魔王城
お待たせしました。とは言っても字数は少ないです...
課題に追われて、執筆が進まない!
その地域は、常に黒い雲が空を覆い、魔力がとても濃い。
そんな中でも肌が褐色に近く、赤い眼球を持つ人々が賑わいを見せている。
『魔族領』
魔族が支配、生活している地域。人間の住む地域とは大きく雰囲気の異なるも、人間の街と同じような賑わいをみせている。
そんな魔族領の中心には丘があり、その上に黒が基調の大きな城が立っている。ここは魔族領の政治が行われる場所であり、また魔族の絶対的な主、『魔王』の居城でもある。
そして城では、重鎮による定例の報告会が行われていた。
そこに、諜報員だろうか、一人の魔族が会場に足を踏み入れ片膝をついた。
「申し上げます」
「…報告を許可する」
「はっ、こちらの戦準備を人間側が察知した模様。アラキアが勇者召喚を成功させたとのことです」
「…気取られるのが予想より早かったな。まあいい。召喚は予想のうちだ」
「そしてもう一点」
「…なんだ」
「アラキアの獣人の姫が、一人の勇者と共に城を出たとのこと。目的はわかっておりません」
「…そうか、下がれ」
「はっ」
「どういたしますか、魔王様」
「…まだあちらも様子見、といったところだろう。こちらから動いてボロを出すリスクは負わなくてもよい。他には何かあるか」
長机を囲む数人から、反応は起こらない。
「無いようだな。これで本日の定例会を閉会する」
そういってから立ち上がった魔王は身を翻し、その場から姿を消した。
「流石は我等が主」
「えぇ、魔族は安泰ですな」
口々に話しながらその場から姿を消していく重鎮たち。
「…確かに手腕は認めますが、何せお顔を見たことがありませんからねぇ」
魔王は集会などの時、家臣にもその顔を見せたことが無い。そのため手腕は認められているが、十分な信頼を得ることが出来ていないところがある。
「それは、まぁ、その通りですな」
「そこのところはどぉなんですかねぇ、近衛隊長?」
男に近衛隊長と呼ばれた人物は、小声で、しかしよく響く声で応える。
「顔を見せようと見せまいと、我らの主であることに変わりはない。誠心誠意、魔王様に仕えるだけだ」
「ゆぅとぉせぇぶってるんですかぁ?まぁいぃんですけどねぇ」
「…変な気は起こすものじゃないぞ」
「ひっ」
二人の間に力が生まれ、大きな圧力がその場を覆いつくした。巻き添えを食った一人が小さく悲鳴を上げる。
しかし、長く続くと思われた緊張は破られた。
「わぁかっていますよぉ。今やりあうつもりはありませんしぃ、失礼しますわぁ」
「そ、それでは私も」
男達は立ち上がり、魔王と同様に姿を消す。
その場に残されたのは、魔王の近衛隊長ただ一人だった。
「『姫』は強いお方ではあるが、まだまだ幼い。信頼を得ることが出来なければ、政権が転覆することもあるかもしれん…。お守りせねば」
ゆっくりと立ち上がった近衛隊長が集会所からその姿を消し、照明が落ちた。
魔王城の一室。
「ふぅ。今日も疲れたぁ」
ベッドのうえに仰向けに転がり、愚痴をこぼす一人の女の子の姿があった。
「人形を操るのは難しくないんだけど、声を出すのに魔力持っていかれるんだよね。もっと改良しなくちゃ。それに、不信感が募ってきてるのか…めんどくさいなぁ」
魔王様、その人である。
魔王が女の子であることを知っているのは、城内には近衛隊長しかいない。魔族領の最重要機密だ。
しかし、魔王の名に恥じない実力も兼ね揃えている。
「まあ、勇者っていう敵が出てきたし、しばらくは大丈夫かな。それもそこまで強くないだろうし、やり方はいくらでもあるもん。でも、めんどくさいなぁ」
魔王様は面倒くさがりな性格のようだ。
「とりあえず、諜報員だけ送っとけばいいよね。
あ、そういえば城を出たっていう人達どうしよう?獣人の姫は一回見てみたいし、抜け出して見に行っちゃおうかな」
軽く舌なめずりをした魔王は、城を抜け出す口実を考え始める。
「抜け出すのは簡単なんだけど、バレるとすごく怒られるからなぁ…まあ、何とかなるでしょ!」
部屋にあったものをほとんど収納に入れた魔王。魔王は城下町に買い物に行くこともあり、近衛隊長から多めのお小遣いを貰っている。その貯金もしっかりと収納した。
「書き置き残してっと。よしっ!行ってきまーす!」
そして、魔王は部屋から転移魔術を行使する。彼女の右太腿が光ると同時、膨大な魔力が床に陣を映し出す。
次の瞬間、部屋が光に塗りつぶされた。
光が消えると、そこに魔王の姿は無かった。
魔王様は自由奔放な性格でもあるようだ。
その後、魔王の部屋で書き置きを見つけた近衛隊長が頭を抱えたのは言うまでもない。