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私と幼馴染様

作者: 薄雀

私はとあるDらへんの人間だと思ってほしい。ええ、平凡ですね。そんな私には、非凡な幼馴染様がいます。

彼の名は、綾野晴(あやのせい)。幼馴染といえども、今じゃそんなに接点はない。ただ、家が近いってことくらい? 



彼とは、高校も一緒だ。頭のレベルたしか向こうの方がかなり良かったはずなんだけど、進学校に行けばよかったのに。レベル的に中間らへんの高校になんでいるんだろう?って、入学式に思った。なぜなら、代表としてスピーチしてたら誰だって気づく。

そんな彼だが、大の女嫌いで不愛想王子ってつくくらいの綺麗な顔。でも、私には関係ない話だ。だって、まるっきり接点なんてないのだから。

ただ、彼のトラウマを知ってるということだけ。



私が、小学3年生の時にそれは起こった。

ショタ趣味の変態女に、彼は攫われかけた。そこに丁度通りかかったのが、私とパパだ。

それから彼は女嫌いになった。老若問わずに、母、親族以外の女を寄せ付けない。私もしかり、だ。それが、疎遠のきっかけだ。

しかしまぁ、幼馴染ゆえの葛藤か私には、少しほんの少しだけ口を利くから女子達の嫉妬が恐ろしいのなんの。まあ、適当にはぐらかしてきましたよ小学生時代。

いやぁ~はぐらかしの日々だったよ本当に。中学にあがると接点も薄れ、嫉妬が私に向くことはなくなりかわりに猛アピールをするハデ目な女子が増え不愛想王子から不機嫌王子に変わった。あらま、眉間のシワがとれなくなりますよと思ったものだ。でも、私関係なぁいと放置。


そして、高校に上がって接点はなくなった。

ハズだったよ。さっきまで。

なぜ、今なのか。そして、なぜ、そんな顔するのか。


分からない。この状況になる前に遡ると、

私は最近、告白されることが多くなった。これ、自慢なんかじゃないから、自分でも不思議だから。

友人に相談すると、「あんた、普通に可愛いから」と言われました。え、なに?普通に可愛いってどういうこと?!平凡じゃない?普通に可愛いの普通ってなに?普通に考えて可愛い?考えた時点で抜群に可愛いわけじゃないよね、うん。そこそこ?

「え、美人じゃない?」「いや、美少女でしょ」

と、他の友人たちも言った。あれ、なんかそこそこじゃない言い方?


「まぁ、言えるのは無自覚すぎるってことね」

無自覚だと?いや、いや、そんな。私ナルシストとか無理。



なわけで、私は可愛いらしい。ふーん、そう。

最後に彼氏もち友人たちに、「あれ目当ての男には気をつけて」とアドバイス。あれ、ってあれ、だよね。その、R18。

まあ、簡単にはいくまい。彼女たちは知らない、私の秘密があるから!



今回で5人目の告白者がまつという、校舎裏を目指し歩いていた。私、そんなの無碍にできないからきっちりかっちり行きます。残念ながら、私恋なんてしたことないから告白は今も受けていない。いつまで、告白ラッシュがあるんだろう?

はぁ、断るのも憂鬱だ。



「あかりちゃん」

ふいに、あかりちゃんに反応して振り返る。

あ、そばに朱里ちゃんがいた。彼女をよんだのだ、…………!まさかの、不愛想王子!みんなの目が見開く。

朱里ちゃんは、誰よりも驚いている。ま、たしかに。

よし、行くか。

「まって、あかりちゃん」

駆けてくる音がする。あら、あかりちゃんは逃げませんよ。立ってまってるじゃない?


「まって、あかりちゃん!」

ぎゅむ、と私は抱き締められているのは何故だ?私、あかりじゃないし。茶夜星さやせいという、名前だ。この名前のせいで、小学校入学してダブルセイって呼ばれたじゃない?


