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意外なる立候補

 勝利は夜またノートに気持ちを書いていた。

(自分で考えるより専門家にいう方がいいのか。)

と言う迷いもあったがとにかく書き始めた。

「子供の頃から嫌な事を「するべき。」と親に押し付けられ嫌だと言うとき「しなければならない」ともいわれた。それは親にとって「子供のため」ではなく「親のため」であり都合よくコントロールするためであり、また父は酒はあまり飲まないが母に暴言を吐き母は聖人のように耐えたが徐々に子供に不満をぶつけるようになった。またDVを間近でみた子供は心の傷と恐怖に支配されるらしい。摂食障害になる事もあるらしい。」

さらに

「別れないのがおかしい。でもそれは母が我慢すべきと父がコントロールしてるからなんだ。そして俺も父が死ねば自分が生活出来なくなると思ってるんだ。嫌な人間だ。」

「大事なのはなぜ、そうするか、そうなったのか、考える事なんだ。臨床心理士目指そうかな。」

等と自分なりに分析した気持ちを箇条書きの様に書き綴った。前よりも「行動や思考の理由」が分析して書けてきたと思えた。


 次の日休み時間に勝利は真澄と国木田に色々相談した。真澄はかなり心配している様子だった。

「誰か助けてくれる人いないの?親戚とか第3者的に。」

「いないんだ。俺が母さんを庇って逃げるか父ちゃんをなぐるかしなきゃいけないって思ってたけど出来なかった。コントロールされてたのかもしれない。子供の頃から逆らわないように。」

勝利の答え方はあきらめがあり脱力感があった。国木田は理由を素人なりに冷静に考えて見せた。勝利の親のずるさも指摘して見せた。

「男の子だと体が大きくなるから反抗期を恐れてたのかも。」

更に真澄が自分を大事にするよう促した。彼が押しつぶされるのではと懸念していた。何せ三山に病気の重さを聞いたばかりだ。少なくともクラスの中では自分が一番知っていると言う自負があった。

「日向君真面目で責任感強すぎるんじゃない?お母さんを救うのは自分しかいないとか。」

しかし勝利はそれを理解した上での行動である事を知っていた。

「俺意外に出来る人がいない。たぶん親を殴れないのは逆らうのは怖いと植え付けられたからなんだ。」

国木田は抑えながら少し勝利の父への怒りを口にした。

「お父さんは日向君とお母さんの両方を支配してるんだね。」

真澄も呆れと怒りがまじった調子で続いた。

「で、お母さんは恋愛をするなって言うんでしょ。」

そこへ明石が教室の前にふいに来た。


 明石は珍しく低姿勢だった。言いにくそうな顔をしている。

「あ、あの日向…あの葛西って道場破りの相手をしてくれないか。」

「え?」

更に腰を低くした。

「負けてもいいから折り入ってのたのみ。部員はみなスケジュールが狂うと困るんだ。」

「あ、はい・・・」

そこへ真澄が来た。

「僕が出ます。」

「えっ!」

明石はかなり驚いたが真澄は勢いよく話した。

「こないだは皆に助けてもらって申し訳なかった。だから恩返しがしたいんだ。」

しかしそこへ戸田が来た。

「俺が出るよ。自分を取り戻したいんだ。それにこの前は椿君のためだけじゃない。自分でしようと思ったんだ。」

「ありがとう。でも僕はやる。恩返しがしたいんだ。」

「よし俺も練習する。」

と勝利も言った。真澄は説明した。

「僕は今バイト辞めて少し余裕ができた。僕がまず1番に出て勝って二人の負担を減らす。」

戸田は

「じゃあ、まず椿君が相手をして俺たちはひかえで。」

明石は3人を誘った。

「じゃあ、3人とも俺たちの練習に加わってくれ。」


 光子は悪い夢を見ていた。姑が複数に分裂し襲いかかってくる夢だった。それをナイフでふりはらった。


 光子は目を覚ました。独り言と思えないほど、誰かにぶつけるような憎しみと怨念のこもった吐き出し方だった。同時に聞いてくれる人が今までいなかった悲しみもあった。それは毎日姑の世話をしながらまるで部外者の様に扱われ、褒められることもなく人格を否定された積年の憎しみだった。

「勝利が何かで失敗したり悪い事をすると姑は私が産んだせいだ、悪い血が混じってる、なぜ大士の優秀な遺伝子を引き継がないんだと嫌味をいい続けた…エゴで産んだとか悪意で産んだとか。あの女に怒らず忍従出来る女は私しかいない。勝利を愛してるのに赤の他人に言われる覚えは!」

今まで誰かに相談しようとも「そんなに悪くないんじゃないか。」と言われ理解されなかったり関わりたくないと思われたり、友人と会う事さえ許されなかった悔しさを震えや涙と共に吐いた。

光子は大士を愛していると言って譲らなかったがかばってくれた事がない事に憎しみを燃やしている事に気づいてはいなかった。

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