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学級委員工作と進藤の過去

 英語の授業中、教師と生徒が入れ替わり文を訳していたが、ちょうど難しい部分だが訳してもらう事になった。

「では進藤。」

「はい。」


 進藤は立ってテキストを持ち堂々と和訳した。

「夜の灯のさす街路を彼はあるいたが、止めてあった外国車を見て彼は自動車産業の衰退を想像し、ひいては世界経済全体の事も懸念した。」


 教室は静まり返り先生は驚いた。こんな驚いた表情は普段あまりない。

「す、すごい! 完璧な訳だ! 良く出来たな!」

教室には拍手が起きた。進藤は悪い気はしなかった。


(風と言う物は選ばれた者にふくものだ)

進藤は鼻高々で威風堂々と言う感じで、襟を正した。体に自分に向かって吹く風を受けている気分だった。


 次に学級会の時間が来た。先生は進藤を呼んだ。何となく全幅の信頼を彼に持ちかけている様相だった。ぜひ任せたいと言う言い方であった。


「じゃあ、司会やってくれ」

「はい」


 進藤は堂々かつゆっくりと教壇の後ろに来た。ゆっくり歩いているのは頼りにされている気持ちの良さを悟られない為の演技だった。


 丁寧かつしっかりと机の端を両手でつかみかつ前のめりになりすぎないようにした。進藤は1呼吸してから話し始めた。


 目は自信を抑えていながらも教室を羨望し自分の立場に満足してるのが見て取れた。

「皆さん、今日は僕が委員になってから初めての司会ですが、今日はぼくからアイデアを出させてください。」

 

 えっ何、と言う空気だった。

「僕の中学時代の経験ですが、こういった意見を言い合う場所で大人しい人は意見が言えない事があります。そのため筆記で意見を集める事を考えたいと思います。もちろん挙手も大事ですのでその両方をしたいと思います」


 皆はっとしふーんと感心していた。しかし勝利はどこか遠くを見ていた。それを進藤は気づいていた。

「あいつめ、無関心そうに!」


「そうだ、それなら普段挙手で意見を言えない人の意見も集められる」


皆の反応は上々だった。しかし窓際の席に座る古河と言う少年はぶすっとしていた。いつもぶすっと苦虫をかみつぶした顔をし背は低く顔も角ばった少年である。派手な感じはない。進藤は古河が気になったが、


「先生、どうでしょう?」

「いいんじゃないか?意見が増えて」


西巻は良い意見だと感じていた。しかし古河は無愛想でそっぽを向いておりいつもだが自己主張をしない。あえて進藤は聞いた。古河はようやく向き直った。


「古河君、何か意見は?」

「おれ別にいいよ。」


教室の空気が悪くなり進藤は唇を噛んだ。暗く物質的な物言いであるがしかし反対だと言う格個たる意思もも見えた。進藤の案に納得できない様子だった。


古河はいった。

「だって今は受験でみんないそがしいでしょ。そんなこと考えてられないよ」


無愛想で淡々とした答えだった。しかしある意味正論だと言う空気も感じられた。微妙に風向きが変わるのを進藤は感じ取っていた。進藤は1呼吸おきあえて微笑んだ。


余裕を見せたかったためだった。

「まあ、後で」

進藤はここで感情的になるのは良くないと思っていた。


 学級会後生徒たちは口々に噂した。

「すごいな進藤」

しかし別の生徒は


「そうかな、おれ、何かあいつのやり方へんに感じるよ」

さらに近くにいた1人が同意した。


「俺もなんか……うまく説明できないけど。ひっかかるような」

「少しペースが自分中心。」


悪意と言うよりも進藤の狙いが分からない、不穏だと言う口ぶりだった。


この会話は進藤に聞こえ、反対意見があった事にかちんときて目をそらした。


進藤は考えた。

(今、噂が聞こえたんだけど、今だけでも反対が2人いた。何が悪かったんだろうな。しかし僕は必ずこのクラスを進藤ワールドとする。そして日向勝利は僕に勝てず絶望する)



 休み時間進藤は大泉に意見を聞きに行った。

「大泉さん、今日の僕はどうだった?」


好反応が得られると思い進藤は内心ドキドキしていた。それにこたえるように大泉は拍手も交え満面の笑顔で迎えた。


「最高よ。特に今までで」

進藤は照れと自信の混じった態度で答えた。いわゆる女性からすると安いプライドと軽蔑される類である。

「しかし古河君が」


「ああ、彼いつもポーカーフェイスだから」

「今後も良きパートナーとしてよろしく。」


少しだけ自信を増した様に大泉には見えた。明らかに自分の立場が上がっているかのような言い方に聞こえた。

「ええ」


大泉はいなくなると笑顔から嘲笑に変わった。

(ただのバカのくせに……いくら私と過去が似ているからと言って合うと思ってるのよね)