「まって、あかりちゃん…置いていかないで」

あの、この状況なに?!私の頭の中はパニックで、ショート寸前だ。そして、やってしまった。

最初は右腕を掴まれていたが、後ろへ引っ張られて後ろから覆い被さる、つまり抱きしめられたのだが…


過去に言ったハズだよね、君。まあ、ないと思ってたけど…まさか、抱きしめてくるなんて。

「………ごめん、はる君」

とりあえず謝るにこしたことはない。廊下とこんにちはしちゃってる幼なじみに一礼。本当にごめん、でも言ったよ。結構昔に、『いきなり背後にたてば、危険だからね』って。背負い投げしちゃうから、ダメだよと。その前に、はる君って言っちゃった。


背負い投げしちゃったよ、こんな観衆目線の凄まじい中で。嫌ぁぁぁぁあ!目立っちゃってる!


*****


逃げ出そうとして、足を掴まれていたことに気づいた。それは、無愛想王子こと綾野晴。

「あ、綾野くん。離して」

「違う、離さない」

「その、見られると困るよ。綾野くん」

「…違う、………」

考えこんで、そして気づいた彼は慌てて立ち上がり腕を掴んだ。それは、物凄く早くて反応が遅れてしまった。

「……ごめん、みえてないから。……ぴ、ピンクのレースとか」



…………おい、ナニちゃっかり見てんだ!こちとら平凡ですが、減るんです!

「………いいから、離して!綾野くん」

「違う!」


そして、私は諦めた。昔、そう呼んでたように

「……………もう、なに?はる君」

「やっと、呼んでくれた」いつものポーカーフェイスは消え去り、笑みを浮かべる。すると、手が緩んだ。即座に間合いをとる。嬉しそうな彼は一歩近づく。それに一歩下がる私。また、2歩近づく彼に2歩下がる私。数回の攻防のすえ、5歩近づく彼に、私は踵をかえして走り出した。

「まって、あかりちゃん!」

「私は、忙しい!」

「他の男の所へ行くの?」

「……え、なにそれ。私がまるで浮気してるみたいな言い方しないでよ。変な噂が広まる!」

「…あかりちゃん、俺の側に居てよ。俺、あかりちゃんじゃないとダメだし」

さも当たり前のように語る彼は、一体誰だ?無愛想王子は何処へいった?ああ、双子の兄か弟か?ああ、ダメだ現実逃避してしまってる。彼は双子じゃないのは確実なことは知ってるじゃないか。

「あかりちゃんと結婚する。あかりちゃんとの子どもだってほしい!あかりちゃんと生涯を全うする!」

ちょ、まって。周りのギャラリーが凄いんですけど。

あ、なに!友人までギャラってんの?!あ、ギャラリーという意味です。じゃなくて!

「………力説中、ごめんけど私、女だよ?」

とりあえず、これは伝えなきゃ。

「………え、男だったときあるの?」

「……いや、ないけど。ほら、はる君は女嫌いじゃないか。だから、ほら…ね、」

「俺は女として好きだよ、あかりちゃんが」

「……す、好き?私が?」

有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない

「俺、あかりちゃんと離れたくなくてこの学校に入った。なのにどうして、あかりちゃんは他の男の所へいくの?無視しちゃえばいいのに」

何を言っているんだ?え、ストーカー?

「ねぇ、あかりちゃん……俺のこと好き?」

そのすらりと伸びた足で間合いをいきなり詰める。ドンっていったよ、壁が!ナニ、コレ。逃げれない!足と足の間には綾野晴の膝だと?

「これ、どこで知ったの…壁ドン」

「壁ドン?」

え、なに。天然?!自然にやってるわけ?!

「星!てめぇ、なにしてんだ。」

この、声は……お兄ちゃん!

「最近、男にモテていると聞いてはいたが…こういうことするために俺を待たせるのか?あ?」

「ご、ごめ…」

「あかりちゃん、もしかして彼氏?そんなの、許さないよ」

「あ?………あかり?こいつは、ホシとかいてせいだぞ?………あ、てめぇ、もしかして綾野晴か!」

と、言うと綾野晴は挙動不審になる。いやいや、顔みて思い出さない?というか、入学式でスピーチしてたでしょ、彼。あ、そっか。お兄ちゃんはその日、県外に居たんだった。理由が理由で、強い奴が居るらしいからだ。うん、格闘バカだもんねお兄ちゃん。

