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プロローグ 狭き世界

 幼稚園において、午後2時頃といえば終わりの時間だ。

ここにももうすぐ母親に連れられ帰宅するあどけない4歳の少年がいる。

少年は帰り際に気になる同級生の女の子に話しかけようとした。


 ところが


「女の子と話さないの」


と言って迎えに来たその少年の母親は、不満ありげな顔で女の子の方を向いている少年のそでを意地悪くつかみ手を引っ張り、少年が話そうとした女の子から遠ざけた。


 少年の目は好意を持つ相手から遠ざけられ、見つめながらも離された。

少年は何かを発しようとしたが言葉にならずかき消えた。


 少年は顔に不満を表しその後非常にさびしそうな顔をした。


 まだ言葉が使いこなせない為どう表現していいかわからなかったが。

しかしその出来事は人生において少年が反抗の芽を摘まれた発端だった。


 少年はこの親が今後の人生でどんな影響を及ぼしてくるか、はこの時はまだ知る由もなかった。


 その4年後、少年は8歳になった。

クリスマスイブにクリスマスケーキを部屋で親とは一緒ではなく嫌そうに1人で食べていた。


 窓から見える外の町は雪景色で綺麗だったが、少年は関心なさそうに不機嫌な顔でケーキを苦い薬のようにしぶしぶ口にいれていた。



 やがて食べ終わるとCDから流れるジングルベルを不愉快そうに消した。

皿にはクリームがついていた。


 そしてその6年後、14歳になった少年はクリスマスイブにイルミネーションのある駅中ビルになぜかわざわざ昼から来ていた。


 確かに外の道にはカップルはいたが町も人ももっと活発化するのは夕方以降である。


 しかし彼はわざと昼に来てツリーをさびしそうにじっと眺めていた。


 それは自分は恋愛が出来る事はないと認識し心に刻むためだった。

「僕にはクリスマスはない。恋人は出来ないんだ」  


 そして3年後。17歳に成長した少年は我慢強くなっていた。

良い意味だけではない。


 際立って内向的だったり、暗い性格であったり社交性がないわけではないが、かといって感情をおもむくままさらけだす性格でも陽気なわけでもない。



 彼は普段の生活において感情的になる事は極めて少なかった。

そのようにしつけられたからである。彼の親は毒親だった。

 

 一般的に見て高校2年生の17歳にしてはとても大人で自制心が強く不満をなるべく顔や態度に出さない。


 彼は一貫して温厚である。話し方も優しく周囲からもそう思われている。


 しかしそれは良い面ばかりではなかった。

いわゆる自分を抑える性格になっていた。


 かつ何かに打ち込んでストレスを発散するわけでもない。

その苛立ちがほおづえやひじつき、貧乏ゆすりに出ている。


 確実に彼の心はストレスに蝕まれていた。

彼は不満をなるべく言わず顔に出さないが、しかし付き合いの長い者なら明らかに顔色が悪くひきつっているのはわかる。


 彼は常に親に対し自分の心になにかをため込んでいた。他人に相談もあまりしない。友人がいないわけではないが。


 なぜそうなったのか。

それは彼が子供の頃から理不尽な家庭環境に自分自身の素直な気持ちを上から抑えられ強く反発せず耐える事を身につけるように操られ育てられたためである。




 

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