がどうなってもいいけど)


 真澄は翌日勝利と国木田が話すのをさびしそうに見ていた。








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