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2人の陰謀と操る関係

 進藤は休み時間も勉強していた。しかし、机の前にだけ集中しているふりをし、周りからどう見られているかに気を配っていた。


 耳も周囲の噂を細かくキャッチしていたが、彼は自意識過剰な部分があり聞こえてない事を聞こえたと勘違いしたり、自分の事だと思う部分があった。


「さすが勉強熱心だな」

「それに最近は積極的だし」


最近は皆の面倒見が良くなった進藤だが、勉強している時は前と同じペースを保とうとした。


 彼は人に知られないよう内心思っていた。

(あまり目立ち過ぎると意図的に皆に親切にしていると思われる。まずは自分の事に集中するのをおろそかにしてはいけない。しかし、日向なんかがなぜ目立つんだ、何故皆や先生は誉めるんだ。そして女にもちやほやされるんだ。だが僕は必ず勝ってやる。あんなやつに負けない。ボクシングはできないが。あいつだって大した事ないだろう。)


 その様子を大泉蘭子はにやりと思惑通りというような表情でみた。

(ふふ、いいペースね。日向勝利にすっかり目が向いて気が行っている)


 返す刀で真澄の方を見るとばったり目があい、気まずくなった真澄は目を反らした。大泉の鋭い目に射抜かれ目を合わせる事は出来なかった。


 進藤はふいに勝利の席に来て友好的に話しかけた。へりくだった雰囲気だった。


「日向君この前の試合、凄かったよ。皆もすごいと言っていた。君がすごいやつだからだ」

勝利は照れながら

「いや、それほどでもないよ」


「また、君の熱い戦いがみたい」

「ああ、もう試合には出ないんだけどね。毎日部活やってる人の方が偉いと思うよ」

勝利は進藤の内心に気づかず額面通り受け取っていた。


 次の授業で勝利は当てられたが答えられず進藤が当てられるとすらすら答えた。

「あれ?ノートに書いておいたのに消えてる」


 強い筆圧の後を消しゴムできれいに消した跡があるのを忘れなかった。


 真澄は

「本当だ、強くシャーペンで書いたのを消したあとがある」

しかし真澄はそれ以上は気にしなかった。しかし何か不穏な影を残した。


 冷静冷徹に、かつ笑みを浮かべながら進藤は大泉に言った。実は彼の内心には自信や対抗心だけでなく大泉に認められたい気持ちがあった。本人はそれを見せないつもりでも。


「大泉さん、段々よい方向に風が吹いてきた。偽善でクラスの人気を獲得した彼より僕の方が上だと証明される時がいずれ来るだろう」


 大泉は年齢以上の色気や魔性さえ感じさせる薄くかつ柔和なまなざしで彼を見つめ、かつ包容力を持った言い方をした。進藤の頬や髪をゆっくりと撫でた。

「進藤君ならきっとできるわ。前からあなたが一番だと思っていたし」


大泉に生暖かく鼓舞され進藤は顔がでれるのを必死に抑え毅然とふるまった。しかし大泉は彼が無理しているのをにやりとしながら見破っていた。


(上昇志向とプライドゆえに持ち上げやすい男ね。一番大事な事も忘れて気がつかない癖に)

進藤はでれないようきりっとした態度で言った。


「毎日こつこつやるのも大事だが、僕は今後のシナリオを既に考えている」

それを聞いた大泉はわからないよう微笑みながら受け止めた。

「楽しみね。私も協力するために色々考えるわ」


 そのころ勝利は休み時間を半分だけ勉強し半分休んだ。

(ペースを守ろう。何か最近は進藤すごいけど。別に関係ないし。本にも書いてあったけど、悩みがある人は必要以上に頑張ると潰れるらしい。ほどほどにしとこ)


国木田は少し不安げに真澄に話しかけた。

「さっき大泉さんに言われたの、「椿君って最近仕草が前より女の子っぽい。」って。何か気にしてるみたいで。今度話したいって言ってた。」


 少し不安げに椿は答えた。

「僕と話?」


 椿は大泉の事はもちろん知っていたが、特に意識して見ているわけではなかった。


 それよりも神山に疑われたり乾に脅されたり、それらが気になり他の人が自分をどう見ているかに鈍感だった事を恥じた。


 国木田は自分のノートを読んだ。

「私は不正が許せない人間だ。大人になってからではなく、今のうちから徹底的に不正をしている人をさばく」


 周りに人がいない所でノートを読み上げた。その後真澄に説明した。

「これ、大泉さんが学級委員だった時、不正についてどう思うか、っていうテーマで書き上げた作文、文書内容だけじゃなくてすごく話し方に迫力があったわ」


 皮肉より尊敬の念をこめて真澄が聞いた。

「生まれつき正義感強い人なのかな」


 国木田は思い出すように間をおいた。

「前はもっとおおらかな感じだったと思う。だけど学級委員の任期がきれる頃から何か怖い感じになったわ。周りをいつも見渡してる感じで」

「その頃に何かあったのかな」

「それが、わからない。あの人いつも自分で抱えこむから。あっ、そう言えば小宮先生によく相談に行ってた」

「小宮先生?」


真澄は小宮に恐る恐る聞いた。

「あの…実は、大泉さんてよく相談に来るんですか?あっ、もちろん、中身は聞きません」


「そうね、確かによく来てたわ。彼女はその頃から変わり始めた。何があったかはごめんなさい説明出来ないけど。後関係ないかもしれないけど、進藤君とよく話すようになったわ」

「あっ、私も気付きました。仲良いんですかあの二人」


 小宮は顎に手を当て間をあけた。

「それがねぇ…大泉さんは進藤君をどう見ているのかよく私にもわからないの。ただ彼の話をしている時、二面性を感じるような顔をする。不気味な笑顔と言うか」


国木田は大泉の机から本がおちたのを見た。「人を操り壊す本」と言う本だった。


大泉は誰もいない自分の部屋で

「ふふっ、あはははっ!」


 それは進藤を嘲笑う笑みだった。

「自分と他人をきちんと比較出来ない愚かな男ね。おっと、私は不正を許さないと言った以上椿をもっと探らないと。不正は、許さない…!あの出来事以来……」

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