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初依頼

ネクセルの店をあとにした俺達は、上機嫌で王都外縁にあるギルドへの道を歩いていた。ルーも、心なしか足取りが軽い。


「いい買い物だったな。ネクセルは良い人だったし」

「…それに、良い匂い」


ネコ耳が、ルーの幸せを表すようにピクピクと動く。ネクセルの魔力がよほど気に入ったようだ。


ネクセルの好意でいい装備を揃えることができたが、心配なのは質の悪いやつらに絡まれないか、そして何よりお嬢様のことだ。宿での騒動(主にルー関連)があったのですっかり忘れていたが、お嬢様との決闘があったのは昨日の夕方。時間にすれば、一日も経っていないのだ。

偶然会うことが無ければいいけど。


ギルドに到着して中に入ると、ロビーにはチラホラと人の姿があった。掲示板に目を向けると、新規依頼のほとんどが無くなっていたが、常駐の依頼の方はまだ多く残っていた。というより、同じ依頼書がそれぞれ何枚か貼ってある。


その中で選んだのは、王都のすぐ外にある草原での薬草10本採集と、同じ場所でのスライム10体討伐。


ルーのレベル上げも兼ねて、ゆっくり討伐をしようと思う。後で弁当買わないと。


とりあえず、剥がした紙をカウンターへと持っていく。


「これお願いします」

「冒険者カードを提示してください」


ルーと二人で、女性のギルド員さんにカードを渡す。彼女がデスクにある魔導具に依頼書を通した後にカードをかざすと、ランクの書かれている魔法陣が光った。

返却してもらったカードの裏には、今回受けた二つの依頼内容が記載されている。


カードの仕組みはどうなっているのだろう。凄く気になる。

よく考えると、この世界に飛ばされた時ぐらいしか魔法陣を見ていない。放つ魔法は詠唱だし、王宮にあった魔導具に魔法陣はついていなかったと思う。

何か、違う技術が使われているのかもしれない。今度国王様に伝えてみよう。


「討伐数は、依頼の欄に表示されるようになっているので、虚偽の報告は出来なくなっています。ご存知とは思いますけど、冒険者ランクがDになると、ステータスプレートの機能が向上します。過去に討伐した分も含めて討伐した魔物の種類、数が表示できるようになりますよ」


初めて聞く話に耳を疑う。昨日の登録の時には説明がなかった。


ステータスプレートを、アップデート?ステータスは神様がこの世界の住人に与えたものじゃないのか?なのに、どうやって?


しかし、今考えていても仕方がない。「並列思考」で考えをまとめておこう。


「いえ、初耳です。ギルドに登録してると、そんな利点もあるんですね」

「不思議ですよね。こちらも仕組みは良く分かってないんですけど」


そう言って笑うギルド員さんとの会話を終えて、俺達はカウンターを離れた。


「…カズマ、何か考え事?」


俺の服の裾をチョイチョイと引いて、ルーが聞いてくる。

考える素振りは見せていないつもりだったので、気づかれていた事に少し驚く。


「ん?あぁ、ちょっとな。弁当買って、草原に行こうか」

「…お弁当」


お弁当と聞いた途端、ルーの目は輝き、口の端から涎まで出始めた。もう食いしん坊キャラで定着しそうだ。


ギルドの外にあった弁当屋で、野菜と肉の挟まったサンドイッチ(?)を3人前購入。「収納」に入れておけば、落としてしまう心配はない。温度がどうなっているのかはわからないから、腐ってしまったらどうしようもないが。




出発するかぁ。


ルーとの冒険の始まりに期待を膨らませつつ、都市を囲う壁を出る、門を潜ろうとした時だった。


「ねぇねぇお兄さん。草原に行くなら、私もついて行っていい?」


不意に後ろから肩を叩かれた上で、声をかけられた。その声は高く澄んでおり、とても聞き取りやすい。

振り向くと、そこには銀髪ショートの女の子がいた。身長は150センチ程だろうか。ぱっちりと開いたその蒼い瞳は、サファイアを思い出させる。


「別に構わないけど……君は?」

「私はウィズ。冒険者登録したばかりなんだ!」

「俺はカズマ。俺達も昨日登録したばかりだよ」

「…ルー。よろしく」

「カズマお兄さんに、ルーちゃんだね。うん、よろしく!」


ウィズと名乗った少女は、そう言って笑った。



唐突に増えた仲間を迎えて、俺達は門をくぐると、土の路面が遠くまで続き、その両側には一面の草原が広がっていた。裏門から出たときにはここまででは無かったので、想像以上の景色に息を呑む。

日本にいたときには、景色は見たことがなかった。


「おぉ、すごい景色だな」

「…広ぉい」

「スライムはちょっと離れたところにいるよ。行こう!」


ウィズが一人走り出す。すごい元気な子だな。それに、冒険者成り立てと言っていたが、スライムを狩ったことはあるようだ。


王宮で調べたところ、外壁付近にはモンスターが少なく、少し離れたところには多くいるらしい。スライムはコロニーを作ることもあるようだ。


草原をしばらく歩く。土、草の匂いが鼻に入ってくる。

小さい頃に虫網を持って近所の空き地を走り回ったことを思い出した。


「…不思議な、匂い」

「草の匂いがか?」


ルーがそう口にした。

ずっと城にいたルーは、自然の匂いを嗅いだことが無いのだろう、と思っての問いかけだったのだが、ルーはゆっくりと首を横に振った。


「…それも初めて。でも、ウィズの匂いが、不思議」

「どういうことだ?」

「…匂いに、シーツがかかってる、みたいな?」


前の方で手を広げ、一人で走るウィズに目を向ける。

彼女はいったい何者なのだろうか。昨日の登録のときにお嬢様に絡まれたから目立ったかもしれないが、その時からずっと見られていたのか?