「超イケメン!やっぱ、はじめから整ってたもんなぁ」

というお兄ちゃんこそ、精悍な顔つきでモテているでしょ。

「誰?」

「あ?俺だよ俺」

お兄ちゃん、それおれおれ詐欺。

「茶夜 (りょく)だ」

「私のお兄ちゃん、だよ。ほら、覚えてない?ずっと、柔道着着てた」

「…あ、お義兄さん」

…………なんか、今、義の兄とかいておにいさんってよ、読んだ気がする!ピクリとこめかみをひくつかせた兄に気づいてしまった。きっと、気に障ったのだろう。おにいさんって呼ばれるのが嫌なのか、または別の理由があるのか。

「まあ、いい。星、いつまでボサッとしてる。帰るぞ、あとてめぇを呼び出していた男ならカタつけてっから大丈夫だ。安心しろ」

ああ見えてお兄ちゃんは私を溺愛している。それはもう、辟易するくらいにね。だって、門限6時だしお兄ちゃんは買い物に絶対付いて来るし、告白ラッシュにもヤキモキしてる。お兄ちゃんモテるのにこのシスコン具合を知った女子はなかったかの如く側から離れていくだ。格闘バカな一面よりも、こっちのが衝撃なのだ。いや、格闘バカのくせにってことかもしれない。

「ねぇお兄ちゃん、ボコボコにしていないよね?」 

「あ、するかんなの。一応武芸を嗜んでるからな、んなことしねぇよ。お前も、だろ」

「……………」

嗜んでる、どこが。どっぷり浸かってるくせに。そもそもお兄ちゃん、その無害な告白者よりもこちらをどうにかしてよ。未だに壁ドン最中ですよ、見えてますか?その両目視力3.0のお兄ちゃん!



背を向けて去るお兄ちゃんを追いかけるためには、この壁ドンから逃れなければならない。綾野晴の両腕は私の顔の横。右足は私の足と足の間。こうなったら、頭を下げてこの少々無理な体勢からの回し蹴りしか手段はないとみた!

回し蹴りは難なく避けられ驚愕の顔で周りは見守る中、彼だけは違った。嬉しそうな笑顔を浮かべる、綾野晴ただ1人。



「やっぱり、あかりちゃんだ」

コイツは、一体誰だ?無愛想王子は、本当にどこへやら。

「さようなら!」

お兄ちゃんを追いかけて駆け出して、騒ぎ?に漸く気づいた教師に

「茶夜兄妹!校内では、走るな!」

「あ?俺、走ってないけど?星、走るな。転けたら痛いぞ、おんぶしてやろうか?」

えーと、お兄ちゃん?これでも、私…武芸を嗜んでいますよ?そんなへまは起こさないこと分かってるのにニコニコと近寄らないで。

「ほれ、抱っこでもいいぞー」

「…お兄ちゃん、嫌い」

こう言えばお兄ちゃんは、絶望した顔になる。飴と鞭作戦です。

「………手ぐらいは、いいよ」

こういう私も私だ。私だってブラコンなのだろうな、きっと。



*****


「ねぇ、星。私たち聞いてないんだけど」

「そうそう、私たちって高校からじゃん?中学一緒ってのは知ってたけどさー」

なにが、なんて分かりきってはいるが。彼女たちが昨日のアレをギャラリーとして傍観していたのは知ってるし、なにより昨日の顔と今の顔が一緒だ。面白さを追求する彼女たちだからこそ、気兼ねないのだろうけど。まさか、こんなにも興味津々だとか思っても見なかった。



「あの組み合わせマジウケる」

ウケるってナニ?!

「男らしいイケメンと、王子っぽいイケメンに見かけは守ってあげたくなるようなアンタ」

「見かけは守ってあげたくなるような?!はい?!」

「だよね、中身アレだもん」

彼女たちは知ってる。私が武芸にどっぷりなこと。そこらの男よりも強い自信がある。

「ねぇ、知ってる?あの綾野晴とアンタの壁ドンをみた一部女子の間で綾野晴は星の王子様で、アンタが星の姫様って呼ばれてんのよ。あと、アンタのお兄様はなぜか月の王子様らしい」

どっから、そんな!!星ってなに?!

