決戦当日
次の日の朝、学校の廊下で新聞部が新聞の束をもちながら声を張り上げていた。
「号外、号外!」
その様子に登校してきた生徒たちは戸惑い関心も持った。
「はい!」
新聞部員は生徒に手渡した。
「何だこれ?」
「天蘭学園特別試合、ボクシング部対世間知らずのおろか集団、明後日14時」
戸田はそれをみて怒った。
「何だこの表題!」
「くっそ!」
大木は怒った。神山は
「多分新聞部にこう書けって指示したんだろう。」
勝利は
「くっ」
と勝利は拳を握り唇を噛み彼らしく静かに闘志を見せた。
「絶対勝つ」
しかし勝利のクラスメイトは噂した。
(日向って、2週間練習しただけだろ?)
(それで勝てると思ってるのか?)
そうとも知らず勝利はシャドーボクシングをしていた。静かな怒りとやる気を見せた。
「あっ本人やる気満々だ」
「だから世間知らずって言われるんだよ」
椿は
「ねえ、あまり無理しないで。ダメだったら降参して」
勝利は答えた。
「椿って時々女っぽい事言うよね」
勝利は担任教師と職員室にいた。教師は最近の勝利のテストを見せた。難しい顔をしている。
「このところ、少し成績が落ちているな」
「は、はい」
さすがに勝利は気落ちした。
「A大学が少し厳しくなるかもしれない」
少し厳しいが現実を言った。
「もう少しで試合が終わるんで」
職員室から出た時真澄とぶつかった。
「あっごめん!」
その時服に顔が触れたが勝利は気にしていなかった。
次の日の朝、勝利は母親にひっぱたかれた。
「この口紅は何!」
勝利のシャツには何故か口紅がついていた。母親は悪鬼の表情で仁王立ちした。
「知らない!」
「どこの女と付き合ってんの! いかがわしい!」
「知らない!」
また勝利は叩かれた。
痛みが実際の傷以上に心に響いた。同時に激しい憎しみを抱き復讐心を生んだ。
(俺は毎日頑張ってるのに親は全く理解してくれない)
「この事は教育委員会、いや文部省に抗議します!」
勝利は学校で戸田たちに母親の事をいった。戸田はさすがに心配した。かなり親身な表情だ。
「このままじゃ将来自分を出せなくなる」
神山はむっすりしていた。
「大人になってつまづくだろう。でも今なら修正できる」
戸田は再度
「多分試合が終わったら何かが変わる。勝ってもまけても」
そこへ明石達がやってきた。
「あっ!」
「おーい、天下のボクシング部に逆らう愚かものども!」
「くっ!」
「言っておくがな、負けた時の条件はクラス全員に土下座してもらう事だ。」
「なっ!」
「じゃあせいぜい頑張んな。」
いやみと余裕たっぷりにそう言って明石たちはさった。さらに廊下にはすでに試合の説明がはってあった。これが生徒たちの騒ぎを生み人だかりができていた。
「先鋒、柳対大木、次峰、明石対戸田、大将、中西対日向」
対戦表にみなはどよめいた。
「もう決まってる!」
「ちょっとまて、中西って三年の中西先輩か!」
戸田は
「まずい、まさか三年生が……」
そして14時になり椅子の用意された体育館リング周辺に皆が集まった。真澄ももちろん座った。そして6選手がリングに上がり向かいあった。こういった学校内イベントは良く行われるわけではない為生徒たちの気持ちはいやがおうでも高まった。
「それでは先鋒柳対大木開始!」