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封印の再召喚者(リターナー)〜封印解いて目指せ安寧!〜  作者: 金月ネコ
いざ、異世界へ!(予想外)
13/23

ルー

翌朝。朝食を食べ終わった俺は、沙那や秋人に訝しげな顔を向けられながらも足早に食堂を立ち去った。何の為かといえば、もちろんルーンアイラの部屋に向かうためだ。

ルーンアイラって、やっぱり長くて呼び難いな…。

とまあ、なんだかんだでルーンアイラが気になっている俺。

しょうがないだろ!?可愛さが半端じゃないんだから!

そんな事を考えているうちに昨日の大きなドアの前に着いた。今日は鍵が取り払われている。入っていいのか?

俺は取っ手に手をかけてドアを開ける。


「ルーンアイラ、入るぞ…っすまん!!」

部屋に入ろうと中を覗くと、ルーンアイラは二人のメイドに着替えさせてもらっていて、上半身の寝間着がはだけていた。

俺は大急ぎで部屋を出てドアを閉める。

なんとビックリ、ルーンアイラ様はお着替えの真っ最中でした。


ちゃんとノックしておけば良かった。やっちまったな…


そういえば、メイドさんに着替えさせてもらってたけど一人で着替えられるのかあいつ?


するとすぐにドアが開いた。

「…カズマ、おはよう」

「ああ、おはようってお前!まだ着替え終わってないじゃねえか!」


ルーンアイラは上と下の下着だけをつけていて、それ以外の一切を身につけてはいなかった。


「…うん。それがどうかしたの?」

「いやいや、だってお前今下着姿だぞ!?見られて恥ずかしいとかあるだろ!」

「…なんで恥ずかしいの?」

「いや、でも!他人には着替えてから会うだろ普通!?」

「…下着は変えてもらったよ?」

「だからそうじゃねぇぇぇ!!」


そこまでやりとりをしたところで、状況に気づいたメイドさん達が強制終了をしにかかった。

「ルーンアイラ様!男という生き物は皆、ケダモノなのです!ちゃんとお着替えをしないとダメです!」

「…カズマもケダモノ?」


首を傾げながら俺に問いかけてくるルーンアイラ。


「いや、それを俺に聞くなよ」

「そうです!そうに違いありません!ルー様に理性を飛ばした殿方は、あんな事やこんな事を…グヘヘ」

「貴方はまた!やめなさいと言ってるでしょうに!」


ルーンアイラがボケで、メイドさんがツッコミ担当…なのか、これは?