「アンタの名前ね」

「エスパーですか」

「思ったこと最初からだだ漏れよ。」

私はもはや言葉にならなかった。……恥ずかしすぎて。



………………そんな、休み時間も終わり放課後。休み時間のたびに見物人が来ていて私は見世物かって思ったくらいに人に見られた。いや、見世物だったのね。うん。



そして、どうして、君は…またしても居るんだ?

「あかりちゃん…!」

嬉しそうな笑顔で近寄ってくる彼に思わず後ずさり、一瞬顔を陰らせたがすぐさま満面の笑みを浮かべ近寄ってくる。

うぉぉぉお、そのような笑顔に免疫はございません!

無愛想がデフォなんでしょ、いいから!もう、顔の表情筋使わなくていいから!

「休み時間なんども行こうとしたけど、うざい女子に囲まれて行けなかったんだ。…………癒やして?」

私のが癒やしてほしいわ!

「…ちょっ!」

逃れようと試みた。あれ、あれれ?

なぜ、押し倒されてるんだろう?私ってば!


「………あかり、好きだよ?」


頑なに彼は、私を星とは呼ばない。幼い頃私たちはお互いを別の名前で呼ぶことに決めた。同じ呼び名でお互いを呼び合うのは恥ずかしいと言うことから始まったそれ。

というか、彼から言いだしたのだ。あの日、


「ねぇ、星とかいてあかりって呼べるよね…今度から俺だけ、あかりちゃんってよぶ」

と、宣言されました。俺のことは、はるって呼んでほしいとも。

ソレを知った周りの友達もはるって呼んだり私のことをあかりと呼んだりしたら彼は拒絶した。今まで頑なに女子と会話をしなかった彼が、

「はるって呼んでいいのはあかりちゃんだけ。あかりちゃんっ呼んでいいのは俺だけ」

だと、それ以降はまた女子を拒んだけれど。



「俺だけしか呼べない特別な名前、あかりちゃん。ずっと、好きだったんだ。そうだ、あかりちゃんは前に言っていたよね。強い人が好きだって、だから俺ね…」




*****


巷で言う、ヤンデレ直前なのではないだろうか彼は。

これ以上彼を、ヤンデレ化してしまったら私の身が危険だと悟った。このまま逃げて逃げ切ったとしてもずっと恐怖につきまとわれるかもしれない。


「普通こそが、好きかな」

私はきっと、放っておけない人なのだ。そうだ、きっとそう。いい聞かせて、隣をみた。


綺麗に整った顔、すらりと伸びた身長と、細身のくせにしっかりとついた筋肉(好み)、優しいし気が利くし、そのたまに見せる笑みが可愛いと思う私も病気か。たまに極たまに傷なのがヤンデレ気質。彼は、私が死んだらどうするのかと言うことをかんがえるのも怖い。私に執着しすぎてるところがある。逆に私が捨てられたらどうなるのかもわからない。私も執着しつつあるから、怖いな。



****


お兄ちゃんという難関を乗り越え、彼は私に正式に告白をした。お兄ちゃんを倒したのだ、お兄ちゃんは私よりも彼に執着するようになった。可愛い妹よりも、妹の彼氏を可愛いがるのかと私が嫉妬するくらいには。


「よう、晴くんや。今日こそ床に這い蹲らせてやるからな!ああ、星は黙ってみてろ。俺の毎日の楽しみだからな!」


どんな楽しみ?!

「お義兄さん、そろそろ飽きてください。」

「大事な妹を奪っていったんだ、これくらい我慢しろ!はははは」

「お兄ちゃん……」

やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね。

「あかりちゃん、大丈夫だよ?」

「なにが?」

特に心配とかはしていないし?

「あかりちゃんは、俺が可愛がるから!」

「い、いらない!」

私は、顔を真っ赤にしてそう叫んだ。お兄ちゃんは、もの凄い形相で晴くんをぶん投げた。

「ふははは、油断したな?まだ星を可愛いがる権利はお前にはあげませーん!」

武道バカな兄と、粘着系彼氏に毎日大変だけど楽しく過ごしてます。




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