そんなことを考えながら前方のウィズを見ていると、彼女はこちらを振り向いて手を振ってくる。


「おーい! ここに薬草あるよー!」


その屈託のない笑みを見ていると、今はそんなことを気にする必要を感じなくなる。

こちらに害意はなさそうだし、また気になることがあったら直接聞いてみよう。


ウィズに追いついてその足元を見ると、ドクダミに似た赤みがかった葉の植物が生えていた。


「これが薬草か。絵では見てたけど、実物を見るのは初めてだ」

「根っこから引き抜くと、少し買い取り額が上がるみたいだよ!」


何でも、根の部分は漢方薬のような感じで使われるみたいだ。地球の方ではドクダミ茶には葉が使われるが、こっちの世界では他の用途があるからな。


=====================

ニガハミ ★×1

草原に多く生える、一般的な薬草。葉の部分から成分を「抽出」し、「生成」を行うことで、セミポーション ★×1 を作ることができる。根の部分は、煎じて薬として飲まれ、健康、血行促進に効くと言われている。

=====================


「この薬草はニガハミっていうみたいだな。ウィズの言うとおり、根も使い道あるらしい」

「へぇー、名前は知らなかったよ!」

「…匂い強い、でも嫌いじゃない」


さて、鑑定で薬草の名前もわかったし、「探知」でまとめて探してしまおうと思う。薬草を早く集め終われば、それだけ長くスライムと戦闘ができるだろう。


「探知」の設定をいじり、

魔物:赤、人間:黄緑、魔導具:黄、ニガハミ:黒、その他の薬草:青

に設定する。


周囲の様子を確認すると、多量の黒、ひとつだけ青、そして少し先に赤が纏まっていた。おそらく、この地点がスライムのコロニーだろう。


「そし、先に薬草を集めておこう。ウィズとルーはこのままニガハミを集めてくれ。ウィズ、ルーに摘み方を教えてもらってもいいか?」

「…よろしくね」

「わかった!でも、お兄さんは何をするの?」

「俺はニガハミ以外の薬草を集めてみるよ。そっちは頼んだ」


そう告げて、「探知」にあった青い反応に向かう。

反応のあった地点には、シロツメクサに似た植物が生えていた。シロツメクサとは俗にいうクローバーで、これは四葉だった。


「四葉のクローバーか。何か気分がいいな」


=====================

ヨツハナ ★×4

草原に稀に生える薬草。草原にしか生えないため、初期の冒険者が稀に発見する程度で、流通量も非常に少ない。成分を「抽出」、セミポーションと合わせて「生成」を行うことで、状態異常の万能薬 ステートポーション ★×4 を作ることができる。根は煎じて飲まれ、体調不良全般の特効薬となる。

=====================


レア度が高い。星1の薬草とスライムしかいない草原に、こんな薬草が生えているとは誰もが思わないのだろう。

何せ万能薬の素材だ。もっと山の奥に生えてると考えられているのかも。


ありがたく摘んで、これは「収納」にしまっておこう。


二人のところへ戻ると、二人は早いペースでニガハミを摘んでいた。ルーも慣れてきたみたいで、しっかり根の部分から摘むことができている。


「二人ともお待たせ」

「…みてみて、カズマ」

「うん?」


俺が近づくと、ルーは目にも止まらない早さで動いた。辛うじて目で追えるが、敏捷が高いルーはその速さのまま時折膝を曲げている。


「え!?ルーちゃん凄い!」


動くルーにあわせて首の向きを変えながら、隣のウィズはそんな歓声を上げていた。


やっぱり、ウィズにはルーの動きも見えているみたいだ。そうなると、敏捷においてはルーと同等、またはそれ以上ということになる。


本当に何者だ、この子は。


「…ただいま」


戻ってきたルーが、「収納」から大量のニガハミを取り出した。

いつも無表情なルーだが、なんだか誇らしげな顔をしている。


「…沢山とってきた」

「やったな!でも、どうやって場所を把握してたんだ?」


ルーの頭に手を載せてやりながら問いかける。ルーは、目を細めながら答えた。


「…探知と収納つかった。あとは走るだけ」

「ルーちゃん凄いね。薬草も、全部ちゃんと根っこから摘んであるよ!」


あの速さの中で、確実にニガハミを摘んでたのか。全部とはいわずとも、少しくらいは根が摘めてないかと思っていた。

俺はルーのことを甘く見ていたようだ。


「…つぎ、スライム倒したい」

「そうだな。スライムの方に向かおうか」

「…たのしみ」

「プルプルしてて面白いよ!」


俺達は、スライムのコロニーがあると思われる方へ移動した。

11/5

文中、「ウィズ」の名前が「イヴ」となっていた間違いを修正しました。混乱させてしまってゴメンナサイ!

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