なんと言うか、賑やかだな。



「…入っていいよ」

「お、おう。お邪魔します」


あの後もしばらく騒がしくしていたが、なんとかメイドさんが収拾をつけ、俺は再び部屋の外で待っていた。


その間、中から「ダメですよ、まだダメ!」なんていう大声は聞こえていた。メイドって大変なんだな…。

そんなこんなでようやく着替え終わったらしいルーンアイラが俺を呼びに来たわけだ。


「…ベッドに座って?」

「ああ、わかった。じゃあ改めて、俺はカズマだ。これから外に出るお前の護衛?を任された」

「…知ってる。なんで改まったの?」

「正式に自己紹介するんだから、改まるものだろ?」

「…ん?」

ダメだ、こいつ常識が通じん。前途多難だな…

「まあいいや。お前からも名前を教えてくれないか?」

「…わかった。ルーンアイラ。よろしく」

「ルーンアイラって、あだ名みたいのはないのか?少し呼び難いんだ」

「…あだ名って何?」

「あー、愛称みたいなもんだ。愛称はわかるか?」

「…うん。たまにメイドにルー様って呼ばれたりする」

「『ルー様』か。俺もルーって呼んでもいいか?」

「…わかった、いいよ」

「ありがとうな、ルー」

「…うん」

ルーは微笑みながら返事を返してくる。


「昨日少し会っただけって聞いていましたけど、ルーンアイラ様ともうあんな恋人のような雰囲気を…」

「ええ。一人前のメイドとして認められるにはルーンアイラ様のお世話を完璧にこなす事が必要ですから、とても難しいお方のはずが…カズマ様の天職は従者では?」

「聞こえてますからね?従者なんて思ったとこも無いですよ」

「…カズマ、メイドになるの?ヒラヒラ、着る?」

「ならないし、着ないからな?それになるとしても執事だろうに」


そんな事を話しながら、一日は過ぎていった。

途中昼飯を食べに行こうとした俺にルーが付いて来ようとして騒動になりかけ、結局ルーの部屋に俺の分まで運んでもらって一緒に食べたりしたが、楽しい一日だった。


夜。

「楽しくやれているようで何よりです」

「そうですね。何となくですけど上手くやっていけそうです」


俺は自分の部屋で国王様と話をしていた。


「それは良かった。明日の出発の件ですが準備は整いました。カズマ様には、国の紋章の入ったシルバーウルフの外套を身につけていただきたいのです」

「シルバーウルフの外套!?それ、銀色なんですよね?目立ちませんか?」

「シルバーウルフの毛皮は普段、黒い色をしているんです。一定以上の魔力を感じると銀色に変わる性質なので、偽物はすぐにわかります。加えて、表面からの魔力を受け流す性質を持つので、防具としてもピッタリなんですよ」


あぁ!そういえば忘れてたけど、探知が反応しなかった理由はそれか!

探知は魔力を受け流されると反応しない訳だ。何か対策を考えておこう。


「そのうえ魔物自体も貴重だから、価値が出ると」

「そうですね。私は明日見送ることができませんから、アシュリールに渡させる予定です」

「ありがとうございます」

「資金の方も十分な金額はあるはずです。貨幣は使えますよね?」

「大丈夫だと思います。日本でもお金は使ってましたから」


この世界にも貨幣は存在する。単位はキラ。1キラ=1円の認識で良さそうだ。


石貨       1キラ

小銅貨     10キラ

大銅貨     100キラ

小銀貨     1,000キラ

大銀貨    10,000キラ

小金貨    100,000キラ

大金貨   1,000,000キラ


となっている。大貨は普通の円だけど、小貨は大きな穴が空いた丸だ。また、金属を溶かして複製されないよう、全てに国の特製である高熱耐性の魔法がかかっているそうだ。

日本のように5円、50円、500円に当たる硬貨がないのは少し使いづらいところだが、大きな問題はないだろう。


「一度、二ホンという場所にも行ってみたいものですね」

「いい場所ですよ。魔法みたいなものはないですけど、代わりに科学技術が進んでるので便利な世界ではあると思います」

「カガク、ですか。少し話しているだけでもこんなにもわからない言葉がある。とても楽しめそうです」

「こっちとあっちの往復ができるようになれば、ですけどね。そんな移動手段も見つかればいいんですけど。ルーとの旅の中で、俺のほうでもできる範囲で探してみます」

「はは、もう愛称まで。安心できそうですね。こちらでも全力を尽くしますが、別口で探していただけるのは助かります。まだ数少ない言い伝えなどしかありませんから」


まだ帰る手段を得るには時間がかかりそうだな。ルーとの旅で、俺の方でも何か情報を得ることが出来ればいいけど。なかなか難しいだろう。


「そう、ですか。そういえば、今日他の奴らは何をしていました?」

「バランが軽いとはいえ怪我を負ったことが響いたようで、多くの方は図書室におられたようです。しかし、カケル殿やサナ殿、アキト殿にマナツ殿は魔法の鍛錬をしておられました」


熱海が?俺らのメンツと仲がいいから、まあ納得か。というか久しぶりに名前聞いたな。


「そうでしたか。まあ、あいつらのことをよろしくお願いします」

「お願いされました。カケル殿たちが中心であれば心配も無さそうなものですけれども」

「確かに、榎本なら何とかしそうですね」

「存分に楽しんでくるといいです。ルーンアイラのこと、お願いしますよ」

「はい、任せてください。とはいえ、俺も最低限の知識しかありませんけどね。

ああそうだ、あいつらに手紙を書いたんです。とりあえず俺が行ったら榎本にでも渡してください」


俺は王様に、一枚の短めの手紙を手渡す。王様が来る前に書いておいたものだ。

この世界の紙は羊皮紙(?)のようなもので、書くのにとても苦労した。


「お預かりします。時間も遅くなってきたので、そろそろ戻りますね」

「あ、お時間とっていただいてありがとうございました。おやすみなさい」

「あ、最後に一つ」


歩きだそうとした国王様は俺に振り向き、これまでになく真面目な表情で言った。


「俺の姪をよろしく頼むぞ、カズマ」

「…っ、はいっ!」


返事に頷いた国王様は、穏やかな笑みを戻し。


「おやすみなさい。良い夜を、カズマ殿」


そう言って俺の部屋から立ち去った。

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