 その様子を国木田と神谷は見ていた。2人は横目でちらちら見た。国木田は盗み聞きにならないようにしたがなんとなく良い話でなさそうなため懸念した。


「ねえ、何話してるのかなあの2人」

「次に何の企画をやるかとかじゃない?どうしたらクラスの支持を得られるかとか」


国木田は「人の操り方」のエピソード例を気になって見せた。

「これ「1流の男をビッグに育てそこから転落させる魔性の女」の話なんだけど。これって今の進藤君と大泉さんの関係に似てるわ。もしかして大泉さんは進藤君を持ち上げてそこから転落させるつもりなのかも」


「・・悪質だな。あの2人だけの話なのか他の人へも影響を及ぼす話なのか。」

神山はもう少し探る必要があると思っていた。


 さらに次の学級会で進藤は発言した。前にもまして声が大きく堂々としていた。

「え-っ、成績が思わしくなかった人の為、外部講師を呼んで補習をすると言うのはどうでしょう。」


ええと言う声が挙がった。先生は

「経費などの問題がいっぱいあるからな。検討意見にしておこう。」


「椿君」

「はい」

進藤はおもむろに真澄の所へ行った。

「君とはあまり話す機会がなかった」


その雰囲気は興味はあるが何かを探りかつプレッシャーをかけていくようだった。目は温厚なようで顔、全身から威圧感を感じた。

「そ、そうだね」


少し真澄は焦ったが進藤は強引だった。

「どうかな、このクラスは?」

少し笑顔になり真澄は答えた。

「うん、最高だよ。みんないい人だ」


答えを聞いて進藤は好印象を持った。

「そうか、これからもっとよくする努力をするよ。」


そして隣の勝利の所に行き、今度は冷たい顔で言った。

「君には負けない」

「はあ?」

寝ていたのを起こされたような気分だった。


 また次の日学級会があった。進藤が

「何かありませんか?」

と聞くと大泉が勢いよく手を挙げた。

「支持率投票やりませんか? 学級委員の?」

「えっ・・」


教室はどよめいた。

「まず、今の学級委員に賛成か反対かを書いた紙を皆が1枚づつ出すの。見れるのは委員だけ、で計算して支持率を調べて低かったら辞任するの。」

「え・・?」


質問が飛んだ。

「名前は書くんですか?」

「匿名でいいわ」


 結局この案は数日後実施された。クラス全員が票をいれたボックスを進藤は回収した。票の全対数と賛成反対を集めると支持率が67%だった。

(微妙だな……)


 また学級会が開かれ、進藤は司会をやり案を出した。

「今日は僕の案なんですが、このクラスには家の経済が苦しく苦労をしている人がいます。そのため僕達から少しずつ募金を募るのはどうでしょう?」


この案にはクラスがどよめいた。

(もしかして椿の事?)

(どうしてデリカシーのない事言うかな。)

神山が手を挙げた。


「おれは反対だ。上から目線で金持ちが貧しい人に恵んでやると言う風に聞こえる」


また意見が挙がった。

「おれもそう思う」


さらに古河が言った。

「君は人を見下している」


皆が噂し始めた。

(なんかまずくない?)

教室は明らかに「進藤ってやな奴」の雰囲気に包まれていた。これを感じ取った進藤は汗をかいた。


 また大泉は人のいないところでほくそ笑んだ。

「くっくっく・・もう少しで彼はクラスの笑いものになるわ。元々あんなプライドばかりの男が何が将来はあたしとよ。冗談じゃないわ。あんたに消えてほしいからやってるのよ」


足を組みふてぶてしく言う様は女王と言う言い方がふさわしかった。


 翌日どたばたと急に進藤が勝利の所へ来た。目の色が変わり冷静さをなくしていた。

「日向、君は両親に女との交際を禁止されているのか」

「ああ」


「くっ・・たとえ君が恋愛禁止された男であっても負けない! 僕は怒る事を禁じられた男を尊敬して生きて来たんだ?」

「は?」

「じゃあこれから勝負だ」


いつもの冷静さはなく完全に取り乱し姿にあっけらかんとしていたが、同時に言葉が心に残った。


「怒るのを禁止された男? を尊敬していた? 誰?何の事なんだ。」

元々進藤の事はあまり相手にしていなかったが勝利は妙に心にしこりが残った。



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